車の最新技術
更新日:2020.05.01 / 掲載日:2020.05.01
SUBARU「次世代BOXER&HEV」の魅力 早わかり
クルマの未来がEV(電気自動車)に向かっているからといって、EV以外は技術的に遅れているのかというと全く違う。EVベンチャーが手を出せない、高い技術力を必要とする内燃機関の世界では、ユーザーにより高い価値を提供すべく、燃焼の追究やEV技術との融合など、新技術が次々に生まれているのだ。
SUBARU【次世代BOXER&HEV】
伝統の水平対向エンジンを頑なに守り抜いてきたスバルだが、ついにパワートレーンの切り替え時期が近づいてきた。ファンが多いブランドだけに中途半端は許されないが、開発中の2つのパワートレーンはなかなか面白い存在だ。
電動駆動時代でもスバルらしさが楽しめる独自システムを開発中
■EVデザインスタディモデル
2020年代半ばを目処にCセグのSUVとして投入するBEV(バッテリーEV)のスタディモデル。トヨタと共同開発で進めているプロジェクトの一つだ。
トヨタの電動技術をスバル流にアレンジ
自動車業界は100年に1度の変革期と言われるが、今後生き抜くためには目先の利益だけではなく「長期的な経営戦略」が必要だ。そんな中、スバルは1月20日に「技術ミーティング」を開催。その中で多くの人が気になる「電動化」について発表が行なわれた。まず、ピュアEVだが、トヨタとの共同開発によるクロスオーバーSUVのデザインモックアップをお披露目した。昨年6月にトヨタの電動車普及に向けたチャレンジ説明会でトヨタ版が展示されていたが、今回のモデルはそのスバル版で、フロントフェイスやライト周りに違いがある。駆動方式はモーターの配置や数により自由自在だが、スバル版は前後にモーターを配置したAWDになるのは間違いないだろう。ハイブリッドモデルはすでに独実開発のマイルドハイブリッド「e‐BOXER」に加えて、トヨタのTHS技術を融合させたストロングハイブリッドを2020年代前半に導入予定である。中には「トヨタのシステムを買ってポン付け」と悪口を言う人もいるが、「縦置き」と「常時四駆」と言うスバル独自の思想を考えると、あくまでもトヨタはシステムサプライヤーと言う認識と考えたほうがいい。ハイブリッド専用のボクサーエンジンは、モーターアシスト前提の制御にすることで、エンジンの力をより効率的に使えるようになるはずだ。また、直結4WDのメリットを活かし、回生効率アップ(FF比30%増)と車両安定性向上にも寄与すると言う。もちろん効率向上の追求も続けられており、新型レヴォーグには新世代ボクサーエンジン(1・8L直噴ターボ)が導入される。現在鋭意開発中だが、最適燃焼の追求、全摺動部フリクション低減の追求、最適設計&制御などにより、熱効率は40%近い数字になるそうだ。まだその詳細は全て明らかになっていないが、パフォーマンスと環境性能を高いレベルで両立させるユニットに仕上がっていると思っていいだろう。ちなみに昨年でWRX STIに搭載されていたEJ20ターボの生産が終了したが、その次の一手もシッカリと用意している。次期WRX用には北米専用3列シートSUV「アセント」に搭載される2.4L直噴ターボがベースになるようだ。また、ベーシックモデル用として、現行1.6L・NAエンジンに代わる1.5L直噴ターボも開発中だと聞いている。これらにより、2030年には全世界販売台数の40%以上をピュアEV+ハイブリッドモデルに、2050年にはWell‐to‐WheelでCO2の90%削減(2010年比)を目指すとも。モーターを用いる電動駆動時代になっても、スバルらしさを強く感じることができるパワートレーンが登場するのは間違いなさそうだ。
【Check!】新世代ダウンサイジングターボ
世界基準を超える3つの新ターボを投入予定
スバルは2021年までに世界生産の8割をダウンサイジングターボに移行する計画で、3タイプのターボエンジンを設定する。その第1弾が北米3列SUV「アセント」に搭載される2.4L直噴ターボ、そして第2弾が新型レヴォーグに搭載予定の1.8L直噴ターボだ。その詳細は未公表だが、最適燃焼の追求、全摺動部フリクション低減の追求、最適設計&制御などによってパフォーマンスと燃費をバランスよく両立させる。最大熱効率は40%近くを実現しているそうだ。風のウワサでは180PS/300N・mくらいのスペックと言われている。ちなみに第3弾は1.5L直噴ターボで、1.6LNAエンジンに代わるユニットとして活用されるようだ。環境対応や燃費の面で不利な水平対向エンジンだが、次世代ダウンサイジングターボの投入で、巻き返しを図ることを期待したい。
コスト/安さ:—— 価値/効果:★★★
星取表:★★★★★=最高! ★★★★=とても良い ★★★=良い ★★=ふつう ★=今イチ
新開発リーンバーンターボはトルクと環境性能を強化
1.8Lリーンターボエンジンは次世代スバル車の是非を問う重要な役割を担う。2.5L・NA車クラスの動力性能を狙って開発されている。
主な採用車種
次期レヴォーグ●2020年後半デビュー予定昨年の東京モーターショーでプロトタイプが展示された次期レヴォーグにまずは搭載される予定。
【Check!】ストロングハイブリッド
北米モデルで実戦投入済み。次世代はこれが主役になるはずだ
トヨタとの関係強化の一つが「協業拡大」だが、その具体例の一つ目となるのが「THS(トヨタハイブリッドシステム)の搭載拡大」だ。すでに北米向けクロストレック(日本名:スバルXV)のプラグインハイブリッドは、トヨタ式のシステムが搭載されている。ちなみに専用2L直噴(137HP/134lb-ft)に資本提携先のトヨタから供給を受けるモーター(118HP/149lb-ft)、パワーコントロール、制御系とリチウムイオンバッテリー(送電力量8.8kWh、容量25Ah)の組み合わせだが、トヨタはシステムサプライヤーと言う立ち位置で、実際はスバル専用設計となっている。2020年代前半に導入予定のストロングハイブリッドは、これをベースにするのは間違いない。間違いなく今後の主力ユニットになるはずだ。
コスト/安さ:★★★ 価値/効果:★★★★
星取表:★★★★★=最高! ★★★★=とても良い ★★★=良い ★★=ふつう ★=今イチ
ボクサーとTHSを融合させたハイブリッド専用システムを開発
トヨタのTHSシステムと組み合わせるハイブリッド専用ボクサーエンジンを開発中。スバルらしい低重心構造が盛り込まれることが予想される。
2つのモーターと直結するAWDシステムは、回生エネルギーの回収効率の向上を狙った設計。FF車比で30%ほど優れた性能を発揮。
主な採用車種
クロストレックハイブリッド(北米仕様)北米で販売しているクロストレック(日本名:スバルXV)のハイブリッド車には、THSを組み合わせたフルハイブリッドが投入済み。
【Check!】e-BOXER(マイルドハイブリッド)
走りをより魅力的に高める優れたサポートアイテム
フォレスターとスバルXVに搭載されている「e-BOXER」は、145PS/19.2kg・mを発揮する2L直噴の水平対向4気筒(FB20)に、リニアトロニック(CVT)に内蔵される10kW/65Nmを発揮するモーターが組み合わされる、パラレルハイブリッドだ。このシステムは先代のスバルXVハイブリッドから採用されているが、現行システムは小型化と効率化のために多くの部品を刷新。バッテリーはリチウムイオンバッテリーを採用している。スバル自身はこのe-BOXERを「ハイブリッド」ではなく「モーターアシスト」と位置付けており、電動化の力をドライバビリティやドライビングファンを引き上げるために使うと言う考え方だ。その分、燃費向上率はそれほど高くないが、実質価格差がガソリン車+約8万円と言うお手頃感もあって人気は高い。
コスト/安さ:★★★★ 価値/効果:★★
星取表:★★★★★=最高! ★★★★=とても良い ★★★=良い ★★=ふつう ★=今イチ
モーターの駆動力は主にアシストに使われる
エンジンとミッションの間に小型モーターを組み込み、両側にクラッチを設けるシンプルな仕組み。駆動力アシストを重視した設計だ。
回生時はモーターとエンジンがクラッチによって切り離される構造のため、1モーター式でも効率の良い蓄電が可能になる。
採用車種
スバルXV(e-BOXER車)●価格:265万1000~292万6000円●発売日(最新改良):’18年10月11日(’19年11月15日)
フォレスター アドバンス●価格:315万7000円●発売日(最新改良):’18年7月9日(’19年7月18日)