車の最新技術
更新日:2020.08.10 / 掲載日:2020.08.10
ペダル踏み間違い事故を防ぐ決定打になるかトヨタ「急アクセル時加速抑制」システム

文●ユニット・コンパス 写真●トヨタ、ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグー本誌 2020年8月掲載の内容です)
自動車業界の話題を掘り下げることで、ニュースだけではわからない裏側をわかりやすく紹介するのがこのコーナー。今回は、7月1日発売の改良型プリウスに搭載された「急アクセル時加速抑制」システムについて紹介する。
従来対応できなかった踏み間違い事故を防ぐ
どうすれば痛ましい事故を防げるのか。世界中の自動車メーカーが真剣に取り組んでいる重要テーマだ。
近年では特に、ペダルの踏み間違いを原因とした衝突事故が社会問題としてクローズアップされている。踏み間違えにより、アクセルを意図せず全開にしてしまうことから、衝突時の速度が高く、重大事故につながるケースが多いからである。
トヨタでは2012年からこの問題に対処するべく、超音波センサーを用いた踏み間違い防止装置を採用。だが、このタイプのシステムは、たとえばコンビニの駐車場のような、障害物がある状況には有効だったものの、前方に障害物がない状況では、システムは作動しなかった。また、自動ブレーキも、ブレーキの対象物が車両や人間、自転車と限られているうえ、ドライバーがアクセルを踏み続けてしまうとその操作を優先し機能がキャンセルされてしまう。
そこでトヨタは、車載DCMを通じて得られたビッグデータを元に、実際の事故状況を分析。ドライバーが意図しない急なアクセル操作(ペダル踏み間違い)のパターンを導き出し、新しい「急アクセル時加速抑制」システムを発表した。
トヨタは、この機能を国内の自動車メーカーに共有する考え。事故のない社会のために貢献していく。
[CLOSE UP]専用キーを持つだけで踏み間違い防止機能が働く

新システムでユニークなのが、専用キーを使うこと。
この専用キーでドアを解錠することでシステムが作動するため、ドライバーが機能を入れ忘れる心配がない。また、キーは販売店で購入できるため、運転が心配な方の分だけ数を増やすことも簡単。
ビッグデータを活用したことで、右折時や一時停止後など、ドライバーが実際に加速を必要とする際には、車両がアクセル操作に反応するようにできたという。
プリウスに続き、今後、SAI、クラウン、マークXにも拡大予定。

運転に不安を持つユーザー専用の「プラスサポート用スマートキー」で解錠すると、自動的に「プラスサポート」が作動する。キーは販売店で購入可能で、ひとつ1万3200円。鍵を持っているだけでいいという手軽さもこのシステムの魅力。
前方に障害物がない状況での意図しない急加速を抑制する

トヨタは2012年からインテリジェントクリアランスソナーを使った踏み間違い対応機能「パーキングサポートブレーキ(静止物)」を導入、2018年からは後付けのシステムも販売。これらの対策で7割の踏み間違い事故に対応できたが、「プラスサポート」でさらなる事故抑制をねらう。

後付けの装置もバージョンアップ 今後、設定車種を拡大する予定
後付けの装置も性能を強化。「踏み間違い加速抑制システムII」は、国土交通省が4月に創設した性能認定制度に対応するもので、従来品よりも低価格でありながら、前方に障害物がない状況でのペダル踏み間違いによる加速を抑制する。まずはプリウスからで、価格は3万8500円(取り付け費用別)。
コネクティッドカーから得たビッグデータを開発に活用
トヨタは2018年以来、新型に車載通信機を標準搭載。それを通じて膨大なデータを収集、研究開発に活用している。今回の踏み間違い防止システムはその活用例で、社会的責任を考え、かつてないスピード感で搭載を実現させたという。