車の最新技術
更新日:2020.11.26 / 掲載日:2020.11.25

大攻勢! SUBARU計画【4】スバルの未来戦略に迫る

走りの質感を高める独自技術に大きなこだわりを持つスバル。近年は次世代への取り組みも積極的で、そのいくつかはすでに実用化も達成している。ここではそんなスバルが将来を見据えて進めている、新世代技術への取り組みに注目してみたい。

プラットフォーム

SGPモデルへの切り替えは順調。レヴォーグからは第2世代に進化

 国内外の自動車メーカーは、いずれも次世代に向けた技術開発を進めているが、なかでも目に見えるカタチとして刷新が進んでいるのが、プラットフォーム関連。スバルは2016年秋の現行インプレッサにSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)を採用するなど、比較的早い段階から新世代シャシーを投入している。

 このSGPは、低重心化に加え、個々のフレームの結合部分を強化したことで車体剛性を強化。乗り心地や静粛性が大きく向上している。インプレッサ以降のすべての新型車に順次採用されているが、いずれも前モデルに比べて走りの質感が大きく向上している。また、当初からSUVも想定して基本設計を進めていたため、SUVとの親和性が高く、設計の自由度が高いことも強みだ。

 ちなみに新型レヴォーグには、外板パネルを骨格部材に組み入れることで剛性を強化する、フルインナーフレーム構造が投入されるなど、SGPとしては第2世代とも言えるほどの進化を遂げている。

 今後、登場が噂されるWRX後継モデルや次期BRZも、これまでのSGP開発で得た多くの知見が投入されるだろう。

  • 新型レヴォーグに採用されたSGPは、骨格の組み立てからアウターパネルを溶接するフルインナーフレーム構造を採用。ボディ剛性がさらに向上した第2世代型に進化している。

SGPへの刷新は2016年秋に登場したインプレッサからスタート。最大の強みは軽量高剛性がもたらすシャシー性能の向上だが、スバルXV、フォレスターを立て続けにデビューさせるなど、開発期間短縮の恩恵も見逃せない特徴だ。

スバルXVはインプレッサから発展したSUV。前モデルはSUVへの活用を考慮しないプラットフォームで開発されたが、現行型のSGPはSUVへの活用も考慮して開発されているため、シャシー性能をフル活用できたそうだ。

パワートレーン

伝統の水平対向エンジンに加えて、電動系ユニットにも次世代型を用意

 水平対向エンジンと電動ユニットの両方に対して、スバルは明確なロードマップを示している。

 まずその第一弾として投入されるのが、水平対向エンジンの次世代ユニット、CB18と名付けられた1.8L直噴ターボだ。新型レヴォーグに投入されたこのユニットは、希薄燃焼技術とロングストローク機構を組み合わせることで、従来ユニットに対して最大40%の熱効率向上を達成。ほぼ同時にフォレスターにも搭載グレードが設定されるなど、今後多くのモデルに水平展開される可能性が高い。

 電動系の次世代パワートレーンに関しては、ハイブリッドとBEV(バッテリー式電気自動車)の2本立てで展開。まずハイブリッド系は、すでにマイルドハイブリッドのe-BOXERを投入しているが、北米のクロストレックに採用されているトヨタ・THS IIシステムを組み合わせたストロングハイブリッド車をベースに開発したモデルが、日本市場にも投入される可能性もある。縦置きの水平対向エンジンとシンメトリカルAWDの関係からすると、トヨタのTHS IIモデルとは違った、スバル独自のハイブリッド車に仕上げられることだろう。ロードマップでは2020年代前半の投入を目指すとされている。

 BEVに関してはトヨタと共同開発が進んでおり、2020年代半ばを目処にSUVモデルが投入される模様。スバルとトヨタで微妙にキャラを変えてくる可能性も高く、その場合スバル仕様は、独自の駆動制御技術が加えられた本格的なSUVに仕上げられるだろう。

 ちなみにEJ20ターボ搭載のWRX STIが生産終了して1年。そろそろ次期WRXの動向も噂されているが、エンジンは北米向けのアセント用の2.4Lターボの改良型の採用も噂されている。ただこのユニットは低中速域から分厚いトルクが盛り上がるダウンサイジングターボ。重量が嵩むSUVには合っているが、ファンが望むような、回して味があるターボに仕上がるかは不透明だ。

2020年1月に開催されたスバル技術ミーティングでは、新世代パワートレーンのロードマップを公開。来たる電動化の時代に先駆けて、ストロングハイブリッド車とBEVの投入時期を公表した。さらに2030年の販売車両の電動化比率を40%まで上げる目標も示した。

  • CB18と名付けられた1.8L直噴ターボエンジンは、燃焼タイミングやフリクションロスの最適化やロングストロール構造の採用で、従来ユニットに対して最大熱効率40%の向上を達成。すでにフォレスターにも搭載されるなど、主力エンジンとして活躍が見込まれる。

  • 現在、トヨタと共同開発している電動SUVのスタディモデルも公開。駆動方式や配置されるモーター数などは不明だが、スバルが持つAWD技術を用いた本格的なモデルに仕上がることが予想できる。

  • より変換効率が優れたATの開発も囁かれているが、現時点で用意されるミッションはスバル独自のCVT「リニアトロニック」のみ。新型レヴォーグでは約8割の部品を新設計されるなど改良も積極的に行われている。

icon クロストレック ハイブリッド (北米仕様)

北米で販売されているクロストレック(日本名:スバルXV)には、THS IIが組み合わされたストロングハイブリッドが投入済み。国内向けは、2020年代前半を目処に、THS IIに最適化されたハイブリッド専用ボクサーエンジンと組み合わせて発売される予定だ。

アイサイト

交通事故ゼロを目指して最新機能の標準化も積極的に展開

 もはや現代のクルマにとって、安全運転支援機能は欠かすことができないマストアイテムの一つ。スバルはアイサイトでこの分野にいち早く切り込み、本格普及に導いた功労者だ。アイサイトのアップデートも積極的で、導入当初は上級モデルに限定されていたツーリングアシストも、今ではインプレッサやスバルXVに標準装備されるほどだ。

 そんな、進化し続けるアイサイトは、新型レヴォーグでさらにスペックアップ。ステレオカメラが広角化され検知範囲が広がったほか、検知方式も従来のステレオカメラ単独から前側方レーダー併用型に進化。前後左右の4つのレーダーでカメラの死角をカバーすることで、360度のセンシングを実現。出会い頭の衝突を防ぐ新機能など、基本性能が大幅に進化を遂げている。

 また、自動車専用道路での渋滞時ハンズオフ走行まで対応するアイサイトX設定車も用意。運転支援機能も大幅に向上している。ちなみに新型レヴォーグの初期受注では93%のモデルがアイサイトX装着車になるそうだ。

 スバルは2030年を目処に交通死亡事故をゼロにする目標を掲げているが、その実現にはアイサイトのさらなる進化も不可欠。今後はレヴォーグに採用された最新アイサイトが、他モデルにも水平展開されていくはずだ。

  • 新型レヴォーグに搭載された新アイサイトは、ステレオカメラの広角化に加えて、ボディ四隅に配置されるレーダーによる360°センサーにより、全周囲にセンシング範囲が拡大。

  • GPSと準天頂衛星「みちびき」の位置情報の活用と高速道路形状情報まで含む3D高精度マップの採用により運転支援機能も向上。従来のツーリングアシストではカバーできなかった、車線変更支援や渋滞時のハンズオフ走行も可能となった。

  • 見通しの悪い交差点や横断歩道でも、車両側方に設置されるセンサーが接近する車両や歩行者を検知。出会い頭事故防止機能など、幅広い障害物に対してより高度な判断を実現している。事故を防ぐ基本性能の向上も見所の一つだ。

次のスバルの新型車は BRZが最有力

 主力モデルを中心に順調に新型に切り替わっているスバル。次に登場する新型が気になるところだが、おそらく今年の夏に生産終了がアナウンスされたBRZが最有力になるだろう。来年下半期を目処に発売される可能性が高い次期BRZだが、すでに北米スバルが現地のファンミーティングでの新型のプロトモデルのお披露目をアナウンス(新型コロナ感染症の影響で直前で中止となった)するなど、その全貌が明らかになるのは時間の問題。新世代のパワートレーンやシャシーが採用されるかどうかが見所だが、“オールニュー”を標榜しているだけに、進化ぶりは大いに期待できそうだ。

  • ティザー的に公開されたのはホイール/フェンダー周りがズームアップされた1枚だけ。現時点では詳細は不明だが、プラットフォームにもパワートレーンにも、最新技術やノウハウが注がれることは間違いないだろう。(月刊自家用車12月号編集時点)

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

グーネットマガジン編集部

ライタープロフィール

グーネットマガジン編集部

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

この人の記事を読む

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

�����ȥ��URL�򥳥ԡ����ޤ���