車の最新技術
更新日:2021.05.07 / 掲載日:2021.04.09
電動車と電気自動車は何が違うの?【EVの疑問、解決します】
最近、話題となることが多い自動車の電動化ですが、そもそも「電動化」とは何を意味するのでしょうか。
疑問:電動車と電気自動車は何が違うの?
答え:電動車は、モーターを駆動に活用したクルマのこと。電気自動車に加えてハイブリッド車やプラグインハイブリッド車も含まれます
「電動車=EV」は間違い! 電動車の様々な種類を解説
日本初の市販EVである日産リーフ。全世界で累計生産台数50万台を達成している
電動車に注目が集まるようになったのは、近年の厳しい環境規制への対応が最も大きいといえます。とくに欧州では、自動車に劇的な改善を求めるCO2排出量規制が敷かれたことで、既存のエンジン車だけではクリアが難しいため、走行中のCO2排出がないEVに積極的なシフトが試みられています。
その中でジャガーやボルボなどの高級ブランドが、近い将来にEVブランドのシフトすることを明言したのは、衝撃的なニュースでした。日本も、他人事ではなく、2050年のカーボンニュートラル(脱炭素社会)の実現に向けて、2030年半ばまでに、新車販売の全てを電動車とすることを政府が目指すことが示され、大きな話題となったことは記憶に新しい所です。
これは一気にエンジン車が消え去り、EVのみとなることを意味しているのでしょうか?
もちろん、欧米の自動車メーカーの積極的な電動化への姿勢は、EV普及の大きな足掛かりとなるのは間違いありません。各国政府も、既に様々な電動車の普及に向けた政策を打ち出しています。とくに、電気だけで走るクリーンさを売りにしたEVは、まさに主役。そのため、世間の「電動車はEVのこと」という認識にも繋がっていますが、これは正しいとはいえません。電動車には、様々なタイプが存在するからです。
そもそも電動車とは、どんなクルマなのでしょうか。
その文字のごとく、電気を動力に使うクルマとなります。その象徴と言えるのが、動力を100%電気で賄うクルマ。つまり、電気自動車(EV)です。
この電気自動車の中には、車載バッテリーで走行するEVだけでなく、車載タンクに充填した水素を用いて発電を行う燃料電池車(FCV)も含まれることを忘れてはいけません。
FCVは、高額な投資が必要となる水素ステーションが必須な上、水素による発電システムも高価であり、現状は、高級車のみ。そのため、EVの陰に隠れてしまっているのが現実です。ただ水素ステーションが整備された地域では、配送トラックや路線バスのような環境負荷の少ないライフラインとしての活躍が期待されています。
世界初の市販ハイブリッドカー プリウス。そのHVメカニズムは、いまや多くのモデルに搭載されるようになった
水素から電気を取り出す燃料電池自動車も電動車のひとつ。写真はトヨタ MIRAI
プラグインハイブリッド車は、エンジン車とEV、両方の特徴をあわせ持つ電動車。写真は三菱 アウトランダーPHEV
じつは「ハイブリッドカー」も立派な電動車!
ホンダ フィットの「e:HEV」は、普段はエンジンで発電した電力でタイヤを駆動。エンジンが得意とする高速走行ではエンジンがタイヤを駆動するユニークなハイブリッド
しかし、電動車には、もっと身近なクルマも含まれます。それがハイブリッドカー(HV)です。
かつてはトヨタ プリウスのように専用車が主役でしたが、現在は、コンパクトカーからミニバンまで、多種多様なハイブリッドカーが存在しています。
HVにも種類があり、発進時や巡行走行など、一定の走行条件下でモーター走行が行える「ストロングハイブリッド(SHV)」。そして、EVとHVの両方のメリットを兼ね備え、充電した電力のみでの走行も可能な「プラグインハイブリッド(PHEV)」。さらに近年は、エンジン主体で走行を行うものの、モーターアシストやエネルギー回生を図ることでエネルギー効率を高めた「マイルドハイブリッド(MHV)」も拡大しています。MHVはモーター走行が出来ないので、乗車時のHVらしさは極めて薄いものですが、これも動力に電気を利用する正真正銘の電動車なのです。
本当にガソリンエンジンはなくなるの?
EVが身近になる将来までは、多種多様なパワートレインが生き残る。写真はレクサスのEVコンセプトカー「LF-Z Electrified」
将来的にEVの普及率を高めることを目標としているのは、世界共通の政府の方針ではありますが、日本での進められる電動車の普及拡大の方向性は、現時点での情報によれば、2030年前後に登場するクルマの全てを電動車とすることを求めるものであり、EVやPHEVのようなモーター走行を主体の電動車だけでなく、様々なハイブリッドカーも含まれることを意味しています。
たしかに近い将来にピュアなエンジン車は失われることにはなることは確かでしょう。しかし、その主役は、まだハイブリッドカーが担うものであり、自身の使い方に適した価格や用途のクルマが選べる状況に、大きな変化はないといえます。むしろ、どのクルマもエネルギー効率や環境性能が高まるので、より理想的なクルマ社会への一歩と捉えても良いでしょう。
この動きは、同時にEVやFCVがより身近となる未来が近づくことも意味しています。その結果、将来的に、完全な電動車だけの時代も訪れるかもしれませんが、今はまだその一歩を踏み出したに過ぎないのです。
執筆者プロフィール:大音安弘(おおと やすひろ)
自動車ジャーナリストの大音安弘氏
1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。