車の最新技術
更新日:2021.05.07 / 掲載日:2021.04.16

電気自動車のスペック表はどうみるの?【EVの疑問、解決します】

文●大音安弘 写真●ユニット・コンパス、日産

 誰しも一度は、乗用車の購入前にチェックするWEBサイトやカタログのスペック表には、クルマの情報が満載。ボディサイズやエンジンの性能、そしてお財布に直結するエネルギー効率(燃費)などの大切なことが記載されていますが、それはEVも同様です。もちろん、EV特有の情報も含まれています。今回は、基本的なスペックの読み方について解説していきましょう。

 ここでは分かりやすいように、主にエンジン車とEVで表記の違いに注目します。下記の表にあるように、構造の違いから、表記も変化します。しかしながら、その項目は、かなり限定的でもあります。基本的には同じクルマですから、電気が関わる部分以外は共通しているのです。

疑問:電気自動車のスペック表はどうみるの?

答え:動力性能を見比べるなら「定格出力」を、電費の良さは「交流電力消費率」をチェック!

EVとガソリン車のスペックの違いは?

エンジン車とEVのスペック表におけるおもな表記の違い
 
エンジン車EV
エンジン原動機(電気モーター)
使用燃料駆動用バッテリー
トランスミッション動力伝達装置

 まずは原動機となる電気モーターです。この項目には、「形式」、「種類」、「定格出力」、「最高出力」、「最大トルク」が記載されています。形式は、エンジン車同様のメーカーが与えた電気モーターユニットの名称です。種類については、エンジンでいう直列6気筒や水平対向4気筒などの構造の違いと考えてください。EVの場合、一部を除き、交流同期モーターを採用しています。それは最も効率に優れるためで、国産EVだけでなく、国産ハイブリッドカーもメインのモーターは、交流同期モーターが使われています。ここは適材適所の考え方なので、モーターの種類をあまり気にする必要はないでしょう。

 電気モーターの性能表記で戸惑うのは、定格出力と最高出力という2つの出力が表記されていることではないでしょうか。まず最高出力と最大トルクは、エンジン同様にそれぞれの最高値を示したもの。特筆すべき、エンジンとの大きな違いは、電気モーターだと作動時より最大トルクが得られること。このため、どのEVも発進時から力強い加速が得られるわけです。ただ電気モーターの場合、最も良好な特性を発揮しながら連続発生できる出力を、「定格出力」といいます。この表示は、電気モーターを搭載した身近な家電製品でも見られます。EVの場合、発進、加速、巡行と走行状況に応じて、最適なモーター回転数が変化するので、定格出力は、モーター性能の指標のひとつと捉えましょう。実際に、同じ電気モーターでも、制御により最高出力や最大トルクが異なりますが、そこは味付けの領域となります。ここはシンプルに定格出力が大きいものの方が、パワフルなモーターだというくらいに捉えておきましょう。

 トランスミッションについては、タイヤへの動力伝達の為に1速固定ギアが与えられるので、表示は最終減速比のみとなります。ただ電気モーターは、発進時から最大トルクが得られ、急加速を得意とする一方で、高速回転域となると電気モーターの発生トルクが減少します。この弱点を克服すべく、レーシングカーやポルシェタイカンのようなスポーツカーでは多段ギアが採用されるケースもあります。

 駆動用バッテリーについては、「種類、個数、電圧、容量」、または「種類、総電圧、総電力量」などの情報が記載されています。種類については、最新EVのほぼ100%がリチウムイオン電池です。最も重要な情報は、総電力量。つまり駆動バッテリーの容量となります。例えば日産リーフの場合は、40kWhと62kWhの2種類の駆動用バッテリーが設定されています。この電気量を示す単位である「kWh」は、電力(kW)に使った時間(h)をかけたもの。これがリーフだと、1時間で40kW使えるバッテリーと62kW使えるバッテリーがあることを意味します。当然、数値の大きい後者の方が大容量バッテリーとなるわけです。もし総電力量がスペック表に記載されていない場合は、計算で求めることもできます。ただカタログなどには総電力量が記載されているケースがほとんど。そちらを参考にした方が簡単かつ正確です。

「交流電力消費率」がシステムの効率を示す数値になる

「一充電走行距離」で走行可能距離はわかるが、効率の良し悪しを見抜くには「交流電力消費率」が大事

「一充電走行距離」で走行可能距離はわかるが、効率の良し悪しを見抜くには「交流電力消費率」が大事

 最後は、性能についてです。スペック上の性能は、エンジン車でいう燃費消費率のこと。EVだと代わりに、交流電力消費率が記載されています。
 エンジン車だと、1Lで何キロ走れるかということになりますが、EVでは1km走るのにどのくらい電力が必要かを表しています。つまり、数値が少ないほど電費の良いとなるわけです。ここも慣れるまで誤解しやすい点でしょう。
 またエンジン車にない一充電走行距離(航続距離)も記されており、満充電の際、既定の走行条件で何キロ走行可能か示したものです。現在、日本での使用される基準は、実走行に近いという国際的な試験法に基づいた「WLTC」を採用していますが、従来の日本独自の試験法である「JC08モード」が併記されていることもあります。なので、同じ容量の駆動バッテリー搭載車でも、航続距離に差があるのは、この電費の良し悪しが関係しているのです。
 ただ難しいのが、エンジン車よりもEVの方が、使用環境などに電費が左右されやすいこと。例えば、夏場の冷房や冬場の暖房を多用すれば、電費が落ち、航続距離も短くなります。エンジン車ならば、緊急時の給油も簡単ですが、EVは充電設備がマスト。ここはEV普及の大きな課題のひとつでもあります。

執筆者プロフィール:大音安弘(おおと やすひろ)

自動車ジャーナリストの大音安弘氏

自動車ジャーナリストの大音安弘氏

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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グーネットマガジン編集部

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