車の最新技術
更新日:2021.05.07 / 掲載日:2021.04.30

電気自動車の充電ってなんで種類があるの?【EVの疑問、解決します】

文●大音安弘

 EVのメリットのひとつに、ガソリンスタンドでの給油が不要となることが良く挙げられます。時間的な手間だけでなく、燃料の匂いが苦手という人も多いようです。しかし、給油いらずのEVも、流石にエネルギー無しに走ることはできません。その代わりに充電が必要なのです。ですが、充電にまつわる環境の複雑さが新規ユーザーにとってひとつの壁となっています。ここでは、EVの充電について、種類や仕組みを紹介します。

疑問:電気自動車の充電ってなんで種類があるの?

答え:充電器に種類があるのは、機材や環境によるもの。必要に応じて適切な充電方法を選びましょう

普通充電は100Vよりも200Vが劇的に充電時間が早い

 EVには、給油口の代わりに充電口が設けられています。エンジン車の場合、リヤフェンダーの左右いずれかにあることが多いですが、EV(PHEV)では車種によりまちまち。もっとも前後フェンダーやボンネット付近が多いですが……。さらに充電口の内部にはソケットがあり、それを給電元となるコンセントなどとケーブルで接続し、充電を行います。ただ注意が必要なのは、車両側のソケットは1種類ではなく、2種類も存在すること。サイズや形状が異なるので、間違って接続することはありませんが、なぜ2種類も備えているのでしょうか。その理由は、充電方法が異なるためです。

 充電方法は、普通充電と急速充電のふたつに分けることができます。普通充電は、私たちが日常的に利用している100Vまたは200Vの家庭用電源を利用するもの。「家庭用は100Vじゃないの?」という声もあるでしょうが、エアコンIHクッキングヒーターなどは、200V電源を使用するものもあるので、割と身近な存在といえます。そのため、多くの住宅の分電盤には、200Vの供給が出来る電線が届いているのです。さて100Vと200Vの違いは何処にあるのでしょう。電圧の違いは、一言でいえばパワーの差。100psと200psの加速力に違いがあるように、充電時間に差が生じます。その例として100Vと200Vの両方の普通充電に対応するマツダMX-30EVを例に見ていきましょう。

 電圧電力充電時間
普通充電(AC)100V0.6kW47時間
 200V3kW12時間
 200V6kW5時間
表1:マツダ MX-30 EV MODELの普通充電時間(満充電)

 上記のように、100Vと200Vでは、充電時間が劇的に異なります。このため、200Vの利用が推奨されるのです。もっともEVの充電には、EV専用コンセントや充電器の設置が必要ですから、その工事と合わせて、200Vの電源を確保するのが一般的でしょう。しかも200Vなら、100V換算の2倍の電流が流せるので、アンペア出力を抑えることができ、結果的に電気代も抑えることができます。また200V電源ならば、より高出力な6kW普通充電器を設置も可能に。上記にあるように、2倍の電力を供給できるので半分程度の時間で充電を終了できます。日常的に移動が多い人には、6kWの普通充電器を設置するメリットもあるでしょう。但し、EV専用コンセントと車載ケーブルでも利用可能な3kW充電に比べると、設置費用は高価となります。

急速充電にも充電器側の出力と車両側の受け入れスペックが関係してくる

高速道路のSAには急速充電器が用意されているが、充電器の台数が少ないことも多いので注意したい

高速道路のSAには急速充電器が用意されているが、充電器の台数が少ないことも多いので注意したい

 急速充電は、その名の通りスピード重視の充電。スマートフォンなどでも馴染み深い機能ですが、ただEV用の急速充電器は、非常に高価なため、個人で導入することは稀。基本的には、街中に整備されたものを利用することになります。
 主な設置場所として、高速道のSA及びPA、商業施設などの駐車場、自動車販売店などの公共性の高い場所が中心です。急速充電器と一言でいっても、実は様々な規格があります。しかし、日本の場合は、ほぼひとつと言っても過言ではありません。それは日本で考えられた電気自動車用急速充電規格「CHAdeMO」で急速充電インフラの整備が進められているからです。例外と言えるのが、EV界の異端児、テスラ(米国)。独自規格の急速充電器を日本でも展開しています。ただテスラ車でも、CHAdeMOが利用できるように、テスラではアダプターを用意しています。この急速充電器を利用すれば、数十分間の充電でも多くの電気を蓄えることが出来ますが、普通充電と異なり、満充電にはできず、80%が最大となります。
 これは満充電に近づくほど、充電スピードが遅くなるため。効率を重視すれば、80%がベターなのです。ただ多くの人が共用する急速充電器では、1回の利用が30分に制限されていることが一般的。このため、EVにより搭載バッテリーの総容量や種類により急速充電器の性能が異なるため、どの程度充電が回復できるかは、ケースバイケースとなります。それでも1回の充電では数十キロ単位でのチャージが出来るため、出先での充電には重宝します。但し、急速充電は、駆動バッテリーへの負荷も大きいため、頻繁に利用するとバッテリー性能の低下に繋がるリスクも……。
 ですから、自宅や職場などのベースとなる場所での普通充電。ドライブなどの出先や急な充電が必要な場合は、急速充電と使い分けると良いでしょう。もちろん、バッテリー性能や保護回路などEVも日々進化していますので、そこまでシビアになる必要はないでしょう。ただどんな道具も大切に使えば、長持ちするもの。愛車をいたわるつもりで、充電を上手く使い分けたいものですね。

車種駆動用バッテリー容量対応する急速充電の出力充電時間(80%充電)
マツダMX-30 EV MODEL35.5kWh最大40kW40分
日産リーフ40.0kWh最大50kW約40分
日産リーフe+62kWh最大100kW約60分(※50kWの急速充電器利用時)
ホンダe35.5kWh50kW以上30分
表2:国産EVが急速充電利用時に必要な出力と充電時間

執筆者プロフィール:大音安弘(おおと やすひろ)

自動車ジャーナリストの大音安弘氏

自動車ジャーナリストの大音安弘氏

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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グーネットマガジン編集部

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