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更新日:2021.08.10 / 掲載日:2021.08.10
期待のスポーツカー86/BRZに初試乗!【ニュースキャッチアップ】

写真手前「86」、奥「BRZ」
文●ユニット・コンパス 写真●トヨタ、スバル
(掲載されている内容はグー本誌 2021年8月発売号掲載の内容です)
トヨタ(GR)とスバルが共同開発した新型スポーツカー86/BRZのプロトタイプモデルをサーキットで試乗。新型のパフォーマンスを確認すると同時に、開発陣が込めたスポーツカー作りへの想いを取材した。
電動化ばかりが話題の業界に一服の清涼剤
自動車メーカーは生き残りをかけ電動化やカーボンニュートラルに全力投入している。それは自動車が持続可能な存在であるためには欠かせない努力だが、やはり純粋に乗って楽しいクルマの存在は格別だ。
新しくスポーツカーを開発するのは、ビジネス的な側面で考えると難しい。ならば開発コストを2社で分担すればいいじゃないか、というのが最近のトヨタの戦術。スバルとタッグを組んだ初代86/BRZは、結果的に十分以上の結果を残した。こうしてフルモデルチェンジが実現したのが何よりの証拠だ。
一方で、スポーツカーへの逆風はさらに強くなっている。排出ガス、衝突安全、騒音といった各種規制は厳しさを増し、自動ブレーキも装着が義務化されることになった。普通に開発すると、重く、高く、排気音が静かな、魅力のないスポーツカーになってしまうのだ。
新型86/BRZでは、プラットフォームを改良して高剛性と軽量化を進め、2.4Lの新型エンジンも投入。一方で、コストを抑えるために共通化部品を増やしている。魅力的なスポーツカーを作りたいという情熱と、それをビジネスとして成立させるための計算が両立しているのだ。
まずはこの夏にBRZが、そして秋に86が登場予定。それぞれに作り手の熱い想いが込められた力作だ。
[CLOSE UP]トヨタとスバルそれぞれのスポーツカー像を目指した

当初は、メカニズムの多くを共通化しコスト低減を図る予定だった。だが、開発後期になってからトヨタが自分たちの考えるスポーツカーらしい走りを実現するためには、独自のサス構造が必要と判断。BRZはタイヤをソリッドに地面に接地させる考え方なのに対して、86ではあえてリアタイヤを動かすようにし、ドライバーがクルマの動きを感じやすいようにセッティングしている。
心臓部たるエンジンは現行モデルの2Lから2.4Lへと拡大された。ユーザーからの要望であったパワーアップに応えるもの。現行モデルからボアを拡大している。
レヴォーグで確立したフルインナーフレーム構造の考え方を取り入れ、剛性アップを実現。衝突安全性能のための重量増は、アルミ素材の採用で最小限に抑えた。
[86]速さだけでなく、クルマとの対話を重視した86

86は、クルマから乗り手に多くのメッセージを送ってくれるタイプのクルマだ。アクセルに対する反応の作り込みもそうだし、リアタイヤの状態をドライバーに積極的に伝えるサスセッティングもそう。だからこそ、上手く走れたときは気持ちよくなるし、失敗したときには、それをきちんと伝えてくれるのだ。

[BRZ]BRZはスポーツカーとしての王道を行くセッティング

BRZに試乗して感じたのが、スポーツカーの王道的な走りを目指しているということ。サーキット走行では先代に比べて車体が飛躍的安定していて、安心してグリップを使い切ることができた。多くのドライバーにとってタイムの出しやすいセッティング。アクセルに対する反応もリニアな味付けだ。

スポーツカーへの情熱を感じる2台の違い
BRZの王道スポーツカー的セッティングには、市販車をベースに高性能なレースモデルを作ってきたスバルの歴史や文化を感じる。一方でGRは、86を手に入りやすい価格の入門かつ奥深いスポーツカーととらえている。他のスポーツカーと速さを比べるよりも、ドライバーが運転を楽しめ、スキルアップを実感できることを重視しているのだ。