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更新日:2022.03.25 / 掲載日:2021.11.02
【ダイハツ ロッキー/トヨタ ライズ】新ハイブリッド「e-SMART HYBRID」を解説

文●大音安弘 写真●ダイハツ、トヨタ
身近なコンパクトSUVとして好調なセールスを続ける「ダイハツ ロッキー」と「トヨタ ライズ」に、待望のハイブリッド車が登場。ダイハツが開発した新ハイブリッドシステム「e-SMART HYBRID」を搭載しているという。さらにガソリンエンジン車もターボに加え、新たに自然吸気エンジンが追加。エントリー価格も引き下げられている。パワーユニット選択の幅が広がった改良型の特徴をお伝えしよう。
コンパクトSUVの「ダイハツ ロッキー」と「トヨタ ライズ」が、2021年11月1日、一部改良と仕様追加を実施した。ロッキーとライズは、メーカーの枠を超えた姉妹車であり、ダイハツ主体で開発され、同社の新しいクルマ作りである「DNGA」の第2弾として、2019年に送り出された。2台のデザインやグレード構成など異なる点もあるが、基本的なメカニズムは、全く同様だ。
「e-SMART HYBRID」はエンジンが発電に徹するシリーズハイブリッド式

新登場となるハイブリッド「e-SMART HYBRID」は、エンジンを発電のみに使用するシリーズハイブリッドとしたのが最大の特徴。この仕組みを採用するハイブリッドカーは、日産の「e-POWER」シリーズが有名だ。同システムを採用した理由は、中低速が中心の街乗りが多い車体が軽い小さなクルマに最適なシステムのためだという。システムの主な構成は、発電用の新開発1.2Lエンジン、発電用と駆動用の二つのモーターなどで構成される駆動システム、駆動用のリチウムイオン電池(4.3Ah)となり、バッテリーはリヤシート下に収めることで、エンジン車と変わらぬ車内空間を実現させている。
モーター出力は、106ps(78kW)、170Nmと、今までの1.0Lターボを上回る性能を発揮。駆動方式はFFのみとなるので、従来型のFFターボと比較すると、90㎏の重量増ではあるが、4WDターボとは20kg差に抑えられているため、しっかりと力強さが感じられる性能が与えられているようだ。ダイハツによれば、発進時の加速度比較では、ターボの約2倍というから凄い。さらにモーター駆動の強みとして、アクセル開度に対しても、エンジン車よりも俊敏な反応を見せる点が挙げられる。しかも燃費消費率は、28.0km/Lと優秀だ。
街中で多用する0-40km/hの領域なら、エンジン発電を抑えられるので、車内も静か。さらに発電時の音も抑えられるように、遮音材の追加や制振材のチューニングも行うなど快適性にも力を入れている。ハイブリット専用機能としては、「スマートペダル」を採用。これはいわゆるアクセル操作で加減速を行えるようにすることで、よりリニアな走りとスムーズな加減速を可能としたもの。より電動車らしい走りが楽しめるだけでなく、安全運転の向上にも繋がる機能だ。もちろん、機能はスイッチでON/OFF切り替えもできる。

新パワーユニットは、もうひとつある。新開発の1.2L直列3気筒DOHCエンジンを搭載したFF車だ。ハイブリットシステムと同時開発された同系列のエンジンだが、一部仕様とチューニングが異なる。最高出力87ps、最大トルク113Nmを発揮。燃費消費率は、20.7km/L(WLTCモード)となる。トランスミッションは、CVTのみ。軽快な走りが好評だった1.0L3気筒DOHCターボエンジンは、4WD車専用となり、継続。最高出力98ps、最大トルク140Nmを発揮し、燃費消費率は、17.4km/L(WLTCモード)となる。こちらもトランスミッションは、CVTである点はこれまで同様だ。
先進安全装備も進化。非常時の電源確保に役立つ装備も

このほか新機能として、電動パーキングブレーキを採用し、先進の安全運転支援機能「スマートアシスト」は、タフトから採用する新ステレオカメラを変更することで、性能を向上。主な変更点は、夜間歩行者検知機能、標識認識の種類拡大、ふらつき警報、路面逸脱警報となっており、より安心安全を向上された。またハイブリット車には、差別化を図る専用エクステリアをロッキーに採用。ハイブリッドバッテリーを活かしたオプションとして、AC100V/1500Wのアクセサリーコンセントを用意。ガソリン満タン状態ならば、消費電力400W時で、約4日間の供給が可能だそう。普段は、遊びの味方として使えるが、非常時の電源確保にも役立つ。
徹底した低コスト化で手頃な価格を実現

ハイブリッドシステムの開発には、走りの完成度はもちろんだが、ダイハツに求められる徹底した軽量化と低コスト化にも注力。その結果、コンパクトSUV最廉価のハイブリッド車価格を実現した。注目のハイブリッド車の価格帯は、ダイハツ ロッキーで、2,116,000円~2,347,000円。トヨタ ライズのハイブリッド車が、2,163,000円~2,328,000円となる。
シリーズ全体の価格は、ダイハツ ロッキーが、1,667,000円~2,347,000円。トヨタ ライズが1,707,000円~2,328,000円だ。

執筆者プロフィール:大音安弘(おおと やすひろ)
自動車ジャーナリストの大音安弘氏 1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。