車の最新技術
更新日:2022.04.12 / 掲載日:2022.02.12

ロードスターに採用された制御技術「KPC」を解説【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

文●石井昌道 写真●マツダ

 ロードスターのマイナーチェンジで採用されたKPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)=運動学に基づいた車体姿勢の制御技術。ロードスターらしい日常域での軽快感あふれる走りはそのままに、高速・高G域での一体感を向上させるアイテムだ。

 ロードスターのリアサスペンションは制動時に車体を引き下げるアンチリフト特性を持っており、これを活用して車体の浮きを抑制。後輪の左右の回転速度差が一定以上で横Gが約0.3G以上になるとリア内側のブレーキをわずかに制動させるという。回転速度差が大きい=コーナーのRがきついほど効きも強くなる。KPCはあくまで車体の浮き上がりを抑制するものであり、ブレーキによってヨー(曲がる力)を発生させるトルクベクタリング機能ではない。ブレーキを作動させる液圧は最大0.3Mpaと極小で、制動力やヨーが発生するような強さではないのだ。

「KPC」の有無による姿勢の違いを示したイメージ図。コーナーイン側の車体後方(図の場合は左後輪側)が浮き上がりにくくなっている

 そもそもNDロードスターの開発テーマは、初代NAロードスターへの原点回帰だった。車両重量やエンジンパワーをNA並として、あのヒラヒラと舞うようなライトウエイトスポーツらしいフィーリングを狙った。ただし、NAはタイヤのグリップが低く、それが軽快感に繋がっていた面もあった。現代ではそれは許されないので、タイヤのグリップはある程度高めて容易には滑らないようにした範囲のなかで軽快感を出す工夫がなされている。手法は、サスペンションのストロークを長めにとり、荷重移動をわかりやすくしたことだ。ブレーキをかければノーズがダイブし、ステアリングを右に切れば左側が沈み込むといった挙動が感じやすければ、ドライバーは操っている実感が得られる。とくにベーシックな“S”はスタビライザーやフロアのブレース、LSDを持たずに軽量で、かつロール剛性をあえて低くしてあり、造り手としては本懐のモデル。たしかに、街中を普通に走らせるだけでも動きがわかりやすくて、低速域から楽しめるのが秀逸だった。

 だが、速度が高まり、かかるGも大きくなっていくと、動きすぎてしまう感覚もある。コーナーへ向けてブレーキングしてステアリングを切り込んでいくと、リアのイン側が浮き上がるような姿勢になり、不安定になることも。それなりの速度やGで走りを楽しむには、やはりスタビライザーやLSDは必要なのだとも感じていた。

ロードスター 990S

 そこを上手にバランスさせたのが新たに設定された“990S“だ。1t切りの車両重量を車名にした“S“ベースのモデルであり、KPCおよびシャシーセッティングで進化させた。

 “S”と”990S”をワインディングロードで乗り比べてみると、その差は明らかだ。気になっていたブレーキングからターンインの姿勢は、対角線上に動くダイアゴナルが抑制されて良くなっていた。ただし、これはKPCの効果ではない。ブレーキで制御するKPCは、ドライバーがブレーキをかけているときには作動できないからだ。”990S”は”S”に対してスプリングレートを若干高めているが、フロントのほうが上げ幅が大きいという。それで前のめりになりすぎる姿勢が抑えられている。ブレーキを操作していない状態でのコーナリングではKPCの効果があった。それなりの速度で旋回しているときに、路面の凹凸などで上下動が大きくなってくるような場面で、リアの浮き上がりが抑えられ安定感が増している。サスペンションがしなやかに動く感覚が強くタイヤが的確に路面を捉えているから安心感も高い。”S”が持っていたヒラヒラ感はそのままに、高Gのコーナリングでの操縦安定性が高まり、楽しめる幅が広がったのだ。

 “S”に対して、スプリングは硬くしているがダンパーは逆に弱めることができたそうだ。ライトウエイトスポーツの老舗であるロータスのエンジニアに取材したときに、ライド&ハンドリングはスタビライザーやLSDを使わないで造り込み、開発時にはダンパーもなしでスプリングだけで走らせることもあると聞いたことがある。素性を磨くには味付け的なものは余計であり、それでしっかりと走るように仕上げなければいいクルマにならないというのだ。”S990”はそんな理想に、シャシーのリセッティングとKPCで大いに近づいたといえるだろう。

 LSDが装着されるモデルにもKPCは採用されるが、効果としてはオープンデフ(LSDなし)の“S990”に比べると低くなる。そもそもデフは旋回時に駆動輪の内側と外側に回転速度差が生じても、それを吸収しつつエンジンのトルクを伝える作動装置。これがなければ上手くまがることができなくなる。ところが、Gの高いコーナリングでは内側が浮き気味になって空転するとトルクが伝わらなくなるのが欠点であり、それを補うのが作動制限装置であるLSDだ。KPCは内側と外側の回転速度差を感知して作動するが、LSDはそもそも回転速度差を制限しているので、KPCの効果が薄れることになる。また、LSDはコーナーへの進入で車体を安定させる効果もあるが(曲がりづらくしているということでもある)、オープンデフ+KPCではブレーキ操作をしていない状態ならそれに近い効果が得られる。

 KPCは制御技術であり、ハードウエアを必要としないので重量増がないのもロードスターに向いている。ドライバーに作動感を伝えず、自然な感覚のまま性能を高める技術なのだ。

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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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