車の最新技術
更新日:2022.03.31 / 掲載日:2022.03.31
ジャガー・ランドローバー プラマック社とバッテリー二次利用で締結

ジャガー・ランドローバーは現地時間の3月15日、欧州におけるエネルギー事業のリーディングカンパニーであるプラマック社(Pramac、本社:イタリア)とパートナーシップを締結、ジャガーのフルバッテリー電気自動車(BEV)である「I-PACE」の車載バッテリーを二次利用し、ポータブルのゼロエミッション・エネルギー貯蔵ユニットを開発したことを発表した。同社では今後、プラマック社とともに2039年までの排出ガス量実質ゼロ達成を目指す。
車載バッテリーを再利用 ソーラーパネルで充電可
同ユニットの開発には、オフグリッド・バッテリー・エネルギー・ストレージ・システム(ESS)と名付けられたプラマック社の技術を利用。I-PACEのプロトタイプや技術テスト車両のバッテリーから取り出したリチウムイオンセルを搭載し、主電源へのアクセスが限られている、または利用できない場合に、ゼロエミッションで電力を供給することを可能としている。フラッグシップのESSの容量は最大125kWhで、一般家庭で使われるI-PACEの電費量で換算すると、フル充電で1週間分の走行に必要な電力を供給できるという。同システム開発におけるジャガー・ランドローバーの部品(車載バッテリー、モジュール、配線など)は全体の85%に上り、残りのマテリアルはサプライチェーンに戻されてリサイクルされる。また、同システムはソーラーパネルから充電を行い、双方向コンバーターとそれに付随する制御管理システムを備えたバッテリーシステムで構成される自己完結型ソリューションで、商用レンタルによる展開も可能となっている。なお、同システムからEVへの充電接続もでき、最大22KwhのAC充電ができる。
EVバッテリーの循環型経済ビジネスモデル構築に向けた計画の第1弾
今回のパートナーシップ締結は、電気自動車のバッテリーの新たな循環型経済ビジネスモデルを構築するというジャガー・ランドローバーの計画の第1弾に位置付け。2039年までに排出ガス量実質ゼロの達成を目指すというコミットメントの一環として、今後もBEV用バッテリーの二次利用やそれ以上の用途を実現するプログラムを立ち上げる予定だとしている。
ジャガー・ランドローバーによれば、同ブランドのバッテリーは車載用としての役目を終えた後でも、過度の利用を必要としない状況下であれば安全な利用が可能という。このことを踏まえ、再生可能エネルギー貯蔵のような定置用途に二次利用される想定であれば、その供給量は2030年までに年間200GWhを超え、300億ドル以上の価値を生み出せる見込みがあるとしている。
なお、このユニットの利用はすでに開始されており、2022/23 ABB FIAフォーミュラE世界選手権の準備のために英国とスペインで行われたテストにおいて、ジャガーTCSレーシングがコース上でのマシンのパフォーマンスを分析する最新鋭の診断機器や、ピットガレージへの補助電源供給に使用。また、南アフリカ共和国ヨハネスブルグのジャガー・ランドローバー拠点にも導入されている。
ブランドモデルのEV化に先駆けてバッテリー再利用技術構築へ
今回のパートナーシップ締結に際し、ジャガー・ランドローバーのストラテジー&サステナビリティ担当エグゼクティブ・ディレクターである、フランソワ・ドッサ氏は、次のように語る。
「当社は、2025年以降すべてのジャガーモデルをBEVとし、2024年にはランドローバー初となるBEVを導入予定で、未来に向けて電動化を進めています。これは、バッテリーから充電まで包括的なEVエコシステムの開発を行っている当社のサステナビリティ戦略にとって、きわめて重要な要素であり、バッテリー再利用のための技術およびビジネスにおけるイノベーションを可能にするための取り組みも含まれます。Pramacとのパートナーシップは、再生可能エネルギーと再生バッテリーの組み合わせによって排出ガスを出さずにいかにして電力供給を可能にしていくのかを示すものであり、その方向性を実証するものでもあります。ジャガーTCSレーシングチームは、バレンシアでのテストを通じて、クリーンエネルギーの相乗効果の可能性を探り、実行可能なソリューションの検証を続け、エコシステム全体を活性化させるための方法を示してくれました」。
また、プラマック社ディレクターのダニー・ジョーンズ氏は「ジャガー・ランドローバーと緊密に協力できることができ光栄に思います。ジャガー・ランドローバーは、EVモジュールを二次利用し、堅牢な製品と商業的に実行可能なビジネスケースの成功を目指す当社にとって、きわめて頼りになるパートナーです。エネルギー効率と二酸化炭素排出量を削減する技術を提供するメーカーとして、サステナビリティのストーリーに新たな要素をもたらすと自負しています。ジャガー・ランドローバーとともに、革新的な充電インフラストラクチャー・ソリューションを提供し、クラスをリードする自動車の電動化をサポートできることを楽しみにしています」とコメントを寄せている。
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