新型車比較・ライバル車対決
更新日:2023.12.24 / 掲載日:2023.08.26

国産SUVを300万円台で買うなら? 達人の選択はRAV4/エクストレイル/ZR-V!

国産300万円台SUV・達人の選択

『18車種121グレードのベストはコレだ!!』

増殖が止まらないSUV。ありとあらゆるモデルがある中で、車両本体価格300万円台は汎用性に優れたモデルが揃うボリュームゾーンで、国産だけでも18車種121グレードもの選択肢がある。今回は本誌レギュラー執筆陣がそれぞれの視点で5台をセレクト。複数の支持を集めたモデルに注目するもよし、自分の視点に近い選者の意見を重視するもよし。SUV選びの一助になれば幸いだ。

●文:川島茂夫/まるも亜希子/渡辺陽一郎

【3人が選択】TOYOTA RAV4

※写真は一部改良前のものを含みます

せっかくRAV4を選ぶなら「ダイナミックトルクベクタリングAWD」を味わいたい

TOYOTA RAV4 プロフィール
 現行型は’19年に国内デビュー。外観は標準系とタフなアドベンチャーの2タイプで、当初のラインナップは2ℓガソリン車と2.5ℓHEVだった。’21年にはそれまで別車種扱いだった2.5ℓPHEVを「Z」グレードとして統合。’23年6月の登録台数が約3400台という人気車だ。

4WDへのこだわりが真骨頂

スロットル/シフト/駆動力配分/パワステ/ブレーキの制御を組み合わせる4WD統合制御(AIM)を4WD車に標準搭載。ワンアクションで状況に適した制御を得られる。
HEVの4WD車に搭載されるトレイルモードは空転をブレーキで抑える仕組みだ。
海や山、ウインタースポーツなど、趣味やレジャーの現場での安心感はSUVならではの魅力。RAV4が特にこだわる部分だ。

SUVらしい使い勝手にもこだわる

荷室にはアクセサリーコンセントをオプション設定。ガソリン車はAC100V・100W、HEVとPHEVは1500W。
荷物の多いレジャーや雨天、普段の買い物にも重宝するハンズフリーパワーバックドア。XとG、アドベンチャー以外に標準装着。
上位グレードはデジタルインナーミラー(録画機能付)で荷物満載時も視界を確保。

川島の選択

アドベンチャー(ガソリン車)●価格:368万4000円

悪路踏破性やドライブフィール、燃費に至るまで死角なし!
 目的意識のはっきりした走りが印象的だ。目的のひとつは言うまでもなく悪路踏破性にあり、乗用車型プラットフォームによる耐久性の限界はあるにしても、ソリッドアクスルをベースに左右輪のトルク配分を電子制御化し悪路走行での要点を決めて扱いを容易にするダイナミックトルクベクタリングAWDはアウトドア趣味に用いるには十分過ぎるほどの悪路踏破性を実現。全開加速性能こそ平凡だが、一般的な用途ではパワースペック以上のゆとりを感じさせてくれるパワートレーンも好印象。しかも同カテゴリーのガソリン車では最高水準の燃費。神経質な反応を抑えてライントレース性を高めたハンドリングも長駆レジャーに適している。乗り心地や静粛性は平均的なレベルだが、アウトドア趣味のためのSUVに求められる要素をバランスよく高水準でまとめて死角なしというタイプだ。

まるもの選択

G “Zパッケージ”●価格:383万6000円

至れり尽くせりの装備内容で安心して快適に過ごせる
 タフで洗練されたスタイリングと、高い居住性や積載性、頼もしい走破性をすべて兼ね備えるミッドサイズSUV。2.0ℓガソリンと2.5ℓハイブリッド、およびPHEVがあり、3タイプの4WDシステムを設定しているほど、ユーザーの趣味やライフスタイルによって望む走破性にピッタリな1台が選べるのも特徴的だ。おすすめのG “Zパッケージ”は、最もタフなダイナミックトルクベクタリングAWDでありながら、ドライブレコーダー内蔵のデジタルインナーミラーや、床下透過表示付きのパノラミックビューモニターが標準装備となるなど、運転中の安心感も手に入る。また、後席の頭上や足元のゆとりがたっぷりあり、高速走行時の乗り心地も快適。使い勝手を高める装備も盛り沢山で、ハンズフリーパワーバックドアが標準装備されるため、荷物の積み込みが頻繁なファミリーならとくに便利だ。

渡辺の選択

アドベンチャー(ガソリン車)●価格:368万4000円

Gグレード相当の装備内容で悪路対応力が高い分、お買い得
 RAV4はハリアーと同じく、前輪駆動をベースにしたプラットフォームを使うシティ派SUVだが、野性的な外観や4WDの200㎜に達する最低地上高など、車両の性格はランドクルーザーのような悪路向けに近い。この個性を明確に感じさせる代表グレードが、2ℓのノーマルエンジンを搭載するアドベンチャー4WDだ。後輪左右の駆動力配分を積極的に変化させるダイナミックトルクベクタリングAWDを装着して、悪路や雪道から、舗装された峠道のカーブまで安定して良く曲がる。動力性能は少し足りないが、さほど不満はない。

 後席や荷室も広く、ファミリーカーにも適する。19インチアルミホイールなど、各種の装備も充実させた。価格は2ℓエンジンと4WDを搭載して快適装備を充実させたGと同程度だが、アドベンチャーは悪路向けの装備も豊富に採用して買い得だ。

【3人が選択】NISSAN エクストレイル

実用SUVとしての高い地力にVCターボ&e-POWERやe-4ORCEの魅力が加わる

NISSAN エクストレイル プロフィール
 かつて「タフギア」を謳っていた実用SUVが’22年の全面改良を機に一足跳びの進化を遂げた。ルノー・三菱との協業による車台に可変圧縮比のVCターボ+e-POWERを搭載。4WD車は最先端の制御技術を投入したe-4ORCEを採用している。

日産独自技術満載のパワートレーン

優秀な制御のe-4ORCE

e-4ORCEの恩恵はハンドリングの良さとしてオンロードでも享受できるが、もちろん悪路でもその実力を発揮してくれる。

プロパイロットはナビと連携

今回の記事では価格の縛りがあるため標準搭載車は選べないが、XにOP設定のプロパイロットはナビリンク機能付きの上級仕様。カーブでの速度抑制など高度な制御が可能だ。

実用本位のDNAも健在

エクストレイル伝統の防水シートは、X系グレードにオプションで用意される。

川島の選択

S e-4ORCE●価格:375万9800円

電動の長所を引き出す4WD制御が大いに魅力
 タイムラグ実質ゼロで最大トルク内なら指定通りのトルクを発生。故に電動モーターの出力特性はプログラム次第である。エクストレイルの電動力の巧みさは勘所を押さえたプログラムにある。もちろん、高効率で6気筒を思わせるエンジンフィールの可変圧縮比ターボやゆとりあるトルクが与えられた電動モーターの採用もあるのだが、価値を刺激的な加速に置くのではなく、加速の伸びやかさや滑らかに繋がる緩やかな加減速など、ストレスを排したコントロール感が心地いい。とくに初期加速で後輪を積極的に駆動するなど車体挙動や操舵に応じてオンデマンドで制御するe-4ORCEは走りの洗練感をさらに向上。基本は悪路対応力を考慮した選択だが、ハードウェア構成からしてもFFとの価格差が25万円なのはかなり買い得な値付け。オンロード派にも投資価値を見出せる4WDである。

まるもの選択

X●価格:374万8800円

2WDの乗り味も魅力的で装備内容もアップできる
 上質でくつろげるインテリアと、大容量のラゲッジスペースが手に入るエクストレイルは、パワフルでなめらかなモーター走行がロングドライブを快適にしてくれるSUV。2列シート5人乗りと3列シート7人乗りが設定されており、3世帯同居家族にも使いやすいパッケージだ。オフロードや雪道だけでなく、一般道のカーブや高速道路での安定性を高めてくれる新世代の4WD「e-4ORCE」もエクストレイルの魅力のひとつ。400万円未満で選べるのは「S e-4ORCE」のみとなるが、2WDの軽やかな乗り味も魅力的。おすすめの「X」は室内に後席USBや照明付きフロントセンタートレイなどがあり、家族みんなでリラックスして過ごせるほか、長距離走行や知らない道を走ることが多ければ、ナビリンク機能付きのプロパイロットもオプションで装着可能。カーブでの減速などをサポートしてくれて、安心して出かけられる。

渡辺の選択

S e-4ORCE●価格:375万9800円

装備内容は限定的になるがe-4ORCEが手に入る
 エクストレイルは日産が用意するSUVの人気車種で、現行型はハイブリッドのe-POWERのみを搭載する。発電を行う直列3気筒1.5ℓエンジンには、圧縮比を変化させる機能が備わり、ターボも装着する。発電用エンジンでは、とても贅沢で、先進技術の好きなユーザーにピッタリだ。発電用エンジンの性能を高めたことで、モーターの動力性能にも、実用域を中心に余裕が生まれた。ノーマルエンジンなら3.5ℓ前後に相当する性能だから運転しやすい。ノイズも小さい。
 駆動方式は、後輪を専用のモーターで駆動する4WDのe-4ORCEを推奨する。モーターは反応が素早く、4輪の駆動力制御を綿密に行うから、舗装路の走行安定性も向上する。価格は高めだが、プロパイロットや運転席の電動調節機能を装着しないS e-4ORCEであれば300万円台に収まって買い得だ。

【3人が選択】HONDA ZR-V

走りの良さを軸に居住性、積載性、充実した装備が揃う優等生

HONDA ZR-V プロフィール
 シビック譲りのシャーシを採用する国内ホンダラインナップの旗艦SUV。ワゴンライクなフォルムに1.5ℓターボまたは2ℓe:HEV(2モーター式ハイブリッド)を搭載。4WDシステムは電気式ではなく、プロペラシャフトを介して動力を伝達する方式を採用する。

レベルの高い走行性能

使い勝手も装備も十分以上

USBジャックは急速充電対応タイプのType-AとType-Cを全車に標準装備している。
予約クローズ機能付パワーテールゲートも標準装備。Z系はハンズフリー機能付きだ。
全車225/55R18タイヤを装着。ホイールはXがグレー、Zがブラック+切削仕上げ。

川島の選択

e:HEV X(4WD)●価格:361万9000円

素性のいいシャシーがもたらす、シーンを選ばぬフットワーク
 ZR-Vが、と言うより最近のホンダ車の傾向でもあるが、シビック系のシャシーを用いたモデルのフットワークには感心させられる。大雑把に言えば基本や力学に忠実ということになるのだが、様々な路面やコーナーで同様に振る舞うのはなかなかハードルが高い。ZR-Vは高速安定を軸に背反要素になりやすいタイトターンでのラインコントロール性を確保しているのが見所。しかも、サスをガチガチに硬めるのではなく、しなやかなストローク使いで実現している。価格的に入手しやすいタイヤサイズを選択しているのも好感。パワートレーンはスポーティ感ならターボの1.5ℓ車でもいいが、余力や燃費を配慮するならe:HEV車を選ぶのが無難。駆動方式は悪路と車体挙動が多少しっとりすることから4WDを選んだが、オンロードの体感スポーツ性優先で選ぶならFFでもいいだろう。

まるもの選択

e:HEV Z(2WD)●価格:399万9600円

扱いやすくゆったり過ごせる、上位クラス並みに“デキる”一台
 日本ではぎりぎりコンパクトと呼べるかどうかの絶妙なサイズ感で、市街地での扱いやすさと後席のゆったりとした居住性や使いやすいラゲッジスペースなど、もっと大きなSUV並みにデキルのがZR-V。2.0ℓエンジン+2モーターのハイブリッドとなるe:HEVと、1.5ℓのガソリンターボモデルがあり、リニアでなめらかな加速フィールが爽快なe:HEVはロングドライブにもピッタリ。最低地上高が190㎜確保されているとは思えない低重心の安定感や、軽やかなコーナリングでスポーティカーを運転しているような気分になる。その上ファミリーに嬉しいのは、後席を倒さなくてもゴルフバッグが3個横に積めて、前輪を外すと26インチのマウンテンバイクが2台積載可能というラゲッジの実力。家族4人分のキャンプ道具も入り、「Z」にはハンズフリーバックドアなど上級装備が充実している。

渡辺の選択

e:HEV X(2WD)●価格:339万9000円

決定的なグレード格差がなくFF車でも走行性能は十分だ
 SUVはもともと悪路を走破できるクルマとして誕生したが、ワゴン風のボディによって車内も広い。それでも天井はミニバンほど高くないから、走行安定性を確保する上でも有利だ。ZR-Vは、このSUVが備える実用性と走りの良さで注目される。プラットフォームはシビックと共通で、走行安定性と乗り心地のバランスが良い。インパネを始めとする内装も上質で、後席を含めて居住性も快適だ。荷室容量も十分にあり、ワゴンのような使い勝手を発揮する。

 パワーユニットは、直列4気筒の1.5ℓターボと、2.0ℓエンジンで発電を行うハイブリッドのe:HEVを用意する。e:HEVの価格は、ターボに比べて約35万円の上乗せに抑えたから割安だ。装備は全グレードにわたり充実しており、e:HEV・Xを推奨する。駆動方式は2WDで十分だろう。

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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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