新型車比較・ライバル車対決
更新日:2024.07.24 / 掲載日:2024.07.24
ホンダ・ZR-V vs ライバル比較《エクストレイル/CX-60》
走りも装備機能も良くて当たり前!実力車が揃い踏みだ
ミドルSUVは花形カテゴリーだけに、価格は少し高めだが、走りも装備機能も充実している実力モデルが揃っている。そんな理由もあってどれを選んでも満足度は高いが、それぞれの個性が大きく異なるのも魅力のひとつ。クルマ好きにとっては選び甲斐のあるカテゴリーなのだ。
●文:渡辺陽一郎
ZR-V vs エクストレイル vs CX-60
いずれも個性際立つ
実力派モデルたちが揃う
ホンダZR‐Vは、シビックと共通のプラットフォームを使うミドルサイズSUV。全長は4570㎜、全幅は1840㎜とミドルSUVとしては平均的な大きさだ。
ライバル車としては日産・エクストレイルとマツダ・CX‐60の2モデルが挙げられる。サイズ的にも近く、エクストレイルは全長4660㎜、全幅1840㎜、CX‐60は全長4740㎜、全幅1890㎜となる。CX‐60は少し長めのボディだが、これは設計の新しい後輪駆動のFRプラットフォームを使ってエンジンを縦向きに搭載しているため、ノーズが長く、前輪駆動がベースの2車に比べると100㎜ほど全長が拡大。それゆえに外観は少しスマートに見える。
インパネまわりの雰囲気はおのおの個性が強め。ZR‐Vはシビックに似た水平基調のデザインで、中央から助手席に掛けて網目状の細長い装飾が装着されている。内装の質は相応に高いことも印象的だが、シフトセレクターがスイッチタイプでコンパクトに収まっていることにも注目。使い勝手は少々慣れが必要だが、先進感を上手に表現している部分だ。
エクストレイルのインパネは、中央部分が少し手前に張り出しているタイプ。シフトレバーは小ぶりだが、前後に動かす方式で操作性は良好。全体的なデザインはオーソドックスだが、視認性や操作性が優れ馴染みやすい。
CX‐60のインパネもオーソドックスなデザインだが、グレードによって内装加飾が大きく異なり、雰囲気が変わる点に注意したい。中級から上級のグレードには、合成皮革などが使われておりプレミアム感も強めだが、Sパッケージ以下のグレードでは硬質の樹脂が露出。所有欲という面で大きな差を感じてしまう。価格の幅も大きく、ベーシックグレードと最上級グレードでは約2倍の開きがある。ディーラーで上級グレードの内装を見て、安価な仕様を選ぶと、納車された時に落胆するなんてことも……。
広々キャビンは当たり前
シートも快適性十分
キャビン空間の広さはどれも十分。ZR‐Vの場合、身長170㎝の大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ半だ。ゆったりと座れるが、シート生地にプライムスムースを使ったコンビシートの後席は、座り心地が柔らかすぎる印象も。エクストレイルのキャビン空間はZR‐Vと同等レベル。後席の膝先空間は、ZR‐Vと同じ測り方で、握りコブシ2つ半になる。ちなみに4WD車のX・e‐4ORCEには、荷室に3列目の補助席を装着した7人乗りも用意されている。
CX‐60のシートは、少し硬めながら、背中から大腿部をしっかりと支える構造。着座姿勢が乱れにくく長距離を快適に移動できる。後席の膝先空間は、前述の測り方で握りコブシ2つ分だから、ライバル2車に比べて若干狭め。それでも床と座面の間隔が適度に確保され、後席に座った乗員の足が前席の下側に収まりやすい。荷室に関してはスペースは3車とも十分に確保されており、実用面で不足を感じることはないだろう。
ZR-Vのe:HEV車は
パワーも走りの味も高水準
パワーユニットは、それぞれにしっかりとした特徴があり、ここが選び分けの最大のポイントになっている。
ZR‐Vは直列4気筒1.5ℓターボも選べるが、主力は2ℓエンジンをベースにしたハイブリッドのe:HEV車だ。e:HEVは通常走行時はエンジンで発電した電力でホイールをモーター駆動させるタイプなので、加速感覚はBEVに近く、アクセルペダルを踏み込むと、機敏に反応するので運転もしやすい。それでいてエンジンはアクセル操作に応じて回転数を上下させ発電量を調整するので、ガソリン車のような自然な運転感覚も楽しめる。高速巡航時にはエンジンがホイールを直接駆動するので、燃費効率も優秀だ。その動力性能をガソリン車に例えると3ℓ級前後になる。
エクストレイルは全グレードにエンジンが発電を行い、駆動はモーターが担当するシリーズハイブリッドのe‐POWERを搭載。発電用エンジンは直列4気筒1.5ℓだが、圧縮比を走行状態に応じて変化させる画期的な機能を備えていることがポイント。それにターボを加えることで発電能力に優れている特徴を持つ。運転感覚は電気自動車に近いため、アクセル操作に対する反応が機敏で、動力性能をガソリンエンジンに当てはめると3.5ℓ級相当の力強さがある。
CX‐60も、複数のパワーユニットを用意するが、最も注目したいのは直列6気筒3.3ℓディーゼルターボだ。ターボエンジンのため、実用回転域で5ℓ級のガソリンエンジンに匹敵する太いトルクを発生させることがポイント。ディーゼル特有の粗めのノイズは少し耳障りだが、出力特性はガソリン車から乗り替えても違和感を感じにくいほど洗練されている。
各車のWLTCモード燃費を4WDで比べると、ZR‐Vは21.5㎞/ℓ〜、エクストレイルは18.3㎞/ℓ〜、CX‐60は18.3㎞/ℓ〜。CX‐60はディーゼルだから、軽油価格は1ℓ当たりレギュラーガソリンに比べて約20円は安い。燃料代を安く抑えられるメリットがある。
フットワークの味は違えど
いずれもレベルは相当高い
フットワーク性能も三車三様。ZR‐Vは走行安定性に優れており、特に後輪の接地性の高さが際立っている。操舵初期から反応が良く、運転感覚も上質だ。乗り心地は少し硬めだが、タイヤが路上を跳ねるような粗さは上手に抑えている。エクストレイルは軽快感が強めで運転しやすい。なかでもカスタマイズモデルとして販売されているオーテックは、20インチタイヤの採用もあって4輪のグリップ性能が高め。通常モデルよりもスポーティかつ上質だ。CX‐60は、近々登場する3列シートのCX‐80の2列シート仕様。差別化の意味でも運転感覚をスポーティに造り込んでいることが特徴だ。乗り心地は硬めだが、FRベース特有の前後輪の重量バランスが優れていて、高重心でボディの重いSUVながら、スポーツセダンのように良く曲がってくれるため、運転するのが楽しい。腕自慢には相当魅力的なモデルだろう。
3車の選び分けのポイントとしては、ZR‐Vは内外装と乗り心地、そしてe:HEVの洗練された運転感覚が魅力、上質なSUVを求める人によく似合う。エクストレイルは走りが軽快で良く曲がるから、スポーティな走りを楽しみたいユーザーにオススメ。CX‐60は実用回転域で力強いディーゼルと、疲れにくいシートが魅力。高速道路を使った長距離移動が多いユーザーに向いている。
HONDA ZR-V










これがベストグレード!
ZR-V e:HEV X(4WD)

ZR-Vはe:HEVが圧倒的に買い得。1.5ℓターボと比べた時の価格アップは34万9800円と、低燃費に加えて動力性能も高まり、運転感覚も上質になる。性能アップの伸び代からしても相当魅力的だ。駆動方式はオンロードでの安定性も高まるという理由で4WDを選びたい。2WDに比べて22万円高になるが、ここは出して良いコストと考えるべき。グレードは実用装備を充実させて価格は割安に抑えているe:HEV Xが一番手。これにメーカーOPのマルチビューカメラシステムを装着すれば申し分がない。
NISSAN エクストレイル










これがベストグレード!
エクストレイル X e-4ORCE(4WD)

パワーユニットは1.5ℓターボを搭載したe-POWERのみ。2WDもあるが、後輪を専用のモーターで駆動する4WDの方が走りの質は明らかに上。4輪の駆動力が綿密に制御され、舗装路から雪道まで走行安定性を高めてくれる。価格差は30万円ほどあるが積極的に選ぶ意味は大いにある。グレードは実用装備を充実させたX e-4ORCEが買い得だが、予算に余裕があるならオーテックe-4ORCEもアリ。価格は484万1100円と70万円ほど高くなるが、装備充実の上に走行安定性と乗り心地のバランスも向上するメリットがある。
MAZDA CX-60










これがベストグレード!
CX-60 XD Lパッケージ(4WD)

CX-60はグレードによって内装の質に大きな違いがあることが注意点。上級SUVの性格を考えると、内装加飾が1クラス上がり、シートが本革仕様となるLパッケージ以上を選びたい。それを踏まえてオススメの買い得グレードは、動力性能が高く燃費も優れたディーゼルターボのXD Lパッケージだ。内装は相応に上質で、ドライバー異常時対応システムなどの安全装備も充実。高速道路を使った長距離移動には4WDが優れているが、試乗して乗り心地に不満を感じたら、足まわりが少し柔軟な2WDを検討してもいい。