新型車比較・ライバル車対決
更新日:2025.03.23 / 掲載日:2025.03.23
ノマド登場! ジムニー3兄弟の選び分け《導入編》
経済的な軽ジムニーか? 正統派のシエラか? 万能型のノマドか?
5ドアボディ&広々キャビンの「ノマド」が登場したことで、普通のユーザーからも大きな注目を集めることになったジムニー三兄弟たち。いずれも硬派なスパルタンモデルであることは間違いないが、おのおの方向性が微妙に異なるだけに、悩んでしまうユーザーも出てくるだろう。ここではその違いの場所をお教えしよう。
●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之

初代から軽のジムニーと登録車のシエラは設定済み
ランドクルーザーには及ばないものの、初代ジムニーは1970年に登場した長い車史を誇るモデル。現行型に至るまで伝統的なクロカン車のコンセプトを継承している。軽乗用規格ながら悪路走行性能向上のために開発されたラダーフレームと前後サスともリジッドアクスルを用いたシャシーは、クロカン4WDという呼び方が本当にしっくりとくる。
現行型のシエラの元祖となるジムニーの登録車仕様が登場するのは、初代の後期型から。当時の搭載エンジンは4サイクル800ccの4気筒を搭載していた。二代目になるとエンジン排気量は1ℓとなり、さらに現行ラインナップ同様にボディにオーバーフェンダーを備えたことで、軽規格よりも全幅とトレッドを拡大した専用車体となっている。なお、シエラのサブネームは、二代目後期から採用されている。
シエラの狙いは軽規格に縛られない大トルク/高出力エンジンの採用と、ワイドトレッド化による走行性能の向上にある。ただし、ボディ周りやシャシー/4WDシステムなどの基本設計をジムニーと共用しているため、飛躍的な変化はなく、適応用途も同様だ。
こういった軽のジムニーとシエラの関係は現行型まで変わっていないが、途上国を中心とした仕向け国の拡大に伴い、開発の立ち位置は変わってきている。従来まではジムニーをベースに上級発展させたモデルがシエラという設定だったが、現行型ではシエラがベースで、その幅狭シャシー仕様がジムニーになったという印象も強くなっている。
最大の違いはエンジン設定。軽ジムニーは非力感が否めない
ジムニーとシエラの最も大きな違いは搭載エンジン。ジムニーは3気筒の660ccターボを採用するのに対して、シエラは1・5ℓ4気筒を搭載。一回り以上大きなエンジンを搭載することで、車両重量はジムニーよりも40kg増となったが、シエラのトルクウェイトレシオは30%以上改善されている。ジムニーは軽自動車としては重量が重く、スーパーハイト軽のスペーシアと比べても約100kgほど重い。パワートレーンをターボに限定し、さらに低い変速比を採用することで重量増に対応しているが、十分なパワーがあるとは言い難く、負荷が高まる状況では非力さを露呈することもしばしばだ。そのジムニーの弱点をカバーするためにシエラが用意され、一定の支持を集めているわけだ。
また純粋に走行性能が向上していることもシエラの強み。基本シャシーは共用するものの、トレッド幅はジムニーよりも130mm拡大され、タイヤサイズも175/80R15から195/80R15に変更されている。オンロードでも悪路でも、ワイドトレッドは有利。シエラはシャシー設計の面でもバランスが良くなっている。
シエラの好バランスをノマドは上手に引き継いだ
このシエラをベースに全長/ホイールベースを延伸し、5ドア化したモデルがノマドだ。後席乗降性や荷室容量の改善によりキャビン実用性をファミリー&レジャー用途に対応できるようにしているのが特徴であり、国内向けのジムニーファミリーとしては初の5ドアモデルとなった。ただし、室内幅に関しては、シエラやジムニーとも大差なく、乗車定員は登録車ながら4名になる。
パワートレーンや駆動系はシエラと共通しているが、約100kg増加した車両重量やロングホイールベース化に伴いラダーフレームへのクロスメンバー追加などの、設計変更が施されている。
ノマドの設計で興味深いのは、悪路対応力へのこだわりだ。ホイールベース延長によるランプブレークオーバー角は多少減少しているが、前後のオーバーハング部の基本設計をシエラと共通としたことで、大きなアプローチ角とデパーチャー角は維持されている。
また、安全&運転支援機能の充実もノマドの特徴。AT車限定ながらACCが標準採用されている。ジムニーとシエラの上級グレードにもクルーズコントロールは用意されるが、こちらは追従走行機能のないベーシックなタイプ。つまり、ノマドはキャビン実用性向上だけでなく、グレード展開でもジムニー系の最上級仕様となるモデルになる。

ライタープロフィール
オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。
オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。