新型車比較・ライバル車対決
更新日:2019.09.06 / 掲載日:2019.09.06

最強ミニバン決定戦【Lクラス】<アルファード vs エルグランド>

●文:川島茂夫

アル/ヴェル、エルグランド、それぞれの強みとは!?

アルファード/ヴェルファイアは今や上級ミニバンの代名詞的存在だが、エルグランドも忘るるべからず。ライバル比較で実力検証だ。

icon TOYOTA アルファード/ヴェルファイア

●価格:337万6080~750万2760円 ●発表日(最新改良日):’15年1月26日(’18年10月25日)

最新の安全運転支援機能を搭載する国産ミニバンの頂点モデル

 1BOX型ミニバンでは最上級に位置し、V6車をラインナップ。初代からハイブリッド車も設定する。’17年のマイナーチェンジでトヨタセーフィティセンスが操舵支援を含む最新の高機能版となり、’18年にはインテリジェントクリアランスソナーを標準装備化。

icon NISSAN エルグランド

●価格:331万8840~594万2160円 ●発表日(最新改良日):’10年8月4日(’18年12月13日)

低く構えたフォルムでスポーティさをアピール

 アル/ヴェル唯一のライバルと言える上級ミニバン。’10年にそれまでのFRからFFとなり、同時に全長を低く抑えたスポーティなフォルムを採用。’18年に安全運転支援システムをアップデート。各種装備の標準装備化を進めるとともに機能向上を図っている。

ともにV6車を用意、“高級車感”が勝負所だ

 上級1BOX型ミニバンであり、国産ミニバンの頂点クラス。悠々のボディサイズを活かした広いキャビンを贅沢に楽しむのが本筋のモデルたちだ。アウトラインだけ書き出せば共通点が多く、先代までは確かに真っ向勝負の2車でもあったが、現行車ではちょっと立ち位置がずれてきた。
 アル/ヴェルはキープコンセプトで濃度を高めるような進化をしてきた。背の高さを強調してこれ見よがしに1BOX感を出した外観が雄弁である。エルグランドはアル/ヴェルと比較すると1BOX型特有のもっこりした印象が薄い。ひとつは全高の違い。平面寸法はほぼ同じだが、全高は約14cmもエルグランドが低い。さらにフロントピラーの付け根はエルグランドが後方寄りであり、見た目のボンネット長も長い。つまり、エルグランドのほうがステーションワゴン的なのである。背の高さを魅力とするか否かの違いと言えよう。
 パワートレーンはガソリン車に関しては両車ともに2・5Lの4気筒と3・5LのV6を採用し、ミッションは、8速ATを用いるアル/ヴェルのV6車以外はCVT。アル/ヴェルには上位設定仕様として2・5Lのスプリット式ハイブリッドと後輪を独立した電動系で駆動するE-Fourを組み合わせたHVも設定。デビュー年に4年以上の開きがあるせいか、エルグランドのほうがハードウェア的に古さを感じるが、V6車を上級とする伝統的な高級車感は両モデルに共通。エコや経済性で割り切れない魅力こそ、この2車のセールスポイントなのだ。

【比較1】走行性能

ガソリン車同士では小差に留まるが、ハイブリッドの存在が違いを生む

 例えば最新のパワートレーンは踏み込みに素早く反応し、踏み込み量やダウンシフトの頻度を抑える。そうした制御によるエンジン回転数の低下は、燃費にも、精神的圧迫にも優しい。そういった視点から見るとエルグランドは新味が薄い。微妙な操作でのトルクの立ち上がりが緩慢で、踏み込みが深くなりやすく、常用回転域も高くなりがち。ただ、遅れて立ち上がる大きなトルクなど、パワフルな印象は強い。相対的にアル/ヴェルの方が洗練された今風な印象を受けるが、大差とは言い難い。
 両車の差が大きいのはHVの有無。応答遅れが小さくアクセル操作に付いてくる加減速感や回転変化の少ないエンジン制御などがゆとりをもたらす。フィールではV6に分があるが、走りの質ならHVだ。

icon アルファード/ヴェルファイア【勝利】

HVは2.5L直4(152PS/21.0kg・m)+前&後モーター(143PS/27.5kg・m&68PS/14.2kg・m)の4WDのみ。ガソリン車は3.5LV6(301PS/36.8kg・m)+8速ATと2.5L直4(182PS/24.0kg・m)+CVT。

  • ●2.5Lハイブリッド

  • ●3.5L

  • ●2.5L

icon エルグランド

HVは2.5L直4(152PS/21.0kg・m)+前&後モーター(143PS/27.5kg・m&68PS/14.2kg・m)の4WDのみ。ガソリン車は3.5LV6(301PS/36.8kg・m)+8速ATと2.5L直4(182PS/24.0kg・m)+CVT。

  • ●3.5L

  • ●2.5L

【比較2】室内空間

アル/ヴェルはアップライトな姿勢による見晴らしや開放感を楽しみやすい

 カタログ室内高はアル/ヴェルが10cm高い。これは天井の圧迫感や着座姿勢に影響する。
 元々室内長にゆとりのある両車なので、ニールーム等のスペース的な余裕の大小はそれほど居心地に影響はしない。それよりも気になるのは天井圧迫感である。天井が高い方が視点を高くしたアップライトな着座姿勢を取りやすい。バックレストを寝かせたほうが寛いだ着座感となるが、車内のコミュニケーションや車窓からの景色を楽しむならアップライトな着座姿勢が適している。プレミアム感を楽しむ空間として致命的な差があるわけではないが、どちらの着座姿勢を採ってもゆとりを感じさせるのがアル/ヴェルのキャビンとシートであり、相対的にエルグランドはアップライトな着座姿勢が苦手である。

icon アルファード/ヴェルファイア【勝利】

大型スクリーンを備えたセンターコンソールが存在感を主張する、高級感あるインパネ。

セカンドシートの居心地はグレードによって異なり、エクゼクティブラウンジはVIPカー的、その他のキャプテン仕様は前席と同等。サードシートは座り心地が一歩劣る。

icon エルグランド

インパネシフトを採用し左右の移動も可能。アル/ヴェルよりミニバンらしいデザインだ。

250G以外でキャプテン仕様の選択が可能。室内高がちょっと低いため、キャプテン仕様はセカンドシートの寛ぎ向上だけでなく、サードシートの閉鎖感減少にも効果的である。

【比較3】機能/装備

運転支援機能の充実度でフリードが優っエルグランドもアップデートしているが国産トップレベルのアル/ヴェルがリードている

 クラウンにも採用されている第2世代トヨタセーフティセンスは、’17年のアル/ヴェルのマイナーチェンジが皮切りとなった。夜間歩行者認識や全車速型ACC、走行ライン制御型LKA等々の最新機能を採用し、その制御精度の高さもトップレベルにある。エルグランドも’18年末の改良で安全&運転支援機能を強化。全車速型ACCやLKAなどを多くのグレードに設定した。ただし、車線維持機能ははみ出し防止支援止まりであり、システム構成の違いだけでなく、機能面でもプロパイロットに及ばない。エルグランドの設定や機能に不満はなく、デビュー後9年経ってのテコ入れは良心的ともいえる。しかし、最新システム導入で国産車最上の機能を全車に標準装着したアル/ヴェルとの対比では見劣りは否めない。

icon アルファード/ヴェルファイア【勝利】

【ACC:○】【LKA:○】
安全運転支援システムをほぼフル装備。アダプティブハイビームやブラインドスポットモニター、リヤクロストラフィックアラートはエグゼクティブラウンジに標準、他にオプション設定。

icon エルグランド

【ACC:○】【LKA:×】
ACCは停止までフォロー(設定は30km/h以上で可能)。LKAはないが、ブレーキ制御で車線逸脱を防ぐシステム(LI)を搭載する。ACCは250XG以外に標準、LIは全車標準。

まとめ

両車ともにV6の高級感を再認識させてくれる

 今さらとは思うものの、両車ともやはりV6は高級感が違う、と思わせる。燃費やドライバビリティを考えれば非現代的パワートレーンだが、V6車がとても魅力的に思えるのが両車のキャラである。ただし、その思いに従ってしまえば際限なく非経済的になるのだが、時代性との整合性の高いHVで代替できるのがアル/ヴェルの強味。
 もっとも、アル/ヴェルのHVはかなり高価格。「走るサロン」感覚を優先してコスパで量るなら4気筒車が魅力的だ。アル/ヴェルはパワートレーンによるグレード制限があるのだが、エルグランドは4気筒車にもV6車と同じ最上級グレードが設定される。内装や装備のコスパ優先ならエルグランドを軸に選ぶのもいい。また、先進安全&運転支援機能のコスパならばアル/ヴェルの4気筒車の上位グレードを勧める。

おすすめグレード

  • アルファード/ヴェルファイア
    【G(写真)/V】

    ●420万6600円(FF/7人)/445万6080円(4WD/7人)

  • エルグランド
    【250ハイウェイスタープレミアム】

    ●427万2480円(FF/7人)/456万2480円(4WD/7人)

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