新型車比較・ライバル車対決
更新日:2019.10.09 / 掲載日:2019.10.09
MAZDA CX-30 vs ライバル車【The 対決】

文:川島茂夫 写真:奥隅圭之
BATTLE【1】マツダクロスオーバー対決
CX-30の登場によって、クロスオーバーの勢力図が大きく変わるのは確実だが、その中でも最も大きな影響を受けるのは、マツダCXシリーズだろう。ここではCX-30の直接ライバルになるCX-3とCX-5と比べてみたい。
性能&機能はCX-30だが“お値ごろ感”は今ひとつ
リヤサスはCX-30とCX-3がトーションビーム式、CX-5はマルチリンク式と、足回りに違いはあるものの、いずれもオンロードでこそ本領を発揮するクロスオーバーだ。もちろん、一般走行レベルのラフロードならば特段不自由することはない。むしろ、実用面で差を感じるのはボディ設計の違いによる使い勝手だろう。
CX-30は1.8m近い全幅が多少気になるものの、CX-3との差は30mm。CX-5よりは45mm狭く、約4.4mの全長ならばCX-3と同じ感覚で乗りこなせる。また、シートの座面地上高もCX-3とほぼ等しく、クロスオーバーとしては低めの設定。小柄なドライバーでも乗降に苦労しない。残る2車も基本的には同傾向だが、高い視点の見晴らしを求めるドライバーにはCX-5が有利だ。
キャビン/ラゲッジも車格順だが、実際に乗り込んでみるとCX-30とCX-3の差は想像以上に大きい。CX-5はCX-30よりさらに一回り大きく、シートサイズもゆったりしている。CX-30は後席の膝前スペースや着座姿勢、閉鎖感を改善しているが、CX-5と比べるとキャビンの寛ぎ感は及ばない。
価格はXDプロアクティブで比較してみると、CX-3はCX-30の約26万円安、CX-5はCX-30の約23万円高。CX-3にはLKAが採用されず、CX-5は同じディーゼルターボでも2.2L。この差まで考えると、何とも微妙な価格設定。少々、CX-30に割高さを感じてしまう。
最新のCX-30は、CX-3などで気になった積載性などの弱点を克服し、かつ最新機能&装備を備えたバランスの良いモデルだが、車格はCX-5には及ばない。装備差を我慢できれば購入予算がかぶるケースも出てくるだけに、マツダのSUVを狙っているユーザーには、なかなか悩ましい3台といえるだろう。
MAZDA CX-30
価格:239万2500~371万3600円
クロスオーバー系の最新モデル。スカイアクティブX車も選べる

マツダ3をベースに開発された最新クロスオーバー。2L・NA車&1.8L・Dターボ車に加えて、スカイアクティブXモデルが設定されている。
MAZDA CX-3
価格:212万7600~306万2080円
マツダ・クロスオーバーのエントリーモデル

マツダ2(デミオ)をベースに開発されたCXシリーズのエントリーモデル。サイズも価格帯もCX-30とかなり近いため、最も影響を受けそうだ。
MAZDA CX-5
価格:257万400~355万8600円
現時点で最も売れているマツダの人気クロスオーバー

マツダで最も売れているクロスオーバー。パワートレーンは4タイプ設定される。主力のディーゼルターボは2.2Lと動力性能でも1ランク上の設定だ。
チェックポイント【1】走り&ドライバビリティ
2.2Lディーゼルターボが選べるCX-5は走りの余裕も1ランク上
CX-3
やや硬さが目立つセッティングだが高速ツーリング性能はピカイチ

上級クラスに勝るとも劣らない高速ツーリング性能を持つが、市街地ではやや乗り心地の硬さが気になってしまう。本領発揮はロングドライブだけに、ディーゼルターボ車を選びたい。
CX-5
際立つハンドリング性能。車格に見合った走りが期待できる

直進安定性やハンドリング性能はマツダ車の中でもトップクラス。2.2Lディーゼルターボは洗練さはガソリン車に及ばないが、巡航ギヤを維持した加速がもたらす余力感は格別だ。
チェックポイント【2】キャビン&ラゲッジユーティリティ
CX-30
乗員最優先の設計に加えて上質感の演出も巧みになった

内装仕立てや素材感など、プレミアム感の演出は1枚上の印象。シートアレンジなどは比較2車と同等レベルだが、シート配置の工夫などもあってスペック数値以上の開放感を感じる。
違いを感じるのは通常時の床面奥行き。キングサイズのベビーカーが納まるほどのゆとりがある。リヤゲートも電動タイプが採用されるなど、ラゲッジ周りの使い勝手も考慮された設計を持つ。
CX-3
プレミアム感は楽しめるがキャビンはドライバー最優先

キャビンはフロント優先。上級感の演出も巧みでLパッケージ車に標準となるレザーシートの質感も申し分ない。小さな高級車というコンセプトはしっかりと体現している。

床面奥行きや開口部幅などは車格どおり、比較3車の中で最小サイズ。後席格納時はフロア面が完全にフラットにはなるが、コンパクトクラスとしても、手狭感は否めない。
CX-5
サイズのゆとりはアドバンテージ。乗車時のゆとりは一枚上手

素材類の一新や組み込み精度の向上などで質感が大きく向上しているだけに、CX-30(第7世代モデル)にまったく見劣りしない。寸法的な広さも考慮すれば、快適性はこちらが上だ。

開口部と床面に段差があるのは残念だが、隅までフラットなフロア床形状や、床下に配置されるサブトランクなど、ユーティリティにも一定の配慮を感じる。
チェックポイント【3】装備&機能メカニズム
安全&運転支援機能は横一線。CX-30のマツダコネクトは最新型
マツダコネクトはいずれも標準装着だが、CX-3とCX-5は第一世代、CX-30は第二世代と、表示モニターのみならず、機能面で大きな差がある。
運転席前面に設置されるアクティブ・ドライビング・ディスプレイは、いずれのモデルの積極的に採用。表示情報に多少の差はあるが、基本的には最新のカラータイプが備わっている。
改良のタイミングに時間差が出るため、MRCCやLKAなどの制御機能が簡略化されているケースもあるが、安全&運転支援を行うi-ACTIV SENSEの基本機能はほぼ共通。標準装備化も積極的だ。
CX-30 VS マツダ3『選ぶなら、どっち?』

ハードウェア構成やインテリア仕様、パッケージサイズは近いだけに、見た目で選んでも問題ない。あえていうならばオンロード優先ならマツダ3、ラフロードやファミリー&レジャーまで視野に入れるならばCX-30となる。ちなみに同グレード同士の価格差は約22万円。なんとか許容できる範囲だ。
インパネ周りの質感や基本設計は、新マツダコネクトも含めてほぼ共通だが、シート(後席)&ラゲッジはマツダ3がやや使いにくい。ユーティリティ優先ならCX-30がベストだ。
BATTLE【2】コンパクトSUVクラス対決
強力ライバルが競う激戦区。いずれも実力モデルだ
コンパクトクラスのSUVは、ラフロードはレジャーシーンでそこそここなせれば十分という狙いもあって、上級クラスに比べると悪路走破性はあまり考慮されていない。むしろ重視されるのはキャラや適応用途などだ。
今回はCX-30を中心に車格とカテゴリー、価格帯でライバル4車と比べてみた。C-HRはオンロード志向、エクリプスクロスはダートスポーツ志向のスペシャリティモデルと考えると分かりやすい。C-HRはユーティリティも前席優先だが、エクリプスクロスは見た目の印象よりも使い勝手がいい。ヴェゼルはキャビンも走行性能もタウン&ファミリーのニーズに合わせた設計が与えられている。そしてスバルXVはプレミアムコンパクトを悪路対応させたモデル。いずれも個性が明確である。
CX-30と比較するとキャラの点ではC-HR、悪路対応ではヴェゼル、運転感覚ではスバルXV、スポーティなイメージや走りではエクリプスクロスと言えるだろう。CX-30は実用面でライバル車を圧倒する部分は少ないが、プレミアム&スポーティとほどよい実用性能のバランスの良さが強み。好みが合うならば、CX-30は唯一無二になれる存在だ。
エントリー【1】MAZDA CX-30
価格:239万2500~371万3600円
マツダ車の弱点を克服した万能選手ぶりも魅力の一つ

魂動デザインは、ユーティリティ面でハンデになりやすいのがネックでもあったが、その魅力はそのままに、レジャー用途もこなせる実用性を融合している。魂動デザインに惚れてこそのモデルではあるが、ディーゼルターボ車の設定やCX-3から向上した悪路対応力など、マツダが苦手としていた弱点を克服していることが強み。
パワートレーン

ガソリンは2タイプ、ディーゼルターボは1タイプ用意されるが、メインとなるのは低速域から力強い走りが楽しめる、1.8Lディーゼルターボだろう。
パッケージ
全高を低く抑えたパッケージは、欧州市場でのトレンドも考慮した結果。世界基準の正統派クロスオーバーだ。最小回転半径からして取り回し性能もなかなか優秀だ。
エントリー【2】HONDA ヴェゼル
価格:207万5000~292万6000円
動力性能に物足りなさはあるが実用性はトップレベル

クーペルックのスタイルなどスペシャリティ系SUVのような印象もあるが、スペース効率に優れたプラットフォームや多彩な後席機能により、多様なファミリー&レジャー用途に対応できるユーティリティを実現している。NA車とハイブリッド車の動力性能は、高速長距離や悪路踏破で不満もある。ターボ車がFF限定なのが残念。
パワートレーン

1.5Lエンジンを基準に、ターボ、NA、ハイブリッドが選べるが、NA車とハイブリッド車は動力性能がやや物足りない。とはいえ、主力となるのは価格とのバランスが良いハイブリッド車だ。
パッケージ
フィット/フリード系とプラットフォームを共有することもあり、クーペルックのスタイリングからは想像できないほど、キャビン/ラゲッジはゆとりの設計を持つ。
エントリー【3】TOYOTA C-HR
価格:229万~292万9200円
スペシャリティさはクラス随一、走りの質感にも自信あり

個性的かつ存在感のあるスタイルが最大の特徴。ハードウェア面はカローラ スポーツと姉妹関係にあり、1.2Lターボと1.8Lハイブリッドを用意するが、4WD車はターボ車のみとなる。最低地上高は4WD車でも155mmと悪路対応力は低い。キャビンスペースは平均クラスだが、後席の閉鎖感や手狭なラゲッジなどは少々気になる。
パワートレーン

1.2Lターボと1.8Lハイブリッドの2タイプを設定。スポーツ重視ならばターボ車一択と思いがちだが、ハイブリッド車のモーターは53kW/163N・mとなかなかパワフル。こちらも悪くない。
パッケージ
低い全高に、絞り込まれたリヤエンド、乗用車レベルの最低地上高など、スタイリングからもスポーティのキャラを主張している。見るからにオンロードメインのモデルだ。
エントリー【4】MITSUBISHI エクリプス クロス
価格:253万9080~340万3080円
ミツビシ伝統の本格AWDを搭載、ラフロードもこなすクロスオーバー

ハードウェアはアウトランダーの流れを汲んでいるが、1.5Lターボ、2.2Lディーゼルターボがもたらす動力性能と、4輪駆動を操安性に積極的に活用するS-AWCの採用により、高いレベルのファントゥドライブも楽しめる。また、キャビンスペースを圧迫しないパッケージングを採用しているため、レジャー用途にも十分対応可能だ。
パワートレーン

従来の1.5Lターボに加えて、今年の春に2.3Lディーゼルターボを追加。軽快なターボ車か? 力強いディーゼルターボ車か? 好みに応じて選び分けが可能になった。
パッケージ
往年の“エクリプス”の名を冠したこともあって、スタイリッシュなクーペフォルムも見所の一つだが、キャビンも相応の広さが確保されるなど、実用面にも配慮した設計を持つ。
エントリー【5】SUBARU スバルXV
価格:213万8400~282万9600円
見た目こそ乗用車的だが、秘めるスペックは侮れない

運転感覚も走行性能も、ベースとなったインプレッサ スポーツに近い。運転視界やスタイルでSUVらしさを感じる部分は少ないが、最低地上高は200mm確保され、悪路対応型電子制御4WDも採用。見た目以上に悪路にも強い。居心地や使い勝手を考慮した設計や、アイサイトによる長距離走行適性の高さなど見所も十分だ。
パワートレーン

1.6L&2LのNAエンジンに加えて、インプレッサには設定がない2Lハイブリッドも用意。AWD駆動に加えて、悪路走破支援機能のX-MODEも全グレード標準となるなど、ラフロード適性も見所
パッケージ
インプレッサとの違いは、最低地上高は200mm確保するためリフトアップを行なったほかは、フェンダーアーチに専用パーツを用いて差別化を図った程度。比較5車の中でも最も乗用車的なスタイリングだ。
チェックポイント【1】キャビン&ラゲッジユーティリティ
限られたスペースゆえに実力差が明確に表れる
このクラスの大半のモデルは、コンパクト2BOX車をベースに開発されている。コンパクトクラスは巧みなスペース効率を持たせることが開発の要点でもあり、ボディサイズに比べるとキャビン容量は広い。
ただし、居心地や実用性は外観デザインの影響も大きく、例えばC-HRはカローラ スポーツとほぼ同じ室内長を持ちながら後席は圧迫感が強く、乗降性もかなり低い。居心地と実用性がデザインの犠牲になった感が強い。個性的なデザインと実用性の両立ではエクリプス クロスが巧みだが、一般受けするタイプの格好良さとも言い難い。一般受けもしやすいクーペルックと実用性の両立ではヴェゼルが優等生。フィットやフリードで培った高効率設計や、シートアレンジなど多用途性を高めるユーティリティが活きている。
CX-30は、居住性はC-HRとヴェゼルの中間、内装のプレミアム感の演出はスバルXVに近い。実用性向上は頑張っているものの、スペース効率の向上に積極的ではないプラットフォームもあって、居住性はCX-3から進化したといってもクラス平均レベルだ。まだ実用性より雰囲気で勝負するキャビンといえよう。
CX-30
マツダ車としては頑張っているが、使い勝手はまだ平均レベル
CX-3に比べて延長されたホイールベースのおかげもあってレッグスペースを拡大。天井の圧迫感や見晴らしの改善もあって、長距離走行にも十分な後席の居心地を実現している。また、ラゲッジは奥行きに余裕がある。シートアレンジなどのユーティリティ面で突出した長所はないが、勘所は押さえた設計も見所だ。

リヤキャビンに工夫がされたとはいえ、ドライバー優先の設計思想は変わらない。マツダ3と同様に上質感と走りを楽しむ工夫も随所に盛り込まれている。
座面位置が適度な高さになったこともあって、マツダ3ほど乗り降りは苦労しない。シート位置の最適化の恩恵も大きく、後席はニースペースも頭上空間も相応のゆとりが生まれた。
ラゲッジユーティリティの改善は実測寸法の拡大からも読み取れるが、開口部床面に段差があるなど、細かな部分で他メーカーとの差を感じてしまう。
ヴェゼル
多彩な使い方を想定したキャビン/ラゲッジに注目
後席は座面高が高い設計だが、天井やピラーの圧迫感はそれほどでもない。ことさらプレミアム性を感じるキャビンではないが、長時間走行にも十分な居住性を持つ。後席使用時のラゲッジの奥行きはそれほどでもないが、ダイブダウンとチップアップの二通りの後席格納機能により、多様な積載性を発揮することも見所だ。

スペース効率の高いフィットの流れを汲むだけあって、車体寸法の割にはキャビンは広々。後席の乗り降りに多少の窮屈さは感じるものの、シートの座り心地も良好。頭上クリアランスも十分に確保されている。
後席座面を跳ね上げることで高さのある荷物を積載できる座面チップアップ機構の採用やゆとりある室内長が確保されるなど、シートアレンジの多彩さも売りの一つ。
ラゲッジは深さに余裕があり、ダイブダウン式の後席格納もあってラゲッジ容量はクラストップレベル。開口部も横のゆとりに加え、床面に段差が生じない設計など、さりげない工夫も見逃せない。
C-HR
スタイリング優先の弊害は後席の手狭さに表れる
前席こそキャビン設計の要所は押さえているが、後席は閉鎖感が強く、寸法以上に窮屈な印象を受ける。また、リヤドア開口形状とシートの位置関係から乗降性が悪いのも気になる。ラゲッジは奥行きは十分だが、深さに余裕がない。また、床面地上高が高く、重量物や嵩張る荷物の積載性は今ひとつ。あくまでも2名乗車を基本としたSUVだ。

曲線を巧みに用いる近未来的な造形は、最近のトヨタ車に多く採用されている手法。キャビンはクラス平均より明らかに手狭だが、丁寧な造り込みもあって、プレミアム性も十分だ。
全体的に小ぶりなキャビンだが、特に後席はサイズもさることながら、グラスエリアが狭く開放感に乏しい。窮屈な印象を強く受ける。乗り降りの際も後席側は身体を傾ける必要がある。
リヤエンドに絞り込んだ造形の影響は後席ほどではないにせよラゲッジにも及ぶ。広さは2BOX車クラスは確保されるが、ラゲッジ床面高は高め。実用面でやや不便さは否めない。
エクリプス クロス
実用性はほどほどだが快適性はなかなか優秀
後席の頭上やレッグスペースの余裕は男性の4名乗車で調度いいくらい。寸法的な広さにそれほどのアドバンテージはないが、視界の良さなど、視角的な広さ感が居心地を高めている。また、後席にリクライニング&スライド機構を備えるので、積載荷物量が少なければ、リラックスした着座姿勢を取りやすいのも特徴だ。

グラスエリアも広く、前方視界も良好。インフォテイメント機能の操作感やスイッチ配置に物足りなさを感じる部分もあるが、居心地やプレミアム感の演出に長けている。
ことさら広いとはいえないが、クラス相応以上のキャビン空間を確保。ニースペースも頭上空間も十分な余裕がある。後席の乗り降り時は足さばきに少々窮屈さを感じるが、総じて良好だ。
ラゲッジは通常時こそ平均レベルだが、後席スライドを一番前に設定すると、最大時の寸法は最大クラスになる。小物収納のアンダーボックスも備えるなど、使い勝手はなかなか良好だ。
スバルXV
積載性や使い勝手は2BOXクラス相応
いい意味でも悪い意味でもSUVらしさが薄い。ちょっと目線の高いインプレッサというキャビンである。前席も後席も寛いだ姿勢が取りやすく、ラゲッジは奥行きに余裕もあり、積載性も良好。プレミアム感はほどほどだが、ツーリングツアラーとしても定評のあるインプレッサの使い勝手や居心地がそのまま活かされている。

インパネデザインは、ベース車両であるインプレッサ スポーツと同じ。収まりの良い居住空間と寛いだ着座姿勢は居心地が良い。質感も平均以上。本革仕様はなかなかのプレミアムぶりだ。
シートまわりもインプレッサ譲り。後席の頭上クリアランスや膝まわりもちょうど良いサイズ感。乗り降りも無理がない姿勢で行うことができる。
キャビン同様に2BOX的な雰囲気。開口部地上高がやや高めだが、フロア面はフラットで、タイヤハウスの出っ張りも少なく横幅も大きめに取られる。普段使いで便利に使えるラゲッジだ。
チェックポイント【2】走り&ドライバビリティ
いずれもオンロード寄りだが得意ジャンルは大きく違う
CX-30の走りをどう見るかだが、マツダ3に見る人馬一体の思想やハードウェア構成に近いことを考えると、スポーティ感漂うしっかりとした乗り味が基本となるだろう。荒れた路面での当たりの強さはともかく、操る手応えと高速域の安定性はクラストップレベルと予想される。
もっとも、スポーツ性の濃さで言えばヴェゼルのツーリングがベストだが、かつてのユーロRに近いオンロードに偏った存在だ。ダートスポーツとしてはエクリプスクロスが高く評価できるが、操る醍醐味に偏った印象も否めない。C-HRはスポーティ&カジュアルの程よいまとまりで、見た目ほど走りは個性的ではない。スバルXVの走りはプレミアムコンパクトらしいものでウェルバランス型。どちらも一般性の高い味付けで馴染みやすい。
マツダ3の一般路試乗で得た走りのプレミアム性に対するこだわりはCX-30でもライバル車に対するアピールポイントになると思えるが、どこまでファミリー&レジャー向けにバランスを変えてくるかが気になる部分。ファミリーをターゲットにするだけに、マツダ3よりも穏やかな路線になったほうが似合いと思う。
【走り予想】CX-30はスポーティ路線。走りも期待できそう

マツダ3に比べると乗り心地はマイルドになるはず
マツダ3は高速安定と大負荷時のしなやかなストローク制御を重視した乗り味。この路線でまとまっているとSUVとしてはスポーツ志向の強い走りになる。車種やカテゴリーの影響少なく走りを仕立てるのはマツダの特徴だが、CX-30の実用性の配慮した設計を考慮するなら、走りも適応用途向けのマイルドな味付けになっている可能性が高い。
ヴェゼル

ターボは高性能仕様、NAとハイブリッドはやや物足りなさも
フィット&フリード系のプラットフォームにしては細かな振動の抑制も利き、走りの質感も悪くないが、車格感はほどほど。スポーツ志向の濃いツーリングのみターボを採用するが、他は1.5L・NAとハイブリッド。高速長距離やレジャードライブを積極的に楽しむには動力性能面の余裕は少なく、バランス的にはタウンユース寄りだ。
●主要諸元(ツーリング Honda SENSING)
●全長×全幅×全高(mm):4340×1790×1605 ●ホイールベース(mm):2610 ●車両重量(kg):1310 ●パワーユニット:1496cc直4DOHCターボ(172PS/22.4kg・m) ●JC08モード燃費:17.6km/L ●燃料タンク容量(L):50[レギュラー] ●最小回転半径(m):5.5 ●最低地上高(mm):170
C-HR

走りはバランス重視。扱いやすさとスポーティさを両立
見た目の印象どおりにオンロードでのスポーティな運転感覚でまとまっている。ただし、マニアックなスポーツ性ではなく、一般用途での快適性や扱いやすさとのバランスを取った特性だ。バランス点をちょっとスポーツ側に移したくらいで動力性能もフットワークもプリウスやカローラ スポーツの系統らしい走行感覚である。
●主要諸元(G)
●全長×全幅×全高(mm):4360×1795×1550 ●ホイールベース(mm):2640 ●車両重量(kg):1440 ●パワーユニット:1797cc直4DOHC(98PS/14.5kg・m)+モーター(53kW/163N・m) ●JC08モード燃費:30.2km/L ●燃料タンク容量(L):43[レギュラー] ●最小回転半径(m):5.2 ●最低地上高(mm):140
エクリプス クロス

ラフロードも巧みにこなせる万能選手
ダートや雪路でのスポーツドライビングが真骨頂。このクラスとしてはやや異端だが、悪路踏破も得意である。ラフロードも配慮したサスチューンは乗り心地とのバランスも悪くないが、穏やかな快適性を求めるタイプではない。走りのキャラにはターボが似合いだが、レジャー用途では余力重視のディーゼルターボがいい。
●主要諸元(2.3ディーゼルターボ G Plus Package)
●全長×全幅×全高(mm):4405×1805×1685 ●ホイールベース(mm):2670 ●車両重量(kg):1680 ●パワーユニット:2267cc直4DOHCディーゼルターボ(145PS/38.7kg・m) ●JC08モード燃費:15.2km/L●燃料タンク容量(L):60[軽油] ●最小回転半径(m):5.4 ●最低地上高(mm):175
スバルXV

乗用車に近い運転感覚。実力も申し分なし
SUVとかスポーティとか、特定の嗜好を意識させないウェルバランスが持ち味。走行性能面でもインプレッサ スポーツにかなり近い。運転視界はSUVとしては低いため、セダンや2BOXから乗り換えても馴染みやすい。タウンユースから高速、山岳路を中心に扱いやすさと快適性を重視するドライバーには最適な走りのバランスを持つ。
●主要諸元(2.0i-L EyeSight)
●全長×全幅×全高(mm):4465×1800×1550 ●ホイールベース(mm):2670 ●車両重量(kg):1420 ●パワーユニット:1995cc直4DOHC(154PS/20.0kg・m) ●JC08モード燃費:16.4km/L ●燃料タンク容量(L):63[レギュラー] ●最小回転半径(m):5.4 ●最低地上高(mm):200
チェックポイント【3】装備&機能メカニズム
安全&運転支援は標準装備が当たり前
今や先進運転支援機能の基準となった感のあるACCとLKAを比較してみると、ACCはヴェゼルが30km/h対応の高速型になる以外は、前走車追従による停車までサポートする全車速型を採用する。LKAはエクリプスクロスが車線逸脱警告、C-HRは自動補正操舵を行うが車線逸脱時対応に限定。他の3車は走行ライン制御まで行うものの、CX-30の走行ライン制御は55km/h未満に制限され、高速域では逸脱時自動補正操舵となってしまう。比較5車で全車速型ACCと高速域での走行ライン制御LKAを備えているのはスバルXVのみだ。CX-30を除けば機能向上と普及期のため登場年月の違いが機能に影響したが、最新モデルであるCX-30に関しては、別項でも述べたとおりマツダの思想によるものだ。
ACCとLKAのグレード展開はエクリプスクロス以外は全車標準装着。ヴェゼルは非装着車の選択も可能だ。自動ハイビームはヴェゼル以外のモデルが採用している。
安全関連機能ではCX-30は高水準だが、運転支援機能の実効性ではアイサイトで先陣を切ったスバルXVに分がある。
CX-30
ドライブをより楽しめるインフォ&エンタメ機能も充実
第二世代型のマツダコネクトやTFTカラー液晶が組み合わされたマルチスピードメーターやアクティブ・ドライビング・ディスプレイなど、快適なドライブを手助けする機能装備も充実。
室内の角部分に低域用ウーハースピーカーを配置する8スピーカーシステム「マツダ・ハーモニック・アコースティックス」を標準装備。カーオーディオ機能も大幅に強化している。
ヴェゼル
ACCは機能限定仕様になるが、ホンダセンシングは標準装備
ACCこそ速度30km/hまでの高速型になるのが残念だが、衝突軽減ブレーキは歩行者対応型を搭載。実効性の高いホンダセンシングを全グレードに標準装備している。
標準はオーディオレス仕様。ナビはメーカーOP対応だが、通信機能を備えるホンダ純正のインターナビを選ぶことができる。
C-HR
走りの質感を高めるメカニズムも売りの一つ
トヨタセーフティセンスは標準装備だが、レーントレーシングアシスト(RTA)を備える最新型ではなく、1世代前のシステム。LKAの機能もやや限定されたものになっている。
開発時にニュルブルクリンクで走り込みを行ったことでも有名だが、そこで得たノウハウはフロント/リヤサスペンションに注がれている。
エクリプス クロス
安全運転支援はやや弱いが、高度な運転支援機能は魅力大
ACCや衝突軽減ブレーキなどを備える「e-Assist」は全グレードに標準装着。ただし、車線逸脱防止機能は警告止まりになるなど、ライバルに比べると弱い部分があるのは残念。
ラフロードなど路面抵抗が低い道路状況でも安定した走りを披露できるのは、ミツビシ自慢のS-AWCがもたらす巧みな駆動配分制御によるところが大きい。
スバルXV
10月のマイナーチェンジでアイサイトが大幅強化
ステレオカメラで幅広い機能をカバーするアイサイト。10月に予定されているマイナーチェンジで運転支援機能が大幅に強化されたアイサイト・ツーリングアシストが投入される。
2L車にはスバル独自の四輪制御技術「X-MODE」が標準設定されており、滑りやすい悪路に加え、ダート路などでも安定した走りを披露してくれる。
コンパクトSUV編【結論】
コンパクトクラスは実用性も重要。CX-30の登場で、それがより明確に
コンパクトサイズだからこそ車格ハンデが出やすいキャビンや走りのファミリー&レジャー適性が重要。スペシャリティに割り切ったC-HRは別としても、他の4モデルはファミリー&レジャー用途向けSUVらしい機能と性能を備える。
走りではエクリプスクロスとスバルXVがラフロード寄り。CX-30とヴェゼルはオンロード寄り。スポーティ感はCX-30とエクリプスクロスが濃いめ。キャビンはCX-30とスバルXVはプレミアム志向で、ヴェゼルとエクリプスクロスは機能志向。極端な偏りはないにしても、ポイントが異なる。
また、上級パワートレーンは一概に評価するのも難しいが、いずれも高速長距離を意識した設定。現時点ではディーゼルターボが価格面も含んだアドバンテージが大きい。
そういった各車のバランスとユーザー側の必要要点の優先順位が選択の決め手。デザインもハードウェアも個性的な車種が揃っているだけに「相性」の見極めが重要である。
CX-30

CX-3からキャビンが拡大してファミリー&レジャー用途への対応力を強化。実用機能で選ぶタイプのモデルではないが、弱点が改善されて普通に楽しめるモデルである。
ヴェゼル

1.5Lターボ車がFFに限定されるのは残念。動力性能を除けばサイズとキャビンの使い勝手、運転支援機能と経済性などが高レベルでまとまっている。
C-HR

SUVをモチーフにしたスペシャリティカー。走りもユーティリティもSUVらしいとは言い難い。ハイブリッドには4WDが設定されていないが、その割り切りも個性の一つだ。
エクリプス クロス

ダートスポーツを彷彿させるファントゥドライブが一番のセールスポイント。その点ではスペシャリティ志向だが、キャビンの開放感やシート機能を持ち、多彩な用途にも対応できる。
スバルXV

内外装も運転感覚も乗用車的でSUV特有の雰囲気を楽しむには不向きだが、オン&ラフロードを快適に過ごせる走りや、落ち着いた居心地など、普通を高水準でまとめていることが魅力だ。