新型車比較・ライバル車対決
更新日:2020.11.02 / 掲載日:2020.11.02
ベンツのクロスオーバーSUV 乗りくらべ
メルセデス・ベンツはGLで始まる車名を持つクロスオーバーSUVのラインナップを拡充中だ。そんな中、新型GLAとGLBをはじめとするSUVを集めた試乗会が開催された。ニューモデルを中心に、試乗インプレッションと乗りくらべの結論をお届けする。
【GLB】SUVに期待する要素を高いレベルで網羅
試乗グレードはスポーツサスを装備。なお、ディーゼル車のGLB 200 d(FF・150PS)はコンフォートサス、同AMGラインはスポーツコンフォートサス装備となる。
実用的かつプレミアム。ダウンサイザーに最適だ
4.6m強の全長や3列シートの採用、ボクシーなキャビン周りのデザインからも分かるように、ファミリー&レジャーでの実戦力を重視したモデル。社内測定値の最低地上高は200mmを超え、悪路モードを備えた電子制御4WDの採用もあり、SUVに求められる要素を取りこぼしなく備えている。もちろん、ベンツ車らしいプレミアム感は大きな魅力だが、実用性に重きを置いたコンセプトに感心させられた。走りについても同様、といってもGLBに限らず最近のベンツ車に共通する美点だが、力学的なセオリーに沿った安心感あるいは余裕を感じさせる運転感覚や乗り心地。操作に対する反応遅れが少なく、過剰な反応もなく、動きは滑らかで据わりがいい。低扁平大径タイヤを履くせいもあり、少人数乗車では多少上下動を意識するが、ストロークの腰が粗さを払拭。重質な味わいも好感触だ。巡航の力強さと伸びやかな加速性を両立したパワートレーンと相まって、市街地から山岳路まで同じような感覚でこなせてしまう。肌馴染みのいい走りだ。実用性だけで費用対効果を測れば国産車に適うべくもないが、生活やレジャーのお供に使うプレミアムSUVを求めるなら筆頭候補車。中でも上級SUVからのダウンサイジングを考えているユーザーにはイチオシである。
MERCEDES-BENZ GLBクラス【ニューモデル】
●車両本体価格:512万~696万円●発表日:’20年6月25日
スクエアなフォルムで7人乗車にも対応
新型GLAと共通のプラットフォームを採用する、メルセデスとして9車種目となるSUV。クロスオーバーSUVながらGクラスのイメージを投影した角張ったエクステリアと高い悪路走破性を持つ本格派だ。ラインナップは2L直4ディーゼルターボの「GLB 200 d」と2L直4ガソリンターボの「GLB 250 4MATIC スポーツ」。乗車定員は7人が標準だ。
■主要諸元(GLB 250 4MATIC スポーツ)●全長×全幅×全高:4650×1845×1700mm ●ホイールベース:2830mm ●最低地上高:202mm(社内測定値) ●車両重量:1760kg ●駆動方式:4WD ●パワートレーン:1991cc直4DOHC直噴ターボ(224PS/35.7kg・m) ●トランスミッション:8速DCT ●WLTCモード燃費:12.0km/L ●最小回転半径(m):5.5 ●タイヤサイズ:235/45R20
取り回しのよいサイズながらスクエアな車体で7人乗車が可能。シンプルなボディラインや各部のプロテクターがSUVらしさを表現している。試乗車はAMGラインを標準装着。
224PSのガソリン(写真)または150PSのディーゼルを搭載。4WDの前後トルク配分は選択モードにより80:20~50:50となる。
カウルレスの大型スクリーンを2連装。先進安全&運転支援装備やインフォテイメントシステムはベンツの最新システムを採用する(高次機能は一部セットオプション)。
3列シートの2列目は6:4分割で140mmスライド可能、3列目は安全性確保のため身長168cm以下で使用可能となっている。
サードシートを格納して拡大可能な荷室スペース。容量は130~1680Lだ(VDA方式)。
【GLA】ツーリング&レジャー用の輸入SUVとしてコスパ良好だ
試乗車はAMGライン(28万円)やパノラミックスライディングルーフ(16万8000円)のほか、各種パッケージオプションを装着。
悪路走破性を高めつつ、高速等でも信頼感高し
A/Bクラスと同様に、GLBクラスとはキャビンスペースが差異の要点のひとつとなるが、Aクラスほどパーソナルに振らずに実用性との按配を付けているのがGLAクラスだ。後席スライド機構も採用するなど、GLBクラスのショートキャビン2列シート仕様と捉えてもいいくらい。実用志向の上級コンパクトと同等のキャビンユーティリティを備えている。最低地上高はGLBクラスと同じ202mm。先代から52mm増である。悪路対応制御モードを備えた4WDシステムや降坂制御も装備。悪路対応力の向上は新型のセールスポイントのひとつだ。サスチューンはスポーティモデルを思わせるが、ロールを使った往なしが巧み。高い着座位置でも頭を振られるような挙動は抑制されていた。穏やかかつ的確に反応して、路面のうねりや加減速による姿勢や方向性の乱れがほとんどなく、高速や山岳路でのハンドリングの信頼感は極めて高い。ディーゼルのトルクと8速DCTを活かして狭い回転レンジでほどよくメリハリの利いたパワーフィール。高速ツーリング時のゆとりだけでなく速度や加減速の変化が激しい状況でも扱いやすい、柔軟性に優れたドライバビリティだ。車格からすれば500万円強は安くないが、ツーリング&アウトドアレジャー向けの輸入SUVとしては買い得感も良好である。
MERCEDES-BENZ GLAクラス【フルモデルチェンジ】
●車両本体価格:502万円●発表日:’20年6月25日
全面刷新で走りも装備も最新仕様に
6年ぶりのフルチェンで2代目となった、ベンツSUVのエントリーモデル。より洗練されたスタイルとなり、悪路走破性や走行性能が高められ、「ハイ、メルセデス」の「MBUX」や最新の安全運転支援システムなどを採用。ディーゼル車の1グレード展開だが、年内にAMGモデルを追加予定で、ガソリン車のGLA 180についても導入を検討中とのことだ。
■主要諸元(GLB 250 4MATIC スポーツ)※< >はAMGライン装着時、[ ]はパノラミックスライディングルーフ装着時●全長×全幅×全高:4440×1850×1605mm●ホイールベース:2730mm●最低地上高:202<179>mm(社内測定値)●車両重量:1710[1740]<1730[1760]>kg●駆動方式:4WD●パワートレーン:1949cc直4DOHC直噴ターボディーゼル(150PS/32.6kg・m)●トランスミッション:8速DCT●WLTCモード燃費:16.5km/L●最小回転半径(m):5.3●タイヤサイズ:235/55R18<235/50R19>
よりSUVらしくたくましいデザインを採用。寸法は先代比で全長15mm減、全幅/全高/ホイールベース/最低地上高はそれぞれ30mm/115mm/30mm/52mm増となっている。
レーダーセーフティパッケージや360度カメラ、ワイヤレス充電を標準装備。ナビゲーションパッケージ(18万9000円)を装着すると最新の運転支援機能も手に入る。
インテリアはAクラスに準じたもの。写真はオプション(19万4000円)のレザー仕様。
大トルクかつ低振動で静かなクリーンディーゼル。ミッションは新開発「8G-DCT」だ。
ハンズフリー開閉機能付きの電動リヤゲートを標準装備する。
【GLC Coupe】
MERCEDES-BENZ GLCクーペ【マイナーチェンジ】
●車両本体価格:721万~1519万円●発表日:’19年10月3日
AMG GLC 43 4MATIC クーペ
SUVになってもAMGはスーパーツアラーのセオリーに忠実なモデルだ。390PSを発生するV6ターボなら速いのは当然としても、それを引き出しても破綻の兆しさえ感じさせないのだ。170mmの最低地上高を確保しているのも感心。圧迫感はあるものの後席も実用的だ。
【GLE Coupe】
MERCEDES-BENZ GLEクーペ【フルモデルチェンジ】
●車両本体価格:1186万~1421万円●発表日:’20年6月11日
GLE 400 d 4MATIC クーペ スポーツ
GLCクーペの拡大版といった外観だが、キャビンスペースだけでなく乗り味にもひとクラス上の重質な味わいを感じられる。低負荷から素早く反応するディーゼルや全高を意識させない挙動など、走りの側面でもSUVとクーペを高レベルで融合させていた。
【メルセデス×クロスオーバー】乗りくらべの結論
趣味性だけでなく実用性にも目を配ったプレミアム感が共通
演出とか嗜好的な要素は控え目に、クラス/カテゴリーのコンセプトやニーズを的確に押さえているというのが最近のMB(メルセデス・ベンツ)車に共通する印象。例えば走りの志向はAMG車を筆頭に安定と安心に徹底している。高性能とは安定と安心の限界の高さとでも言いたげなほどだ。また、SUVも含むクーペ系の後席居住性への配慮や新登場のGLBクラスなど、ユーザーの現実に沿った実用性も見所。嗜好的なプレミアム感ではなく、実利の伴うプレミアム感とも言え、今回試乗したSUV系MB車はその典型ともいえよう。