新車値引き情報
更新日:2021.10.26 / 掲載日:2021.10.26

X氏の値引き大作戦 キックスから25.1万円引き!

天国→地獄! 買い替えを断念 リベンジ!! 競合作戦を発動せよ 伝家の宝刀!!! 土壇場で部長降臨

【プロローグ】 去年、勤務先の部署が変わり、電車通勤からクルマ通勤になった。コロナ禍なので他人との接触が少なくなったのは良かったけれど“通勤の足”として使用している日産ジュークが気になり始める。
 8年落ちなので、もちろん自動ブレーキなど最新の安全装置はまったくなし。さらに問題なのは燃費だ。1ℓ当たり10km程度しか走らないので、通勤に使うと1か月に2〜3回満タンにしなければならない。
 とは言っても、走行距離はまだ3万1000kmで、走りは快調。車検も1年ほど残っている。スピーカーを交換したり、オールシーズンタイヤに履き替えたりと、いろいろ手を加えているし、なによりも長年一緒に過ごしてきたジュークには強い愛着がある。
 そんなこんなで買い替えはまだ早い!と思い直して、当分はこのまま乗ることにした。
 となれば、1年点検をしっかり受けておこうと、日産A店に出向く。すると、担当の営業マンさんが応対に出てきて、
「Xさん、次の車検を受けた後だと下取り価値がなくなってしまいますよ。今ならまだ値段が付きます。新車に乗り換える、最後のチャンスですよ!」
 と熱く迫られた。この人とは付き合いが長く、とても誠実なので全面的に信頼している。
 実は、発表時から気になっていたキックスの展示車を見て「やっぱりカッコいい!」と強く再認識。さらに「まだ値が付く」とか「最後のチャンス」といったキーワードを聞いた瞬間に火がついてしまった!
 その場は「検討してみます」と引き上げたが、もう後戻りはできない……(笑)。

【交渉1日目】 狙いはキックス一本。そこで「経営の違う日産B店を先行させて、本命のA店に揺さぶりをかける」という作戦を採ることにした。
 4月某日、日産B店を訪問。私と同い年くらいの元気な営業マン氏が応対。私が日産A店のお客だということを知ると、
「Xさん、A店には絶対負けません! 実は、コロナ禍の影響で3月の年度末決算セールは思ったような販売成績をあげることができませんでした。だから4月になっても決算セールの延長戦をやっています」
 ナビなど40万円を大きく超える付属品を付けて見積もりを出してもらった。
 おっ、こちらから何も言っていないのに納車費用をカットしている。以前、月刊自家用車に「黙っていても納車費用をカットしてくるセールスマンは信頼してもいい」と書いてあったのを思い出して好感度がUP!
X「決算セールの延長戦ってことですが、値引きはどれくらいいけるんですか?」
「車両本体5万円、付属品12万円の合計17万円引きです。キックスは値引きをあまり出していないので、これは破格の数字です。この見積もりをA店さんに持っていってもらっても大丈夫ですよ。おそらくここまでは出せないと思います」
X「わかりました。少し検討させてください」
 車両本体の値引きは少ないけれど、付属品の値引き率は25%を超えている。月刊自家用車には「キックスはガードが堅い」と書いてあったので、最初としてはなかなかの好条件ではないか! 首尾よく、A店を攻略する武器を手に入れることができた。ちなみにジュークの下取り額は33万円だった。

【交渉2日目】 数日後、日産A店にてキックスを試乗。走りはとても静かで、e-POWER特有の加速感もいい感じだし、ブレーキもよく効く。ワンペダル走行には不思議な感覚をもったが、これが身につけばすごく運転が楽になるな。自動運転プロパイロットも魅力的で、気分はもう買い替え、決定!(笑)
 商談を開始。担当さんとはとても相性がいいので「この人から買いたい!」と思っていたのだが……提示してきた下取り額に愕然とする……14万8000円……マジかよ(泣)。
X「下取り、安すぎませんか?」
「たしかに走行距離は少ないんですが、8年落ちなので、この値段になってしまいます」
X「実は、日産B店にも見積もりを出してもらったんです。あちらのセールスさんは自信たっぷりで『うちの見積もりをA店に見せてもいい』って言ってたんで、持ってきました」
 伝家の宝刀(B店の見積書)を公開すると、
「う〜ん……(絶句)……凄すぎる……う〜ん……下取りも値引きもとてもかないません」
 完全にお手上げ状態。
 必殺技だと思っていた「B店を先行させてA店を攻める」という戦術がまるで効かない。
X「え〜、私は長い付き合いのA店さんから買いたいと思っているんですよ」
「すみません。下取りの上乗せはできません。値引きは車両本体5万円、付属品5万円の合計10万円、これが精一杯です。なんとかお願いします!」
X「う〜ん……B店に比べて高すぎます。これでは買い替えする気になりません」
 試乗が終わったときは「よし、買うぞ!」と盛り上がっていたが、商談が終わったらテンションはダダ下がり……。
 これまでの付き合いからB店との競合を伝えれば「値引き20万円/下取り35万円」程度は出してくれるものと思っていたため、すっかり意気消沈。買い替えそのものを見直すことになってしまった。
 約1か月間「やっぱりキックスが欲しい!」「いやいや、こんな条件では買えない」と自問自答を繰り返す。
 そのうちに「なにもキックスだけがコンパクトSUVじゃない。他メーカーのライバル車も検討してみよう」という気持ちにもなってきた。また、必殺だと思った戦術がまったく通用しなかったのも引っかかる。
 そこで「月刊自家用車のX氏に名乗りをあげて、攻略法をしっかり教えてもらおう!」ということにした。早速、応募したら、なんと、見事に採用!
 6月某日、松本さんと作戦会議。失敗した経緯を話すと、
松本「なじみのお客から買い替えの申し出があると、セールスマンは『必ず買ってもらえる!』と思って安く売る努力、つまり『値引きや下取りの上乗せを会社に掛け合う』ことをしてくれなくなることがあります。Xさんの失敗もこれが原因だと思います。いきなり日産同士の争いに持ち込んだのもよくないですね。初めはヤリスクロスやヴェゼルといったライバル車で攻めて、ここ一番となったら伝家の宝刀同士討ち作戦を繰り出して一気に攻めるほうが有効ですよ」
X「なるほど、ちょっと先走ってしまいました」
「日産は全般的に大幅な値引きを出していますが、e-POWERを搭載したキックスとノートは別です。独自のメカニズムを強調して強気な売り方をしてくる傾向があるので、心してかかりましょう」
X「下取り車のジュークは日産B店では33万円の値が付いたのですが、ほかの店では高取りが難しそうなんです。どうしたらいいでしょうか?」
「下取り車は買い取り専門店に売却を考えたほうが有利だと思います。実は、このところ中古車価格が高騰していて、これを反映して買い取り額もかなり上がっています。とくにSUVとなると買い取り専門店が割高な値を付けてきます」
X「決算セールの延長戦を逃してしまったので、タイミングが悪くないですか?」
「大丈夫です。現在夏のボーナス商戦を開催中なので、前回を上回る条件が取れますよ」
 こんな感じでたっぷりと攻略法を伝授してもらったので、大いに自信が湧いてきた。
 では、作戦を再開!

緊急事態!必殺攻撃が不発……起死回生の秘策で再挑戦!

【交渉3日目】 午前中、ホンダへ。狙いはヴェゼル。父が生粋のホンダ党なので、私もホンダ車には愛着をもっている。
 新型ヴェゼルの展示車を拝見。実物は思っていた以上にいい。内装は豪華で、キックスのカジュアルなテイストとはまた違った魅力がある。
X「ヴェゼルの納期はどのくらいかかりますか?」
「売れ行きがいいし、半導体の不足も影響して納期に時間がかかります。現在、納車まで6か月から8か月待ちです」
 作戦会議の際、松本さんから“納期の遅れ”について説明を受けていたが、とりあえず、ここはビックリしてみせよう。
X「ええっ、そんなにかかるんですか……」
「ご迷惑をおかけします。お詫びといってはなんですが、お値引きのほう、頑張ります」
 提示してきた値引き条件は車両本体と付属品(25万3935円)から13万円引き。
「発売直後なので普通ならとてもここまではできません」
 新型としては頑張ってくれたが、本命・キックスを吹き飛ばすほどのインパクトはない。なによりも納期が長すぎる!
 午後はトヨタへ。ヤリスクロスはキックスより小さく、顔も好みではないが、歴史のあるトヨタのハイブリッドシステムとリーズナブルな価格が魅力だ。
 いかにもベテランという感じの営業さんと商談。
 納期が気になったので、最初に訊ねてみると、ホンダと同じ理由をあげて「6か月から7か月待ち」とのこと。
 タブレットを持ち出して見積もりの作成をするが、取り扱いに慣れていないようで、あたふた感が漂う。この分だと、値引きもたいしたことなさそうだと思いきや、
「値引きは20万円です」
 サラッと言ってのけた。
 付属品(35万1483円)からの値引き込みとはいっても、売れ行き絶好調の人気SUVとしてはなかなかだ。思わず「マジですか!」と言いそうになったが、気を取り直して、
X「本当に買うとなったら、もっと頑張ってくれますか?」
「ええ、もちろんです!」
 さすがベテラン、頼れる男を感じさせてくれる。
 この後、実車をじっくり見せてもらうと意外と小さい。内装もプラスチック多めで、キックスやヴェゼルに比べると、高級感に欠ける。しかし、価格が安い! 値引きも大きい! う〜ん……どうしよう……。
 MX-30とエクリプスクロスも見に行ったが、キックスとヤリスクロスを超えるほどのインパクトは得られなかった。
 どちらの店もフェアを開催中でセールスマンがとても忙しそうだったため、商談はしないで引き上げてきた。

【交渉4日目】 数日間、キックスか、はたまたヤリスクロスか?で、迷いに迷う。すると、そんな思いを察したかのように、日産A店の担当さんから電話がかかってきた。
「Xさん、ご無沙汰しています。まだキックスをあきらめていませんか? 6月下旬から7月初旬にかけてお店独自のセールを開催します。4月の商談ではB店の条件に降参してしまって、すみませんでした。でも、今回は頑張ります! ぜひ、ご来店ください」
 おおっ、グッドタイミング!
 早速、日産A店を訪問。
「Xさん、申し訳ありません。ジュークの下取り額はどうしてもB店と同じにできません。その分、値引きで頑張ります」
X「実は、ジュークは買い取り専門店に売却することを考えています。だから、下取りなしでいきましょう」
「わかりました」
X「実は、ヤリスクロスやヴェゼルも検討しています。とくにトヨタが有力候補に浮上しています。で、キックスはどのくらい値引きしてくれますか?」
「実は、4月にB店さんが出した本体5万円、付属品12万円引きに合わせるのもけっこう厳しいんですが……いくらになったら買ってくれますか?」
 おっ、逆質問だ。こういうときは……そうそう「少し無茶な値段を言ってみるべし」だった。
 4月に日産B店が提示してきた値引き条件は17万円引きで支払い総額353万円だったので、無茶な数字というと、
X「345万円!」
「う〜ん……そこまではちょっと厳しいですね。348万円だったらいけるかも……」
X「いますぐは決められないので一週間、348万円をキープしてくれませんか?」
「わかりました。キープしておきます!」
X「ところで、納期はどのくらいになりますか?」
「1か月半から2か月で納車できますよ」
 おおっ、ヤリスクロスより全然早い。この時点で、ほぼキックスに決定となった。

逆質問は“むちゃ振り”で対抗! ローン金利はプレゼントで補填!

【交渉5日目】 日産B店にアポをとって訪問。
「4月は決算セールの延長であの値段を出せたのですが、今はキャンペーンをやっていないんです。でも、決めていただけるなら同じ数字にします」
X「上乗せはできませんか?」
「無理ですね。あの値引きがいっぱいいっぱいです。それから下取りですが、あれから2か月が経過しているので30万円になってしまいます」
X「納期はどれくらいですか」
「キックスはタイの工場で生産されて日本に運ばれてきます。いますぐ契約していただければ、たぶん1〜2か月で納車できると思いますが、ちょっとタイミングが遅れるといつ納車できるかわからない状況になってしまいますよ」
 2か月前よりガードが堅くなってしまった。契約を迫られたが、態度を保留。やはり日産A店に絞ろう。

【交渉6日目】 日産A店を訪問。担当さんには前日「明日ではっきりさせようと思います」との電話を入れておいた。
X「前回、お願いした345万円になりませんか?」
「すみません。難しいです。キープしておいた348万円でも厳しいくらいなんです」
X「え〜、今日は決めるつもりできているんですよ」
「少しお待ちください」
 5分後、戻ってきた。
「すみません、どうしても上乗せができません。どうか、348万円でお願いします!」
 まじめで誠実な担当さんから懇願されたら、これ以上、何も言えない。
X「わかりました」
「ありがとうございます! 実はまだ正式に了承を取りつけていないんです。しばらくお待ちください」
 再び5分後、
「了承が取れました! 348万円でいけます!」
X「ありがとうございます。店長決裁までいきましたか?」
「いやいや、店長ではなく、部長決裁までいっちゃいました。部長には『ええっ、そんなに出したのか』って怒られてしまいました。正直、キックスでここまで値引きしたことはないですよ。で、ひとつだけお願いしたい条件がありまして30万円だけローンを組んでいただけませんか?」
X「こちらも少しは譲らないといけませんよね。わかりました、ローンを組みましょう」
「ありがとうございます。では、契約をお願いします」
 注文書を見ると、ローンの金利として4038円が計上されている。
X「こちらからも最後のお願いがあります。この金利分の補填ということでナンバープレートリムをサービスしてください! OKならガソリン満タンとか言いませんから」(笑)
「わかりました。プレゼントします!」
 これにて終了。注文書には車両本体から10万1175円引き、付属品(45万9205円)から15万円引きと記載。これとは別にナンバープレートリムが無料サービスとなっている。
 なお、下取り車のジュークは後日、買い取り専門店に35万円で売却した。

購入データ

From千葉県
NISSAN キックス
Xツートーンインテリアエディション
トータル値引き 25.1万円

値引き採点 4
車両本体値引きは10万1175円だが付属品45万9205円から約33%の15万円引き。8年落ちジュークは4月の時点で下取り額33万円だったが4か月後に35万円で買い取り店に売却。
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  • 支払総額:209.8万円
  • 車両本体価格:200.7万円
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  • 車種 : キックス
  • 年式 : 2024年
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  • 車両本体価格:210.3万円
  • 車種 : キックス
  • 年式 : 2021年
  • 走行距離 : 4.3万km
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  • 車両本体価格:186.6万円
  • 車種 : キックス
  • 年式 : 2020年
  • 走行距離 : 4.1万km
  • 車検: 検7.9
  • 支払総額:234.9万円
  • 車両本体価格:220.3万円
  • 車種 : キックス
  • 年式 : 2021年
  • 走行距離 : 2.9万km
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  • 車種 : キックス
  • 年式 : 2021年
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  • 車種 : キックス
  • 年式 : 2020年
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  • 支払総額:217.9万円
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  • 車種 : キックス
  • 年式 : 2022年
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  • 年式 : 2020年
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  • 車検: 車検整備付
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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

内外出版/月刊自家用車

オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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