輸入車
更新日:2024.01.24 / 掲載日:2024.01.20
CT5に乗って理解する最新キャデラックの魅力【九島辰也】
文●九島辰也 写真●キャデラック
最近キャデラックに触れる機会が続きました。ディーラー取材でエスカレードを走らせたり、CT5の広報車をお借りしたりしたからです。そもそもそれほどラインナップのあるブランドではないので、乗る機会は少ないですが、あらためて体感するとアメリカ車なんだなと思いました。
アメリカ車の特性は、大雑把に言うと操作や運転が楽と言うことです。全方位的に楽というわけではなく、ロングドライブに適しているという意味です。ご存じのようにアメリカは国土が広く一日の移動距離が長いですから、必然的にそうなります。
エスカレードを筆頭とするSUVラインナップは特にそうです。ロングホイールベースの大きな車体をゆったりとゆらせながら走ります。独特なテイストですよね。大海原を駆る大型クルーザーのようです。
そのセッティングはアメリカの路面の悪さとも関係します。フリーウェイという名前そのまま“無料”の道ですから補修工事は頻繁に行われません。財源が少ないという意味です。日本のように管理された高速道路とは異なります。それでも近年落下物はだいぶ少なくなりましたが、2000年代初頭まではフリーウェイにいろいろな物が落ちていました。パンクしたタイヤは当たり前、ホイールキャップやバンパー、排気システムがそのまま落ちているのを見たことがあります。
ただセダンやクーペのような背の低いキャデラックに関しては2000年頃からクルマのつくりが変わっています。それまでは柔らかいサスペンションのセッティングでフワフワした乗り心地でしたが、それ以降はしっかりしています。ダンパーの減衰圧を高め、硬めの乗り味になりました。理由はル・マン24時間レースへの参戦があります。コルベットレーシング協力のもと、キャデラックをスポーティなブランドに育る計画です。年に一度のル・マン24時間レースはもとより、一年を通して行われるアメリカ・ル・マンシリーズでスキルを磨きます。
Vシリーズが誕生したのはその頃で、レーシングカーのノウハウを市販車に転換する作業が行われました。CTSに使われるFR用プラットフォームを乗り心地を度外視してパフォーマンスを上げたのがVシリーズです。スタンダードモデルはもう少し柔らかくしないと日常的なロングドライブには向かないですからね。グレードとして追加しました。
なぜレースの話をするかと言うと、彼らは今レース活動に積極的だからです。昨年は久しぶりにル・マン24時間レースやIMSAスポーツカー選手権にエントリーし、かなりいい成績を得ました。VシリーズRというレーシングカーはキャデラックとレーシングコンストラクターのダラーラの共同開発によるものです。
そんな背景もあり今回ステアリングを握ったCT5もまたスポーティに仕上げられています。2リッター直4ターボというかつてのブランドイメージからすると小さいパワーソースですが、アクセルに素早く反応し気持ちよく吹け上がります。高速道路の追い越しでは240psというパワー以上の加速感がありました。10速ATもいいです。パドルを使ってスポーティに走れますし、燃費走行もできます。そして、リアサスは粘り強く、コーナリングスピードは高いまま維持できます。
スタイリングはイマドキで、セダンといえども流れるようなフォルムになります。ハッチバックとは違いトランクリッドを持ちますが、バルクヘッドはなくリアシートを倒せばそのままトランクルームと繋がるタイプです。フロントマスクもクールでかっこいい。エスカレードにつながる大きなグリルと横に長いヘッドライトが存在をアピールします。開口部の広いフロントバンパーも力強さを感じさせます。
なんて感じで走り回ったのですが、CT5には一つ明らかな欠点があることに気づきました。それは周りからキャデラックだと思ってもらえないこと。“ブランド買い”と考えるとこれは寂しい。「お、キャデラックですね」とか「キャデラックに乗っているんですね」なんて言われたいですよね。特に昔のキャデラックを知っている人は。
となるとエスカレードを選ぶ人の気持ちがよくわかります。キャデラックだと一目でわかりますし、最悪ブランドを知らない人でも、「なんか凄そう!」と思いますから。これって大事ですよね。でもCT5にも頑張ってもらいたいなぁ……。なんてことを考えるドライブでした。