輸入車
更新日:2025.01.28 / 掲載日:2025.01.25
BMWアルピナが迎えるフィナーレ【九島辰也】

文●九島辰也 写真●アルピナ
最近の自動車業界のニュースはBEV、いわゆる内燃機関を持たない完全な電気自動車への移行に陰りが見えてきたことです。
数年前ヨーロッパのメーカーのいくつかは、2030年に「全てのラインアップをBEVにします!」なんて宣言しましたが、それが鈍化。各社少しずつニュアンスが変わっています。「電動化はBEVだけになる意味ではありません」とか、「BEVのフルラインアップは2035年に延期します」なんてコメントが聞こえ始めました。みなさんBEVだけでは経営が成り立たないことに気づき出したようです。そりゃそうでしょう。ヨーロッパでは補助金が切れ始めた国から次々とBEVの販売台数が下降していますから。
そんな話題の中で気になるブランドがあります。アルピナです。1965年創業のアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーベン有限&合資会社と名付けられたこの会社は、アルピナの商標権をすでにBMWへ売却しました。契約では2025年末で、これまでのようなコンプリートカーの生産と販売を終了することになっています。

アルピナがその商標登録を手放したのには、前述したような自動車業界を取り巻く環境の変化が関係します。年々厳しくなる内燃機関に対する排ガス規制に対応するのが厳しくなってきたという話です。現行のEU6eとEU6d、それと次のEU7と呼ばれる規制など次から次に高いハードルが押し迫ってきます。そうなるとアルピナのような小規模メーカーは不利を被ります。研究開発の投資規模が大きくありませんから、ブレイクスルーは難しいでしょう。
アルピナブランドを手放した以降同社は「BOVENSIEPEN社」としてリスタートします。これまで生産してきたクルマのレストアや修理など、クラシックカー事業がメインになる予定です。アルピナユーザーには嬉しいニュースかも。これまで彼らの手掛けてきたクルマには価値がありますからね。時代が許す限り生き続けられることを期待します。
では、そのアルピナが現在どんなモデルを日本でラインアップしているかというと、大きく分けてガソリンエンジン車が4車種、ディーゼルエンジン車が4車種となります。
輸入元はニコル・レーシング・ジャパン合同会社で、長年本国のオフィシャルパートナーとして日本でアルピナブランドを育てて来ました。ちなみに、東京・世田谷にアルピナ専門のショールームがありますが、それは世界初となる試みだそうです。
なぜならヨーロッパではほぼBMWディーラーで売られているからです。それはもちろんアルピナとBMWの関係の深さを示しますが、専門ショールームがあるということは、日本はそれだけアルピナファンが多いということになります。きっとこの小規模メーカーならではの精緻なつくりとこだわりが我々日本人にマッチしたのでしょう。
そんなアルピナブランドから、2025年1月に新たなモデルが発表されました。前述したガソリンエンジン車の1台となるBMWアルピナ B8 GTです。このモデルはアルピナ創業者ブルカルト・ボーフェンジーベン氏へのオマージュとなります。

ベースは8シリーズのグランクーペ。よってドアは4枚。エンジンは4.4リッタ―V8ビターボで、最高出力は634馬力、最大トルクは850Nmを発揮します。巡航最高速度は330km/h、0-100km/h加速は3.3秒です。これはアルピナが吸排気システムとエンジンマネージメント、ブースト圧に手を入れた結果です。アルピナのスポーツエキゾーストシステムが頼もしいV8サウンドを奏でるのは言わずもがなでしょう。
エクステリアでは新しいカーボンパーツと21インチのアルピナ・クラシック鍛造ホイールが目を惹きます。ただものじゃない雰囲気たっぷり。ボディカラーは全5色ですが、選ぶならやはりアルピナブルーかアルピナグリーンでしょうか。多くの人の憧れです。

日本での発売時期は未定ですが、世界限定99台のうち30台が船に乗ってやってくるそうです。やはり日本はアルピナ大国なんですね。2025年がアルピナの一区切りとなる年だけに、このモデルは気になります。