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更新日:2025.03.11 / 掲載日:2025.03.11
ブランドイメージを変えた高性能セダン【BMW M5】の歴史といま買いの中古車

BMW M5|語り継がれる名車の系譜 vol.51|
文●ユニット・コンパス 写真●BMW
※中古車参考価格はすべてグーネット2025年2月調べ。
※写真は一部本国仕様の場合があります。
(掲載されている内容はグーワールド本誌2025年4月号の内容です)
たった1台のセダンがBMWのブランドイメージを大きく変えた。高性能セダンの代名詞M5の物語。
情熱と能力を内に秘めたビジネスエクスプレス

レーシングカーの力をビジネスセダンに搭載
「羊の皮を被った狼」という言葉は、M5を語る際に繰り返し使われてきた。高い走行性能を備えながらも、あえて存在感を抑えたM5のキャラクターを的確に捉えた表現である。
話は40年ほど遡る。70年代末に近代的なラインアップを完成させたBMWは、次のステップとして走行性能へのこだわりを世に訴求することにした。そこで白羽の矢が立ったのがレース部門のBMWモータースポーツ社。後のBMW M社である。
商品群に純粋なスポーツカーを持たないBMWが選んだのは、中心的商品の5シリーズを高性能化することだった。上品なスタイルを備えたビジネスサルーンにスポーツカー並の性能を与え、サーキットではなく速度無制限の高速道路・アウトバーンでライバルたちを打ち負かすのだ。追越車線を駆け抜ける後ろ姿は、まさに最高のPRになるだろう。
こうして1985年に誕生したのが初代M5である。搭載するのは、M1由来の3.5L直6DOHC24バルブエンジン。最高出力は286馬力、最高速度250km/hと、まさしく当時最速の4ドアセダンであった。
翌86年登場のM3がモータースポーツの情熱をストレートに表現したのとは対照的に、外観上の差別化が最低限にとどめられたことも、通人たちの心を揺さぶった。アスリート級の肉体を高級スーツで隠す、それがM5の美意識なのだ。
BMW M5はこんなクルマ

先進的で洗練された5シリーズのスタイルはそのままに、スポーツカークラスの性能を与えたのがM5。最新モデルはプラグインHVシステムを搭載、実用性をさらに広げた。

M8などMモデルのフラッグシップに搭載されてきた4.4LV8ツインターボを改良。モーターの出力を合わせたシステム最高出力は727馬力。

ステアリングやシートは専用のスポーツタイプ。Mモデル専用ドライブモードを選択すると、アンビエントライトが青と赤に輝く。
[BMW M5が名車になった理由]レーシングカーの性能と大人びたスタイルの融合
高いエンジン技術を武器にレースで活躍したBMW

BMWは1980年代前半にF1チームのブラバムにエンジンを供給。ネルソン・ピケの年間王者(1983年)に大きく貢献した。エンジンブロックを市販車から流用していることも重なり、BMW技術力の高さを大いに印象づけた。
モータースポーツ部門が手がける市販車「Mモデル」

BMWのモータースポーツ部門を担当していた当時のM社は1979年に初のオリジナルモデルM1を開発。F1での活躍を経て、1985年には初代M3と初代M5を発表。モータースポーツの技術を採用した市販車として注目された。
平日会社に通うクルマで休日はサーキットを走る

初代M5の広告ポスター。「日曜日の朝、午前7時15分、フォーミュラM」というコピーは、モータースポーツとの関わりをアピールしたもの。ニュルブルクリンクを走行するイメージを含め、ユーザーの気持ちを昂らせた。
あくまでも控えめなルックスがファンの心をつかんだ

市販車の枠を超える高い性能を備えながらも、正統派セダン・ワゴンとしての佇まいを大切にしたのも特徴。ビジネスシーンにも違和感なく使えるキャラクターは、尊敬の意味を込めて「羊の皮をかぶった狼」と呼ばれた。
エンジンだけでなくシャシー技術も大幅に進化した

BMW Mモデルは、公道からサーキットまでカバーする性能を備えている。M5は、エンジン出力の増加にともない力を路面に伝えるシャシー技術も強化。6世代目からは4WD(M xDrive)を採用して安定性を高めている。
ついに日本に導入されたM5ツーリング

現行型M5は日本で初めてツーリングを発売(2024年12月)。本国では3代目と5代目に存在したものの輸入されなかったM5ツーリングがいよいよ日本の道を走ることになる。そのポテンシャルはもちろんセダンと同等だ。
新車といま買いの中古車たち
BMW M5 セダン (G90)

第7世代となる新型M5。4.4LV8ツインターボにモーターを組み合わせたプラグインHV。システム最高出力は727馬力とMモデル史上もっともパワフル。約70kmのEV走行が可能だ。
新車価格:1998万円(M5セダンのみ)
BMW M5 ツーリング(G91)

M5としての性能はほぼそのままに、広大なラゲッジルームを備えることで多彩な使い勝手を実現するM5ツーリング。荷室容量は標準状態で500L、最大で1700Lまで拡大できる。
新車価格:1998万円(M5ツーリングのみ)
BMW M5(F90/先代)

M5として初めて4WDシステムを搭載。サーキットだけでなく、あらゆる路面状況で高い性能と安全性を両立させた。中古車は、標準仕様は700万円から、高性能仕様は1000万円から。
中古車参考価格帯:680万円~1350万円(17年~24年 M5 全グレード)
BMW M5(F10/先々代)

搭載するエンジンは4.4LV8ツインターボ。最高出力560馬力のFRというスペックは、腕自慢にはたまらない。中古車は500万円ほどで探せるが、それなりの維持費用は覚悟すべし。
中古車参考価格帯:280万円~550万円(11年~17年 M5 全グレード)