輸入車
更新日:2019.08.22 / 掲載日:2018.09.19
【試乗レポート・アルファ ロメオ ステルヴィオ】スポーツカー顔負けの走りっぷりに脱帽!

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス
「SUVとは思えないコーナリング姿勢」
「SUVとは思えない爽快な走り」
「SUVとは思えない運転する楽しさ」
軽井沢近郊の峠道で試乗したアルファ ロメオ ステルヴィオは、まさに「SUVとは思えない」の連続だった。
快活な走りをするクルマのことを「まるで水を得た魚のよう」と表現するのは自動車メディアで一般的だが、ステルヴィオの走りはまさに水を得た魚だった。ステルヴィオを語る上で、この心地よい走りを報告しないわけにはいかないだろう。そして、この走りの味の理由を探ることが、ステルヴィオを知る最大の近道である。
満を持してデビューしたアルファ製SUV

日本でもここ数年、街で見かけるSUVが急激に増えたと感じている人が多いのではないだろうか。アメリカで生まれ大ブレイク、そしてヨーロッパに飛び火して市場を一気に拡大(2017年度は欧州の29カ国のうちなんと23カ国でSUVが乗用車市場で最大のジャンルとなった)し、さらには世界一の新車販売規模を誇る中国でもSUVはセダンと並ぶ主力カテゴリーとなっている。日本においても市場規模はここ5年で約2倍に拡大し、2017年には約45万台も販売された。言い換えれば、今や自動車メーカーはSUVを持たないと勝負できないのだ。
カイエンで世界的なSUVブームの火付け役となった“スポーツカーメーカー”のポルシェはいまや販売の中心がSUVとなっているし、同様にX5で道を切り開いたBMWをはじめ、メルセデス・ベンツ、アウディなど欧州のプレミアムブランドは今やSUVをフルラインアップで取り揃えている。それより一般的な価格帯のクルマを販売するメジャーブランドはもちろんのこと、マセラティ、ベントレー、そしてランボルギーニやロールス・ロイスといった超高級車メーカーやスーパーカーメーカーまでもがSUVを展開する時代に突入しているのだ。20年前には想像すらできなかったことが起きているのである。
そんななか、イタリアのアルファ ロメオはSUVをラインアップしていなかった。そこで、満を持して投入されたのがこのステルヴィオである。しかしながら、今やSUV市場は飽和状態。販売台数が伸びているとはいえ、中途半端なモデルでは魅力的なライバル勢の中に埋もれてしまう。個性だって重要だ。そんな状況において、長年スポーツカーとスポーティなセダン&ハッチバックを作り続けてきたアルファロメオが市場、そしてアルフェスタと呼ばれるアルファ ロメオのファンに認めてもらうにはどんなSUVを出すべきか? その答えがステルヴィオであり、“水を得た魚のような運動性能”というわけだ。
マッシブなエクステリアに注目

ステルヴィオはいわゆる「Dセグメント」で、ボディサイズは全長4690×全幅1905mm。小さくはないが決して大きいわけでもない。輸入車でいえばメルセデス・ベンツGLCやGLCクーペ、ポルシェ・マカン、BMW X3、アウディQ5、ジャガー Fペイス、そしてボルボ XC60あたりがライバルとなってくる。国産車だとレクサスRXあたりが競合モデルだ。
そんな競合ひしめく中で存在感を強固とするために、スタイリングはアルファ ロメオらしさを強調。フロントマスクは伝統の盾形グリルを組み合わせてかなり大胆だが、アルファ ロメオファンの期待を裏切らないデザインであることは間違いない。そして起伏を強くして表情を持たせたサイドパネルや、鍛え抜かれた筋肉のように力強く張り出したリヤフェンダーなど、立体感の強さが印象的。好き嫌いはわかれるかもしれないが、これまでのアルファ ロメオ好きにもしっかり受け入れてもらえる造形にしていると言い換えてもいいだろう。ほかにも多くの魅力的なSUVが存在する中で、しっかりと個性が強調されていることは間違いない。アルファ ロメオはSUV市場に参入するにあたり、アルフェスタがどうすれば納得するかをしっかり考えたということだ。

そしてその真骨頂が、とびきりスポーティで、まるでスポーツカーを運転しているのかと錯覚するような走りというわけである。
走り出してまず感じたのは軽快さだ。といっても車両重量は1.8トンもあるから実際に軽いわけではないのだが、ハンドルを切るとクルマが瞬時に反応し、正確に向きを変えていることに驚かされる。これは交差点を普通に曲がるだけでも感じ取れることであり、とてもSUVの挙動とは思えない。
さらに峠道に向かってみると、ロールが極めて少ないことに気が付く。プラットフォームはスポーツセダンのジュリアと同じ「GIORGIO(ジョルジオ)」と呼ばれるものを使うが、SUVなので重心は高くなっているにもかかわらずロール軸(クルマの傾きの軸)の中心はジュリアと同じという。さらに「ロールの大きさはこのセグメントでもっとも少ない」という説明にも納得だ。だからスポーツカーのような運転感覚を手に入れているのである。
もうひとつうれしかったのは、アクセルを踏みながら比較的速度が高めの旋回をすると後輪で大地を蹴る後輪駆動車ならではの気持ちいい感覚がしっかりと盛り込まれていたこと。シャシーはエンジンを縦置きにする後輪駆動設計で、4WDシステムは後輪駆動を中心に状況に応じて前輪へ駆動力を配分していくタイプ。そのおかげで、ジワリとアクセルを踏んで旋回するとフロントは気持ちよく曲がり込んでいき、後輪はグググッと踏ん張りながら大地を蹴っていくFR(と後輪駆動ベースの4WD)特有の気持ちよさを味わえるのだ。
280馬力を誇る2.0Lターボを搭載

今回試乗した「ファーストエディション」に搭載されていたエンジンは280馬力を発生する2.0Lターボ。これまた“エコだから抑え気味に”なんていう配慮は一切なく、アクセル操作に応じてグイグイと鋭くパワーが立ち上がるのだから楽しくなってくる。
「運転する楽しさとは何か?」
アルファ ロメオ初のSUVであるステルヴィオを運転していると、楽しさを念頭に置いて開発されていることがしっかりと伝わってくる。見た目も走りも期待を裏切らない、そんな印象も強く受けた。
実用性も十分以上

期待といえば、このクルマに実用性を求める人は少ないかもしれない。しかし乗り心地が良くてドライバー以外にも優しかったことや、後席足元スペースが広くて居住性が優れていたこと、荷室はサイズが十分にあるだけでなく後席格納時は床がフラットになって便利なこともお伝えしておこう。
アルファ ロメオ ステルヴィオ ファーストエディション(8速AT)
全長×全幅×全高 4690×1905×1680mm
ホイールベース 2820mm
トレッド前/後 1610/1650mm
車両重量 1810kg
エンジン 直列4気筒DOHCターボ
総排気量 1995cc
最高出力 280ps/5250rpm
最大トルク 40.8kgm/2250rpm
サスペンション前/後 ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ前後 Vディスク
タイヤ前後 255/45R20
販売価格 689万円