輸入車
更新日:2019.08.22 / 掲載日:2018.09.26

【試乗レポート・BMW X2】走りもデザインもカジュアル仕立ての新型SUV

文●工藤貴宏  写真●ユニット・コンパス
 「BMW」というブランドに何を求めるかは人それぞれだと思うし、ハードウェアとしてはよくできている。一方で、判断が分かれるクルマだな、とも思った。BMWのニューフェイス、X2のことである。

 X2は、ひとことでいえばX1のクーペバージョンだ。X1はXシリーズとして用意されるBMWのSUVシリーズ(BMWは「SAV【スポーツ・アクティビティ・ビークル】」や「SAC【スポーツ・アクティビティ・クーペ】」と呼ぶ)の末っ子。X2はより遊び心溢れるカジュアル仕様に仕立てたコンパクトSUVクーペというわけである。とはいえ、クーペスタイルとは言ってもルーフが後方まで伸びたハッチバックスタイルなのはリヤウインドウの傾斜が大きなX4やX6の大きな違い。X2は「背を高くしたCセグメントハッチバック」といったほうが分かりやすいかもしれない。

機械式立体駐車場にも入庫可能

 全長は4375mm(X1より80mm短い!)で全幅は1825mmにとどまる。全高は1535mmとX1より75mmも低い。全高1550mmに制約される一般的な機械式立体駐車場にも入庫できる背の高さに抑えているのは、マンション居住者にとって朗報だ。たとえば東京では湾岸地区のタワーマンションに住む層もこのクルマの販売ターゲットだろうから、いちいち細かいことだが、彼らがしっかり車庫証明を取れることが大切。ユーザーも選択肢が広がるし、都市部のセールスマンを落胆させずに済むのだ。

 ライバルはメルセデス・ベンツGLAをはじめ、ジャガーEペイスやボルボXC40、そしてもうすぐデビューするレクサスUXなんかが相当する。EペイスやXC40は背が高いので一般的な機械式立体駐車場は使えない(ミニバン対応であれば使える)。機械式立体駐車場問題は日本特有だし、おそらく開発ではそこまで考えていないけれど、結果的には背の低いSUVのなかでもX2はよりアーバンな立ち位置に居ることになる。

エンジンはガソリンのみの展開

 パワートレインは「xDRIVE 18i」系が1.5Lの3気筒ガソリンターボで「xDRIVE 20i」系が2.0Lの4気筒ガソリンターボ。X1には展開しているディーゼルエンジンがX2には用意されないのは、もちろん物理的な問題ではなくキャラクターの違いを明確にするため。これは「X3」と「X4」の関係とも同じである。先日、本国ドイツでは306馬力のエンジンを搭載する「M35i」が発表されたが、こちらもエンジンは2.0Lの4気筒ガソリンターボ。「Mパフォーマンス」と呼ぶ高出力モデルなのに6気筒エンジンを積まないのははじめてのケースであり、それはつまり「シルキー6(絹のように繊細で気持ちいい6気筒エンジン)」とも形容された6気筒エンジンの搭載を考えていない(物理的にできない)ということ。エンジン選択でも、これまでのBMWとは違った一面が見えてくる。

従来とは異なるユーザー層がターゲット

 そんなX2について理解するにはどうすればいいか。「BMWらしいところ」と「BMWらしくないところ」に分けて見つめてみると、そのキャラクターが分かりやすい。

 まずはBMWらしくないところだ。まずキャラクターは「精悍でスポーティ」というこれまでのBMWとは違う。デザインはカジュアルさを強調するだけでなく、キドニーグリルが下部の幅を広げた形状だったりと細部でも随所に新しさが盛り込まれている。

 BMWとして初のFFモデルとなった2シリーズのアクティブツアラーやグランツアラー以降、BMWは新たなユーザー層の開拓に力を入れている。具体的にいえばそれは従来のBMWユーザーよりも“若い世代”で、X2はその最たるモデル。「こんなのBMWじゃないよね」なんていうマニア層の意見を恐れず、「今までBMWに興味がなかったけれど、こういう感じいいね」と感じる人たちに向けた開拓者なのだと理解すればすべてがしっくりくるような気がした。

 熱烈なBMWファンなら眉をしかめそうなエンジン横置き搭載のFFベースという車体設計にしても、これからBMWに入ってくる人たちは気にしないのだ。そもそもアウディはもちろんメルセデス・ベンツだって今や小さなモデルはFFベースが常識だ。

 ちなみにエンジン横置きのFFベースとした車体構造(基本はミニ・クロスオーバーやクラブマンと同じ)のメリットはパッケージングに見える。X2は後席も十分に実用的だし、後席を倒さない通常時で荷室の奥行きが770mmあるラゲッジスペースなど日常の利便性は高い。後席を倒すとフラットな床になるから大きな荷物も積みやすいし、そのうえCセグメントの2ボックスハッチバックと考えれば、後席にリクライニングが備わるのも珍しい。BMWといえば「走りはいいけど実用性が……」という世間の印象とは対照的に、このX2はいろいろと実用的なのだ。

 BMWらしくない、というか今までなかったX2から始まった新しい仕様も用意されている。それが「MスポーツX」。Mスポーツサスペンションやスポーツシートなどを組み込んだこれまでの「Mスポーツ」同様のスポーティ仕様だが、エクステリアはクロスオーバーSUVらしいアクティブなイメージでまとめてあり、これはこれで悪くない。

 一方でそんなX2のBMWらしいのはどのあたりか? やはり走りである。走ればやっぱり気持ちいいのだ。FRベースの車体構造ではないから前輪で舵を切って後輪で大地を蹴るような感覚こそないものの、ハンドルを切ると反応の遅れなく、なにより気持ちよくクルマが向きを変える感覚は紛れもなくBMWの味。X1でもBMWらしい操縦性の気持ちよさはしっかりあるが、さらに重心が低いX2の軽快感はひときわ高く、走り好きのドライバーでも納得できることは約束する。

BMWが提案する新時代のカジュアル系モデル

 このX2は「シルキーシックス」や「後輪駆動」といった過去のBMWの特徴にこだわる人には無縁のクルマだと思う。 しかし、堅苦しいハードウェアを気にするのではなく、今の時代を反映した雰囲気で毎日を楽しくしてくれるクルマが欲しい人にはマッチした選択と言えそうだ。

BMW X2 xDrive 20i MスポーツX(8速AT)

全長×全幅×全高 4375×1825×1535mm
ホイールベース 2670mm
トレッド前/後 1575/1570mm
車両重量 1620kg
エンジン 直列4気筒DOHCターボ
総排気量 1998cc
最高出力 192ps/5000rpm
最大トルク 28.6kgm/1350-4600rpm
サスペンション前/後 ストラット/マルチリンク
ブレーキ前後 Vディスク
タイヤ前後 225/45R19

販売価格 436万円~515万円(全グレード)




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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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