輸入車
更新日:2019.08.22 / 掲載日:2019.08.21
【試乗レポート テスラ・モデル3】ついに日本に上陸したテスラの最新・最安EVを実車チェック
テスラ モデル3。試乗車は日本未導入モデル
文●片岡英明 写真●ユニット・コンパス
EV(電気自動車)の新興メーカーとして注目され、話題に事欠かないのがアメリカのテスラだ。その最初の作品は、プレミアムEVセダンのモデルSだった。これに続く第2弾として個性的なプレミアムSUVのタイプXを送り出している。そして満を持して発表したのがテスラ初の量産車となる「モデル3」だ。発売されるやテスラの主役に躍り出た。毎月のように販売記録を更新し、2019年4月から6月までの2019年第2四半期の販売台数は7万7550台に達している。生産体制が整ったので、5月からは日本や香港、オーストラリアなど、右ハンドル圏でも受注を開始した。
モデル3の航続距離は、ベースグレード「スタンダードレンジプラス」で418km、上級グレードの「パフォーマンス」で最大530km
テスラ モデル3はグレードによって航続距離に差がある
モデル3のベースグレードは「スタンダードレンジプラス」を名乗り、後輪駆動のFR車だ。1回の充電での航続距離はWLTPの推定値で418kmである。最高出力は271馬力と、日産 リーフやBMW i3を相手にしない。最高速度は225km/hに達し、0-100km/h加速は5.6秒と発表された。上級グレードの「パフォーマンス」はデュアルモーターを採用したAWD(4輪駆動)で、最高出力は450馬力に達する。最高速度は261km/h、0-100km/h加速は3.4秒の俊足だ。航続距離もWLTP推定値で最大530kmと、余裕たっぷりの設定とした。
モデル3のボディサイズは全長4694mm、全幅1849mm、全高1443mm
取材車両は日本では発売されないロングレンジのバッテリーを積む左ハンドル車
ステアリングを握ったのは、リヤ2輪駆動のモデル3である。日本では発売されないロングレンジのバッテリーを積む左ハンドル車だが、モデル3の実力の一端は垣間見ることができた。だからモデル3に興味を持っている人には大いに参考になると思う。ボディサイズは全長4694mm、全幅1849mm、全高1443mmだ。ちょっと幅は広い。が、タイプSやジャガーIペイスより小ぶりだから持て余すことはないだろう。駐車も無理なくこなすことができた。
操作は中央の15インチディスプレイに集約。モデル3のインテリアは極めてシンプル
モデル3のインテリア。中央の15インチタッチスクリーンでエアコン設定からオートパイロットまですべての機能を行う
ドアロックの解除はカードキーをセンターピラーにかざして行う、フラットなドアハンドルを引けばドアが開く。モーターの起動はセンターコンソールにカードキーをかざす。すべてが未来感覚だ。ダッシュボードはすっきりしている。ステアリングの前には水平基調のパネルしかなく、エアコンの吹き出し口も見当たらない。そして中央に15インチの大型タッチスクリーンがセットされている。エアコンの温度調整やステアリングなどの調整はもちろん、運転モードやオートパイロットなどの設定まで、このタッチスクリーンを使って呼び出すのだ。
ドアハンドルは埋め込み式で、人間が近づくと出てくる
ホイールサイズは18インチから20インチ
すべての機能を15インチタッチスクリーンに集約
15インチのタッチスクリーン
最初は戸惑うが、要領を覚えてしまえば発見の連続で楽しいと感じる。ステアリングからは左右に2本のレバーが延びており、ウインカーやワイパー、ライトなどの操作は左側のレバーで行う。ステアリングコラム右側のレバーはシフトレバーだ。タイプSなどのレバー類はメルセデス・ベンツと同じパーツだったが、これは違うものに置き換えられていた。レバーの高級感はいま一歩にとどまるが、ソフトパッドやドアトリムの質感は高く、手触りもいい。
ウインカーレバーは左側。ワイパーの操作もここで行う
ステアリングコラムから伸びるシフトレバー
センターコンソールの小物入れ
もっとも小さなテスラながら、居住性は充分
モデル3は運転席からの視界にも優れている
ドライバーズシートからの視界がいいのも美点だ。車両感覚がつかみやすいし、枠内に入れる駐車も無難にこなした。バックカメラの画像も大きく、見やすい。ティンテッドガラスルーフを採用しているため開放感も高い。しかも前席と後席の頭上には十分な空間が残されている。前席、後席ともに着座位置は低く、スポーティだった。後席も不満のない広さを確保している。3人掛けも苦ではないだろう。
3人掛けも苦にならないリヤシート
ボンネット下にはトランク
ラゲッジルームは床下収納も用意
モデル3の静粛性は上位のモデルSに匹敵
モーターは瞬発力が鋭いからシングルモーターでも走りは軽やかだ。アクセルを踏み込むとパワーとトルクが一気に立ち上がり、気持ちよくスピードを乗せていく。タイムラグなしに切れ目のないシームレスな加速を見せるのがEVの魅力のひとつである。追い越しも加速が鋭いので俊敏にこなすことができる。 モードを切り替えられるが、基本はワンペダルドライブだ。強力な減速度の回生ブレーキを備えているので、ワンペダルドライブのテクニックを上手に使えば電費はよくなるし、坂道を下るのもラクだ。モーターによる回生機構を使えるワンペダルドライブは、信号の多い一般道でも重宝した。慣れてくるとブレーキをほとんど使うことなく運転することができる。クリープ現象も使えるような設定だから、渋滞した道でもコントロールしやすかった。
加速していくときに音が高まらない。これも内燃機関にはない魅力だ。クルージング時だけでなく加速しているときでも会話やオーディオを気持ちよく楽しめた。モデル3は生産の精度が上がったようだ。ボディまわりの組み付けなどがしっかりしていた。静粛性は上級のモデルSと遜色ないレベルにある。走行中、タイヤのパターンノイズが耳障りと感じたほどキャビンは静かで、快適だ。
モデル3の価格は511万円から。エントリーモデルであっても十分に魅力的だ
モデル3の価格は511万円から703万2000円
ハンドリングも軽快である。テスラ3を含め、EVはフロア下にバッテリーを敷き詰めているから重心が低い。これが気持ちいいハンドリングを生み出している。また、バッテリーを安全に囲っているからボディなどの剛性も高い。ワインディングロードでは地面に吸いついたかのような安定したコーナリングを披露し、意のままの走りを楽しめた。セダンボディで背の低いテスラは、とくに軽快感が強い。また、高速道路ではドッシリとした落ち着きがあり、レーンチェンジしたときの身のこなしも軽やかだ。話題のオートバイロットも制御が賢くなっていた。これも朗報だ。
気になる電費は、高速道路を流して走って7.46km/kWhだった。どのくらいのバッテリー容量なのかは知らされていないが、丁寧に乗れば航続距離は400kmを超えるはずである。ちなみに急坂のワインディングロードを登ったときは、平坦路を走っているときの2倍も3倍も電気を食ってしまった。登坂路では2.1km/kWhにとどまっている。が、下り坂では回生ブレーキを使い、バッテリーに電気を貯めていくので一気に航続距離が伸びた。市街地走行でも5km/kWh台の電費をマークしている。充電環境も整いつつあるので、電欠の心配はなさそうだ。ちなみに充電ポートは左側のリアコンビランプの中に隠されている。
テスラのエントリーモデルとして送り出されたモデル3は、ゲーム感覚で運転できる楽しいEVだ。ドアロックの解除からスタートまで1枚のカードで行うことができ、データも常に最新のものにアップデートできるのがいい。EVに不信感を持っている人も、一度モデル3のステアリングを握ってみることをおすすめする。EVの魅力にとりつかれるはずだ。車両価格は511万円からと、日産リーフの上級グレード(e+ G)やBMWのi3に限りなく近い。検討してみる価値のある魅力的なEVの登場である。
テスラ モデル3 デュアルモーターAWD パフォーマンス(電気的CVT)※スペックは北米参考値
全長×全幅×全高 4694×1849×1443mm
ホイールベース 2875mm
トレッド前後 1580mm
車両重量 1847kg
モーター総電力 75kWh
最高出力 450ps
充電走行距離 530km
サスペンション前/後 ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ前後 Vディスク
タイヤ前後 235/35R20