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更新日:2020.04.28 / 掲載日:2020.04.28

【試乗レポート アウディ A1スポーツバック】これはまぎれもなく、小さな高級車だ

A1スポーツバック 35 TFSIアドバンス

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

 2018年11月末から本国ドイツでの発売が素スタートし、2019年11月からは日本へも導入がはじまったアウディ A1スポーツバック。アウディのモデルラインアップのなかでボトムを担う、全長4040mmのハッチバックだ。

スタイリングの印象はVW ポロとは大きく異なるスポーティでシックなもの

A1スポーツバック 35 TFSIアドバンス

 フォルクスワーゲンのポロとはけっこう違う。それが実車に触れての第一印象だ。
 ポロもA1もプラットフォームの基本設計は同じで、乱暴な言い方をすればA1は“ポロのアウディ版”となる。しかし、両車の雰囲気はまるで違っていて、A1はポロよりもずっと端正で格式を感じる佇まいだ。高級感が違う。

  • A1スポーツバック 35 TFSIアドバンス

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  • A1スポーツバック 35 TFSIアドバンス

新型A1は5ドアのスポーツバックのみ

A1スポーツバック 35 TFSIアドバンス

 ポロとだけでなく、A1同士で比べても初代にあたる先代と新型では大きく雰囲気が違う。先代は丸みを帯びていて「ベビーアウディ」的なキュートさもあったが、新型は直線基調のシャープなデザインテイストで「小さな高級車」といった雰囲気。初代に比べるとずっと立派に見える。初代デビューから時を経て、ターゲットカスタマーが若者層からダウンサイジング狙いの大人層へと変わったのかもしれない。なにが言いたいかというと、大人でも似合うシックなデザインだということだ。
 それにしても、プレスラインはパキッパキで鋭く、まるで彫刻のよう。さりげない演出だけど、こういった細部の作り込みが工作精度の高さや高品質感として“いいもの感”を盛り上げている。
 バリエーションの大きなトピックは、5ドアしか用意されないことだ。初代はまず3ドアがデビューし、追って「スポーツバック」と呼ばれる5ドアが登場して中心的なモデルとなった。しかし新型は5ドアの「スポーツバック」だけのラインアップなのだ。ただしこれは、ライバルも含めたBセグメントコンパクトカーの流れでもある。GRヤリスとして3ドアを展開するトヨタ・ヤリスは異例で、むしろA1のように5ドアだけとするのが普通といっていい。

さらにスポーティさを際立たせた「Sライン」も用意

スポーティな仕立てとなる「A1スポーツバック 35 TFSI Sライン」

 日本で展開されるラインアップは、現時点では排気量1.5Lの4気筒ターボエンジンを搭載した「35TFSI」シリーズだけの展開。グレードは「A1スポーツバック 35 TFSIアドバンス」(365万円)とスポーティな内外装とした「A1スポーツバック 35 TFSI Sライン」(391万円)があり、後者はSラインバンパーをはじめ、スポーツシート、スポーツサスペンション、アウディドライブセレクトなどを備えてスポーティに仕立てている。
 また、1.0L 3気筒ターボエンジンを搭載する「A1スポーツバック 25 TFSI」も近いうちには加わる予定となっている。

クラスのなかでは十分に広い335Lのラゲッジ容量

ラゲッジスペースは後席使用状態で335L

 パッケージングは、先代に対して実用的性が大きく高まった。それをとくに感じるのが後席。95mm延長されたホイールベースの恩恵で、ゆったりとはいかないまでも大人が狭い思いをすることがないスペースが確保されている。これは先代に対する大きなアドバンテージだ。
 いっぽうラゲッジスペースは後席使用状態で335L。先代よりも65L増し、このクラスとして考えれば決して狭くはない。ただ、ファミリーで使うならばおなじBセグメントでも高さで荷室容量を稼げるクロスオーバーSUVの「Q2」のほうがいいかもしれない。Q2の荷室容量は405Lあり、たとえば旅行に出掛ける際に複数のスーツケースを積むなんていう状況では安心だ。

運転席に座った印象も着座位置が低く、スポーツカー的

ダッシュボードもドライバーを包むような形状でスポーツカーのような雰囲気

 運転席に座ると、着座位置の低さを実感する。昨今は着座位置の高いSUVが増えているし、そうでなくてもパッケージング効率を高めるためにハッチバックの着座位置を高めにするクルマが増えている。そんななかA1は低めでスポーティだ。
 さらに、ダッシュボードもドライバーを包むような形状でスポーツカーのような雰囲気。試乗車両はアウディバーチャルコックピットと呼ぶフル液晶ディスプレイのメーターを組み込んでいて、ナビの地図を全面的に表示することもできる。これは先進性を実感できるが、大きさは10.25インチと上位車種に比べると小さいのが残念だ(車格やコストを考えると仕方ないが)。この画面サイズを上級モデルと同じにできたら、見栄えだけでなく視認性にとってもいいと思う。
 ディスプレイと言えば、ナビ画面は角度をつけてドライバー側を向いているので視認性や操作性がいい。そして日本人にとって朗報と言えるのは、従来のアウディの多くのモデルと違ってダイヤルなど物理的なコントローラーではなくタッチパネルによる操作としていること。やはりナビ操作はタッチパネルのほうが直感的でわかりやすいという日本のユーザーは多いだろう。

  • アウディバーチャルコックピット

  • ナビ画面は角度をつけてドライバー側を向いているので視認性や操作性がいい

  • 着座位置は低めでスポーティ

  • ホイールベースが95mm延長され、後席は大人でもきちんと座れるようになった

しっとりとした落ち着きのある乗り味はライバルやポロと比べても魅力的

A1スポーツバック 35 TFSI Sライン

 走りの水準の高さは、やはりアウディだ。走り始めると、ボディの剛性感の高さに唸る。これはポロでも実感できたことだが、ポロとの大きな差として感じたのはサスペンションの感触。ポロの初期モデルに試乗した際にはサスペンションのバタバタした感じが気になったが、A1ではそれがキレイに払拭されている。コストの制約などによるブランドの作りわけなのか、それとも熟成なのかは判断できないのだが、しっとり感が高くて乗り心地が落ち着いているのだ。この違いだけでもA1を買うメリットがあると思えるほどである。
 適度に引き締まったステアリングフィールも好印象。スッと曲がり始めてジワッと安定する正確性はまさにドイツ車と言ったところで、コーナリング時の車体の挙動もおだやかだ。際立つようなスポーティな演出があるわけではないけれど、地に足がついた出来のよさを感じられる。
 よさを感じたと言えば、ブレーキの制動感もよかった。スーッと効いて、ドライバーの踏力と制動力の関係がリニアだからコントロールしやすいのだ。さりげないけれどドライバーの心地よさに直結する、こういった部分が洗練されているのはアウディの美点だ。

現在は1.5L直4ターボのみだが、1.0L直4ターボも導入予定

1.5L直4ターボは最高出力150馬力

 A1現時点で用意されているパワートレインは、1.0Lターボエンジンをメインとするポロと違って1.5Lターボ(追って1.0Lターボも加わる予定)。1.5Lユニットは150馬力もあるから充分に力持ちだし、わずか1500回転から25.5kgmもあるから力強い。
 加速感は、デュアルクラッチ(DCT)としたトランスミッションのおかげでアクセル操作に対するエンジン回転上昇と速度上昇の関係がリニアなのが心地いい。シフトアップもシャープで、爽快に加速してくれる。
 ところでエンジンには気筒休止機構がついているが、その作動を感覚として感じることはなかった。とはいえそれはネガティブな印象ではなく、むしろドライバーには伝わらないようにさりげなく作動するのが出来のよい制御である。つまりよくできている。

細かな惜しい点はあるが、全体的な完成度は高く、価格なりの満足感を提供してくれる

同じメカニズムのポロに比べて価格は高いが、それに見合う違いがA1スポーツバックにはある

 A1はポロに比べると高価だ。じゃあそのよさがどこにあるかといえば、最大の魅力は落ち着きのある乗り味だ。加えて高級に感じられるスタイリングの雰囲気も積極的に選びたい理由となる。
 ところで、惜しいと思えるところを強いてあげるとすればふたつある。ひとつはACC(アダプティブクルーズコントロール)の制御。走行中は問題ないのだが、渋滞で停止すると停止保持機能がなく作動がキャンセルされてしまうのが惜しい。もうひとつは、インパネの樹脂の仕上げといったフィニッシングがもう少し作りこまれていたら、さらに満足度を感じられることだろう。


アウディ A1スポーツバック 35 TFSIアドバンス(7速AT・Sトロニック)

全長×全幅×全高 4040×1740×1435mm
ホイールベース 2560mm
車両重量 1220kg
エンジン 直4DOHCターボ
総排気量 1497cc
最高出力 150ps/5000-6000rpm
最大トルク 25.5kgm/1500-3500rpm
サスペンション前/後 ストラット/トレーリングアーム
タイヤ前・後 215/45R17



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