輸入車
更新日:2021.04.12 / 掲載日:2021.04.12
【試乗レポート キャデラック XT4】アメリカから来たミッドサイズSUV
新型キャデラック XT4
文●九島辰也 写真●キャデラック、ユニット・コンパス
時代の移り変わりというのはこういうことなのだろうか。かつて4ドアサルーンを代名詞にしていたキャデラックだが、いまや充実したラインナップを形成しているのはSUV。4つの個性的なモデルがうまい具合にカテゴリーを分けて顔を連ねている。XT5、XT6、エスカレード、そして今回のXT4だ。セダン系は日本ではCT5とCT6、本国アメリカではCT4とCT5となる。派生モデルはあるものの、あきらかに充実しているのはSUVの方である。
日本でのXTシリーズはXT5から始まり、昨年XT6、今年XT4が加わった。1998年にリリースされたSUVの王様エスカレードも同じようなタイミングでフルモデルチェンジ。キープコンセプトながら見事に進化している。アメリカではここがドル箱だったりするから手は抜けないだろう。なんたってプライスはXT6の1.5倍以上だから利益率も高いに違いない。
XT4の全長は4605mmと都心部でも扱いやすいサイズ
新型キャデラック XT4のリアイメージ
さて、今回ステアリングを握ったのはXT4である。このクルマはいわゆるミッドサイズSUVで、大きなマーケットを相手とする。その分コンペティターは多いが、売れればヒットになる可能性が大きい。デザインを含めどこまで個性をアピールできるかが勝敗のポイントとなるであろう。
広い層にアピールできるのはまずはサイズだろう。キャデラックのブランドイメージから大きいのでは?と思われそうだがそうではない。全長4605mmは都心部でも扱いやすく、全幅1875mmは最近1900mmを超えるのも多いことから鑑みるとまずまずといったところ。迫力あるボディラインを形成できたと考えれば納得でもある。
それじゃデザインはというと、しっかりXTファミリーの一員として描かれている。もちろん、兄たちと違いこのカテゴリー特有のクロスオーバー的テイストが入るが、デザインの系譜は同じだ。薄目を開けているようなホリゾンタルなラインとキャデラックブランド特有のバーチカルなラインのLEDが個性を発揮する。
ヘッドライト下のグリルはグレードによって異なる。「プレミアム」と「プラチナム」はブライトメタリックグリルを、中間グレードの「スポーツ」はグロスブラックメッシュグリルを装着する。要するに前者はキラキラとエレガントに着飾るのに対し、後者は黒でワイルドさを演出する。しかも「スポーツ」は、ロッカーモールディングとルーフレールもブラックにするなど徹底している。ホイールはすべてアルミだが、グレードでデザインが異なる。10本、9本、5本とスポークの数からして別。サイズはプレミアムが18インチ、それ以外が20インチという設定だ。
多彩なコントロール方法が用意されたインフォテインメントシステム
新型キャデラック CT5のインテリア
インテリアではダッシュボードセンターのモニターとその下に整然と並べられたスイッチ類が個性的。デジタル世代もスッと馴染めそうなレイアウトだ。それでいてモニター操作は、そのままスクリーンをタッチするだけでなく、ステアリング上のスイッチやセンターコンソールのロータリーコントローラーでもできる。なので、自分のやりやすい方法でOK。デジタル化という面ではカラーのヘッドアップディスプレイやリアカメラミラーも挙げられる。どちらも機能面は優れているが、人間の方の慣れが必要かもしれない。
この他の装備ではフロントシートに仕組まれたマッサージ機能にスポットを当てたい。高級感たっぷりなレザーシートにそんな仕組みがあったとは驚きだ。エントリーグレードのプレミアム以外にはこれとベンチレーションシステムが標準装備される。
新型キャデラック XT4のフロントシート
新型キャデラック XT4のリアシート
新型キャデラック XT4のラゲッジルーム
エントリーグレードの「プレミアム」はバランスのよさが光る
新型キャデラック XT4の走行シーン
では走りだが、試乗車はエントリーグレードの「プレミアム」だった。以前20インチタイヤを履いた「スポーツ」を運転したことがあるのでその違いがわかるのが楽しみである。エンジンは全グレード同じ2リッター直4ターボで、9速ATが組み合わされる。駆動方式はFWDをベースにしたAWDだ。
総体的な印象は軽快さが目立った。ハンドリングの良さとそれに追従する小気味よい挙動が好印象となる。しかも、今回の18インチタイヤは20インチと比べ明らかに乗り心地がよく、素直さを感じた。バネ下がちゃんと働いている感覚だ。個人的にはそれなりにコーナーでロールするのも気に入った。深すぎない角度がクルマを操る楽しさを味合わせてくれる。それに対し20インチの走りを思い出すと少しタイヤが勝っている気がする。なので、素早い身のこなしを見せるものの若干の不自然さが残る。もちろん、ロープロタイヤの方がコーナリングでのスタビリティは高いから、そちらを重視する手はあり。この辺は明らかに好みなので、購入を考える人はできれば両方試乗するのがいいだろう。
というのが走りの印象だが、エンジン出力に不満はないし、クルマ全体のバランスの良さを強く感じた。これならロングドライブも疲れなさそうだ。マッサージ機能もあるし。そう考えると次回はもっと長い時間運転してみたい。キャデラックの本領はその領域かも。彼らならではの快適なグランドツアラー的強さに期待が募る。
新型キャデラック XT4のエンジンルーム
キャデラック XT4 プレミアム(9速AT)
新型キャデラック XT4のエクステリア
■全長×全幅×全高:4605×1875×1625mm
■ホイールベース:2775mm
■車両重量:1760kg
■エンジン:直4DOHCターボ
■総排気量:1997cc
■最高出力:230ps/5000rpm
■最大トルク:35.6kgm/1500-4000rpm
■サスペンション前/後:ストラット/マルチリンク
■ブレーキ前後:ディスク
■タイヤ前後:235/55R18