輸入車
更新日:2021.06.11 / 掲載日:2021.06.11
【いま注目すべきブランドBMW】BMWのエンジン【自動車ジャーナリスト九島辰也が解説】

文●九島辰也 写真●BMW、ユニット・コンパス
BMWという会社の意味をご存知だろうか? ドイツ語を直訳すれば、「バイエルン発動機株式会社」となる。アルファベットが並んでいると我々には謎めいて見えるが、意外にシンプルなことがわかる。アルファロメオの“ALFA”も確かそんな意味だった気がする。日本だとダイハツもそうだ。大阪で生まれた発動機会社というのが起源だと耳にしたことがある。
時計業界だとIWCも意外とシンプルで、英語の「インターナショナル・ウォッチ・カンパニー」の頭文字を並べている。それから、コンピューターのIBMも、英語の「インターナショナル・ビジネス・マシン」の頭文字だ。知ってしまうと、オーソドックスなネーミングに肩透かしをくらったような気になる。
何が言いたいかというと、BMWは発動機という言葉からもわかるようにエンジンメーカーである。航空機エンジンからスタートしたのは有名な話で、その技術力をモーターサイクルと4輪車に投入してきた。
言わずもがなではあるが、メルセデス・ベンツもそこからスタートした。1886年に内燃機関で走行する世界初の自動車を製造したメーカーだが、そこはガソリンエンジンなくしては語れない。“自動車の祖”と呼ばれるのはそんな理由だ。
それじゃすべての自動車メーカーがエンジンを製造してきたかといえばそうではない。戦前のジャガーはエンジンをMG社やスタンダード社から買ってきて、ボディをスポーティで妖艶なスタイリングに仕立てて名声を上げた。自動車業界黎明期にはいろいろなタイムのカーメーカーが存在していたのだ。
BMWに搭載されるエンジンの特徴。ガソリンとディーゼルの違い

3シリーズにはガソリン、ディーゼル、プラグインハイブリッドと多彩なパワートレインが搭載される
それはともかく、BMWは現在もエンジンをウリにしている。近未来iシリーズが拡大されEVモデルが台頭するが、このメーカーの内燃機関へのこだわりはかなり強いと言っていいだろう。90年代衝突安全の基準をクリアするため、他メーカーが直列6気筒からV型6気筒へスイッチした際も、BMWだけはエンジンバランスの長けた直列6気筒をつくり続けていた。絹のような滑らかさを表現する“シルキーシックス”なんて呼び名はこのブランドだけのものだ。
よって、例えば3シリーズには、ガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車、それとガソリンエンジン+モーターのハイブリッド車がラインナップされる。クルマ好きが興味を持つモデルだけに、「お好きなものをどうぞ!」という感じだ。
エンジン出力や燃費を別にすると、大きな違いはやはりドライブフィールに尽きる。その感覚とハンドリングやボディの動きを総合して自分にマッチしたものを決めればいい。具体的には、ガソリンエンジンはフィーリングが強く、運転している感が身体にそのまま伝わる。アクセルに対しリニアな加速はガソリンエンジンの個性となる。厳密にはターボよりも自然吸気ユニットの方がその傾向は強いが、そんなドライブフィールを好むBMW開発陣はターボも低速から自然な吹け上がりにセッティングしている。お見事。
これに対しディーゼルは出だしのトルクが太く、アクセルを踏む初期動作からクルマを前へ押し出すチカラを感じる。ディーゼルエンジン特有のトルク曲線に準じた加速だ。が、こちらもBMWはしっかり把握していて、中間からの加速をうまい具合に仕上げている。しかも、メーターは最大6000回転までしかメモリがないのに、それを感じさせないくらい軽快に回る。「BMWがディーゼルをセッティングするとこうなのかー!」と感心するばかりだ。
なので、この2つの選びは難しく、クルマを知れば知るほど結論は出ない。現実には意外なくらいディーゼル人気が高いが、そこに流されるのももったいない気がする。個人的には未だBMWのガソリンエンジンを経験していない人はまずはそこから試してもらいたい。長年彼らが讃えられてきた理由がわかるかもしれない。
ただ、その選択もモデルによって異なる。クーペやセダンならガソリンの、SUVならディーゼルの優位性が顔を出す。まぁ、BMWもそこは理解しているのは言うまでもない。Z4にディーゼルエンジンが用意されていないのがその証だ。
かつての質実剛健一辺倒から変化した最新BMWのインテリア

かつての質実剛健なものから、近年ではデザイン性を高めたものに変化してきたBMWのインテリア。それでも走りを予感させるディテールは受け継がれている
本流であるエンジンについての進化はわかるが、BMWがそれほど得意としていないインテリアの変化も最近は見逃せない。そもそも運転席は「男の仕事場」なんて形容されるほどドライバーオリエンテッドであり殺風景でもあった。質実剛健なドイツ人然としたつくりである。
それがこのところ急激に変わり、デザイン性を高めている。個人的には6シリーズのグランクーペからがそうで、少しイタリアンテイストが取り入れられた。センターコンソールの形状、スイッチのカタチ、トリムの色使いがそんな感じだ。シートのカラーバリエーションも充実する。
とはいうものの、3本スポークのステアリングやFRを強調する太いセンターコンソール、操作感のあるシフトノブなど、BMWらしさは継承される。当然デジタル化は進んでいるが、それが前面に押し出されていないのは嬉しい。メーカーはBMWユーザーの要望をかなり把握しているのだろう。少しばかり無骨さが残るのもBMWの魅力なのかもしれない。