輸入車
更新日:2021.06.23 / 掲載日:2021.06.23

【試乗レポート フェラーリ ポルトフィーノM】スイッチひとつでクーペからスパイダーに変身

フェラーリ ポルトフィーノM

フェラーリ ポルトフィーノM

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス

 フロントにV8エンジンを搭載するフェラーリのGTカー、ポルトフィーノが進化した。今度のネーミングは、ポルトフィーノM。イタリア語の“Modificata”の頭文字が付けられた。意味は英語のモディファイと同じで、スタンダードモデルに対して手を入れていることを指している。かつて456M GTや575Mなどにも使われた手法だ。要するに、只者ではない。フェラーリファンならずともその辺はお気づきであろう。

「M」はモディファイ、つまり進化型であることを示す

620馬力を発生させる3.9L V8ツインターボエンジン

620馬力を発生させる3.9L V8ツインターボエンジン

 まずはこのクルマのキャラクターを紹介しよう。同じGTカーシリーズでも昨年リリースされたクーペボディのローマとは別物である。

 その大きな違いはリトラクタブルハードトップであること。すなわち、スイッチひとつでクーペにもスパイダーにもなる。しかも、4シーターのオープントップなので、使い勝手もそれなりに良い。リアシートに子供を乗せたり、手提げバッグなどを放り込めるからだ。2シーターミッドシップモデルでは出来ないワザである。

 しかも、冬場のオープンエアモータリングも想定されていて、シートから温風を吹き出させるネックウォーマーを装備することができる。3段階に任意に調整できるほか、車速や外気温に応じてシステムが自動で調整してくれる優れモノ。そこは高級なGTカーとして抜かりはないようだ。

 それじゃ従来型のポルトフィーノからMはどう進化したのかだが、一番目に付くのが20馬力アップされたエンジンだろう。そもそもこのユニットは2016年から4回連続でインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーに輝いたもので、フェラーリエンジニアリングのクオリティの高さを広く知らしめた。それをさらに進化させ620馬力にしたのだ。新しいカムプロフィールで馬力アップを、タービンの回転速度を検知するスピードセンサーを取り付け効率化を実現している。また、今回はガソリン・パティキュレート・フィルターをエキゾーストシステムに採用したのも見逃せない。あの厳しいヨーロッパの大気汚染基準“ユーロ6D”に適合させている。スーパーカーもその辺を重視する時代。ターゲットとなる富裕層もそこは気にするところだ。

 エンジンにばかり目がいってしまうが、ギアボックスが変わったのもポルトフィーノMの大きな特徴となる。これまでの7速バージョンとは全く異なるロジックの8速デュアルクラッチが搭載された。これはどちらかというと、フェラーリ初の量産プラグインハイブリッドモデルSF90ストラダーレに近いが、ギアレシオを高くしたり、機械式リバースギアを導入して差別化している。その意味では個性的な味付けになったといえなくないだろう。

 ユニークなのは選択したギアに合わせてトルクの伝達量を調整する自社製の制御用ソフトウェア。これにより3速から8速の間はシフトアップに準じて伝達されるトルクが増大する

より質の高いGTへと進化したスモール・フェラーリ

オープントップゆえに甲高いフェラーリサウンドを堪能できる

オープントップゆえに甲高いフェラーリサウンドを堪能できる

 実際に走らせるとそれはよくわかる。ギアボックスはオートマモードのままでもいきなり最大トルクが立ち上がるのではなく、アクセルに対しリニアに加速していくのだ。言うなれば、一つ一つのギアがしっかり仕事する感じで、その繋ぎも滑らかで気持ちがいい。以前はオートマモードだとすぐ上のギアに上がってしまっていたが、それがないのだ。おかげでパドルシフトを使わずとも、スポーティな走りを楽しめる。マネッティーノを“コンフォート”ポジションのままこれだけ快適に走れたフェラーリは巡り合ったことがない。

 そのマネッティーノがGTスパイダーとして初めて5つのモードになったのもニュース。ウェット、コンフォート、スポーツ、レース、ESC-OFFという項目だ。今回は街中と高層道路が試乗コースだったのでレース以上の過激なモードを試せなかったのが残念だが、逆にコンフォートの素晴らしさを発見できたのはいい経験となった。

 その他では、相変わらずのエキゾーストサウンドに感動した。前述したような排気ガス対策が行われていても、そこはしっかりフェラーリしている。しかもポルトフィーノMはオープントップなので、ドライバーはそれをほぼ直接的に耳にできるのだ。あたり一面を一瞬でサーキットに変えてしまう甲高いエキゾーストサウンドは伝家の宝刀。これだけでも屋根の開くこのクルマを買う価値はありそうだ。

 というのがフェラーリポルトフィーノMのファーストインプレッション。見た目以上の進化にただただ驚かされた。大量生産メーカーではないフェラーリならではの一台一台に費やされるエンジニアリングの高さは想像以上だ。今回の試乗であらためてこのブランドの凄さを見せつけられた。

執筆者プロフィール:九島辰也(くしま たつや)

自動車ジャーナリストの九島辰也氏

自動車ジャーナリストの九島辰也氏

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

フェラーリ ポルトフィーノM(8速AT・F1ギアボックス)

■全長×全幅×全高:4594×1938×1318mm
■ホイールベース:2670mm
■車両重量:1664kg
■エンジン:V8DOHCターボ
■総排気量:3855cc
■最高出力:620ps/7500rpm
■最大トルク:77.5kgm/5750rpm
■サスペンション前・後:ダブルウィッシュボーン・マルチリンク
■ブレーキ前後:Vディスク
■タイヤ前・後:245/35RZ20・285/35ZR20
■新車価格帯:2737万円(ポルトフィーノM)

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グーネットマガジン編集部

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