輸入車
更新日:2021.07.27 / 掲載日:2021.07.26
【試乗レポート VW パサート オールトラック】パサート唯一の4MOTIONが進化
VW パサート オールトラック
文●岡本幸一郎 写真●ユニット・コンパス
一時期パサートはアウディA4と姉妹関係にあったので、いまでもそうだと思っている人も少なくないようだし、アウディにもオールロードクワトロがあるのでなおのことだが、1世代前から再びゴルフと共通化され、エンジンも縦置きから横置きにもどされ、現行型からはMQBをベースとしているのが特徴だ。
2015年7月に日本に上陸した現行8代目パサートに、2018年2月ディーゼルターボの「TDI」が追加され、さらに同年10月に追加されたのが「オールトラック」だ。190馬力で400Nmを発生する2.0リッタークリーンディーゼルの「TDI」に、第5世代のハルデックルを用いたパサートシリーズで唯一となるフルタイム4WDの「4MOTION」を組み合わせているのが特徴。外観も見てのとおりヴァリアントより車高を30mm高め、専用バンパーやホイールエクステンション、サイドシルなどが与えられている。
走りの面でも、30km/h以下の車速で作動するヒルディセントアシストや、悪路走行に適したスロットル特性となるオフロードモードが専用に搭載されている。
VW パサート オールトラック
VW パサート オールトラック
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VW パサート オールトラック
2021年4月には、一連のパサートシリーズがマイナーチェンジを実施。最新のフォルクスワーゲンデザインを導入した外観は、よりシャープさが増して精悍になった印象を受けるもので、同じく新世代のデザインとなり、リアについては中央に移された「PASSAT」のロゴも、新旧のわかりやすい識別点となる。
最適な配光を可能とするLEDマトリックスヘッドライト「IQ.LIGHT」の採用も新しく、見た目にも先進感がある。また、これまでヴァリアント専用だったボディカラー「アクアマリンブルーメタリック」が、セダンとオールトラックでも選べるようになった。
よりデジタル化を進めたメータークラスターを備えたインテリアには、従来のアナログ時計に替わってバックライト付の「Passat」ロゴが配されたのも新しい。マイナーチェンジでは常時コネクティッド化した最新のインフォテインメントシステムが設定され、オンラインサービス「We Connect」との組み合わせにより、渋滞情報の入手や、専用アプリによりスマートフォン上で窓の閉め忘れや駐車位置などの車両情報の確認やドアの解施錠なども可能となった。また、オフロード情報などオールトラックの使われ方を想定したいくつかの専用の画面も表示できる。
装備では新たに同一車線内全車速運転支援システム「Travel Assist」が搭載されたことや、走行性能に関わるものでは、こちらのオールトラックだけでなくパサートのセダンとヴァリアントのTDI搭載車も従来の6速から7速となった新しいDSGに換装されたのも今回のマイナーチェンジにおける大きなトピックスである。また、オールトラックには設定がないが、ガソリンのTSIもこの機に従来の1.4リッターから最新の1.5リッターに変更されたこともお伝えしておこう。
オールトラックとしてのありがたみが増した
VW パサート オールトラック
出足は比較的穏やかながら、実用域で力強いトルクを持つTDIの強みを、7速化によりギア比が接近したDSGがより巧みに引き出していて、市街地~郊外を軽く流すような走りでもトルク感が増しているように感じる。それでいて試しに踏み込んでみると、レッドゾーンの5000rpm近くまで比較的スムーズに回る側面も併せ持つ。7速で100km/hで走行したときの約1400rpmというエンジン回転数は、おそらく従来よりも下がっているはず。今回は正確に測っていないが、実走燃費もそれなりによさそうな印象を受けた。
上級の「Advance」グレードにはDCCやXDSが装備されており、車高が高められたことで重心高も高くなるのに対し、不要な挙動を抑えるべくダンピングがやや全体的に高められているようで、不整路ではやや硬さを感じることもあるものの、高速巡行時にはフラット感のある走りが心地よい。
むろんオールトラックは、TDIの頼もしい動力性能と経済性はもとより、持ち前の広い居住空間や、2WDのパサートヴァリアントに比べてもわずか11リット差にすぎない639~1769リットルの荷室による積載性、「4MOTION」による条件を問わず安定して走れる走行性能など、家族や仲間とともに長距離を走っていっしょにアクティビティを楽しみたい向きにももってこいの1台である。
そこにさらに前述の「Travel Assist」や「IQ.LIGHT」による運転支援を恩恵が加わり、ステアリングホイールのタッチセンサーが静電容量式となったことで、手を添えているのにACCの作動時に握れと誤警告が出ることもなくなり、DSGが多段化してドライバビリティが向上するなどしたことで、よりそのありがたみが増したように思う。
執筆者プロフィール:岡本幸一郎(おかもと こういちろう)
自動車ジャーナリストの岡本幸一郎氏
1968年、富山県生まれ。幼少期に早くもクルマに目覚め、学習院大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの企画制作や自動車専門誌の編集に携わったのち1998年にフリーランスへ。軽自動車から高級輸入車まで幅広くニューモデルの情報を網羅し、近年はWEBメディアを中心に寄稿。ドライビングスクール等のインストラクターも務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
VW パサート オールトラック TDI 4モーション アドバンス(7速AT・DSG)
■全長×全幅×全高:4785×1855×1535mm
■ホイールベース:2790mm
■車両重量:1760kg
■エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
■総排気量:1968cc
■最高出力:190ps/3500-4000rpm
■最大トルク:40.8kgm/1900-3300rpm
■サスペンション前/後:ストラット/4リンク
■ブレーキ前/後:Vディスク/ディスク
■タイヤ前後:245/45R18
■新車価格:552万9000円-604万9000円(パサート オールトラック 全グレード)