輸入車
更新日:2022.02.25 / 掲載日:2022.02.25
再上陸を果たした韓国ブランドHYUNDAIのあなどれない実力【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ヒョンデ
最近の自動車業界の話といえば電動化がメインになりますが、日々送られて来るリリースを読む限り、各社奮闘しているのがわかります。特にBEVに関してはそう。専用プラットフォームの開発には膨大な費用がかかります。
そんな中、国産でもなく欧米でもない、第3のメーカーが我々の前に名乗りを上げました。HYUNDAIです。漢字では“現代”、英語では“HYUNDAI”、カタカナでは“ヒョンデ”と書き、発音します。かつて日本で販売していた時は文字通り“ヒュンダイ”でしたが、今回の再上陸を機に名称変更しました。時計でもロレックスの兄弟ブランドTUDORがかつて“チュードル”で売られていましたが、今は“チューダー”になりました。英語読みってやつですね。ちなみに、ヒョンデは本国読みのようです。
再上陸は名前だけでなく、ラインナップも前回とは全く異なります。目の前に現れたのは、BEVとFCEV。FCEVとは水素タンクを積んだ燃料電池車です。名前は「IONIQ 5(アイオニックファイブ)」と「NEXO(ネッソ)」となります。今回はガソリンエンジンやディーゼルエンジンの展開はありません。そういえば、「ソナタ」ってモデルはどうなったんでしょうね? 2005年頃かな、TV番組「冬のソナタ」を広告に使っていたのをぼんやり覚えています。
それはともかく、こうしたモデルに特化したのは彼らの電動化戦略にあります。2025年にはバッテリー及び燃料電池EVの世界トップ3メーカーのひとつになることを宣言しました。2030年にはヨーロッパで100%電動化のラインナップを揃え、2040年にはヨーロッパのみならず世界の主要都市でそれを達成する目標です。かなり本気ですね。それにしても世界トップ3のひとつというのはわかりますが、他の2つはどこなんでしょう? メルセデスあたりなんですかね。そうなるともうひとつはアウディ?トヨタ?

では、実際に走らせた印象はどうなんでしょう。まずはBEVの「IONIQ 5」ですが、このクルマはBEV専用のプラットフォームE-GMP(エレクトリック・グローバル・モジュラー・プラットフォーム)から成り立ちます。そこに大容量リチウムイオン電池を敷き詰めモーターで駆動します。ユニークなのはリアモーターのリア駆動をベースに、フロントアクスルにもモーターを装着したAWDをラインナップするところ。リアモーターのEVと聞くとホンダeを思い出します。確かに、このクルマもRWD車はボンネット下に深さのあるトランクがありました。
デザインも特徴的です。“パラメトリックピクセル”というデザインキーで仕上げられたボディは未来的で個性的。特にリアテールライト周りは未来度MAXな感じです。真横からの雰囲気はアウディに似ていますが、それは同じベクトルを向いているからでしょう。デザインにインテリジェンスと洗練さを感じます。
それでは走った印象ですが、正直かなりいい感じです。出だしからバッテリーユニットの重さはほぼ感じなく、軽快に走り出します。またアクセルに対する加速がリニアで、ガソリンエンジン車と変わらぬ感覚で走らせられます。このフィーリングはメルセデスのEQシリーズやアウディのe-tronシリーズに近いと思います。もしかしたらそれよりもナチュラルかも。ちょっと驚きです。一充電走行距離618キロがリアルであればかなり実用的ですし、BEV探しの方のショッピングリストに入るような勢いですね。

次に乗ったNEXOも予想以上にグッド。見た目は流行りのSUVデザインという感じですが、走りはFCEVであることを鑑みると驚きです。3本の水素タンクを床下に並べているとは思えないスポーティな走りでした。山道では左右に揺さぶるステアリング操作に対し、若干ロールしながらキレイにラインをトレースします。ボディ剛性が高いのでしょう、コーナーが続いても逆に揺さぶられるようなことはありません。
それにこちらもアクセルに対する加速が自然で気持ちがいいのは特筆ポイント。EV特有のピーキーなトルクの立ち上がりに閉口するシーンはありませんでした。駆動方式はFWDのみという設定。リアアクスル周辺にはタンクがありますから、AWDは難しそうです。
ただ、NEXOのインテリアは正直あまり先進的ではありません。こちらは80年代のガソリン車を未来的にしたようなイメージ。センターコンソールのスイッチの多さが目立ちます。ちょっとゴチャゴチャし過ぎかな。もちろん好みの方もいらっしゃるでしょうが。
なんてのが、新生ヒュンデとのファーストコンタクト。クルマが思ったよりいいので興味を持ちました。今後の展開もまた追ってレポートします!