新車試乗レポート
更新日:2022.07.14 / 掲載日:2022.07.12

新型ステップワゴン公道試乗

待ちに待ったリアルワールドでの実力チェック! 
ようやく新型ステップワゴンを公道で試乗するチャンスがやって来た。
最近のホンダ車は“和み”とも表現できる
リラックスした乗り心地が魅力だけに興味津々だ。
真向ライバルとなるノア/ヴォクシーとセレナとの
比較も交えながらインプレッションをお届けする。

●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之

ちょうどいい! これがいい! リアルワールドでの走り抜群!

HONDA 新型ステップワゴン 公道試乗リポート

ほっこりできる安心感
自然体の良さが魅力だ
 2ℓ級ミニバンでは後発だったステップワゴンも新型で6代目となる。低床低重心を売りに走りのよさをアピールした3代目を除けば、「家族や友人と楽しく遊ぶ」を基本コンセプトにしてきた。その濃度は代によって異なるものの、初代の寝心地良好のフルフラットシートや2代目のステップコンポ(折り畳み自転車)、先代の「わくわくゲート」などライバル車とは一味違った楽しみの広がりや使い勝手にも積極的だった。
 そういった意味では新型は飛び道具的なアピール要素はないが、ファミリー&レジャーの基本に立ち返った意気込みが感じられる。生成りのよさみたいな印象だ。
 走りについていえば、スペック面では先代の改良型の感も強いのだが、ゆえに好印象でもある。
 美点のひとつはフットワークだ。ロールの使い方が上手だ。4輪の接地バランスの安定という意味もあるが、注目は乗り心地。ロールが少なく、横G(旋回力)の立ち上がりが早いと乗員は頭を振られる感覚が強くなる。山岳路だけでなく高速での車線変更や直進の揺らぎも同様だが、ステップワゴンは穏やかにロールで往なすため体感する横Gの急激な変化が抑えられている。揺すられ感の少なさは快適性の要点でもあり、とくにセカンド/サードシート乗員の居心地への影響が大きい。
 挙動面では「頭の重さ」を意識させられるタイプ。高全高/高重心の1BOX型を意識してしまうが、ストロークが深くなるほど抑えが利き、収束や据わり共に良好なので操安を害することもない。
 ただ、切れ味や軽快感を求める向きには締まりのないハンドリングと感じるかもしれない。確かに回頭反応のメリハリには欠くものの、ライントレースのコントロール性は良好だ。修正舵も少なく狙ったラインに乗り、路面うねりや加減速による乱れも少ない。穏やかだが曖昧さはなく、高速コーナリングでの安心感も高い。シャシーで安定性を確保し、アジャイルハンドリングアシストでコントロール性を向上させる、最近のホンダ車らしい特性だ。初めての道でも気楽に走れるタイプである。
 最近の2ℓ級1BOX型のフットワークの流れは快適性が基本になっている。高速操安寄りだったノア/ヴォクシーも新型でしなやか感アップ。現行型ではやや操安志向になったが、和み系乗り味はセレナの見所。傾向としてはいずれも同方向であり、操安と乗り心地でステップワゴンが傑出しているとまでは言い難いが、安寧型のフットワークが同車の見所のひとつなのは間違いない。
 パワートレーンは1.5ℓターボとe:HEVの2タイプ。性能的には前者が標準、後者がプレミアム設定となる。電動特有のトルクを活かしたe:HEVが低速から高速まで余力で上回る。一般的な電動車が苦手な高速域での加速性能も1ランク上。少々、エンジンが稼働し過ぎる嫌いはあるものの、多人数乗車でも余裕十分。また、穏やか運転ではエンジン直動巡航(パラレル制御)にも入りやすく、巡航時の余力感も良好だ。
 機構的に少し似たシリーズ式のセレナe-POWERと比較すると、直動機構作動時の巡航時の余力感だけでなく、純電動のシリーズ制御時もトルクフルな印象。速度が高まるほど加速性能はステップワゴンに分がある。
 標準設定となるターボもまとまりがいい。最大トルクはNA2ℓ相応だが、2000回転以下から大きなトルクを立ち上げ、急加速でも4000回転を超えずにこなす。加速に移行した時のダウンシフトは早めだが、高負荷加速での回転上昇は少なめ。速度と回転数の変化も自然であり、トルクに乗せた伸びやかさもある。
 NA2ℓとは思えない余力感を示すノア/ヴォクシーと比較すると巡航と緩加速時の余力感や軽負荷でのエンジン回転数の安定で及ばないものの、高速流入や登坂加速でのゆとりは一枚上手。燃費の面では分が悪いが、加速性能は2ℓ級のミニバンでは頭ひとつリードしている。
 1BOX型の本質に徹底、と記すと少々大袈裟だが、車両感覚が掴みやすく死角の少ない内外装デザインなど、楽しく過ごすための実を集めたモデルの印象がある。正常進化となった走りについても同様だ。内外装も走りもあざとい演出がなく、機能面でも突出したものがないため、印象に残りにくい点は否定できないが、自然体で過ごせる馴染みよさは新型ステップワゴンの大きな長所である。

ステップワゴン AIR(4WD・7人乗り)

●車両本体価格:324万600円 ●ボディカラー:プラチナホワイト・パール(有料色3万8500円高)

■主要諸元:ステップワゴン AIR(4WD・7人乗り)
●全長×全幅×全高(㎜):4800×1750×1855 ●ホイールベース(㎜):2890 ●車両重量(㎏):1790 ●パワートレーン:1.5ℓ直4ターボ(150PS/20.7㎏・m) ●WLTCモード燃費(㎞/ℓ):13.3 ●サスペンション前/後:マクファーソン式/ド・ディオン式 ●ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●最小回転半径(m):5.4 ●燃料タンク容量(ℓ):52(レギュラー) ●タイヤサイズ:205/60R16

標準パワートレーンのターボ車も滑らかな加速感で必要十分以上の実力!

ターボならではの太いトルクは低回転域からも感じられる。スペック以上に滑らかな加速を味わえるはずだ。ストップ&ゴーが多い市街地でもストレスは少ない。

ステップワゴン e:HEV SPADA(FF・8人乗り)

●車両本体価格:366万3000円 ●ボディカラー:プラチナホワイト・パール(有料色3万8500円高)

■主要諸元:ステップワゴン e:HEV SPADA(FF・8人乗り)
●全長×全幅×全高(㎜):4830×1750×1845 ●ホイールベース(㎜):2890 ●車両重量(㎏):1830 ●パワートレーン:2ℓ直4(145PS/17.8㎏・m)+モーター(135kW/315Nm) ●WLTCモード燃費(㎞/ℓ):19.6 ●サスペンション前/後:マクファーソン式/車軸式 ●ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●最小回転半径(m):5.4 ●燃料タンク容量(ℓ):52(レギュラー) ●タイヤサイズ:205/60R16

電動走行がもたらすスムーズかつ力強い走り

モデルを変えて高速道路でも試乗を行った。巡航状態になればe:HEVの特徴でもあるエンジン直動状態に移行。モーター駆動とエンジン駆動の切り替わりは注意をしていてもわからないほどスムーズだ。
スパーダは押し出し感を強めたエクステリアになっているが、品よくまとまっているのが好印象。エアーとの選び分けは好みと装備差になりそうだ。

ステップワゴン e:HEV SPADA PREMIUM LINE(FF・7人乗り)

●車両本体価格:384万6700円 ●ボディカラー:スーパープラチナグレー・メタリック(有料色3万8500円高)

最上級グレードのプレミアムラインにも試乗。パワートレーンはe:HEVとターボが選べ、4WDはターボに設定されている。

個性際立つアクセサリー装着車にも注目!

AIR「SPORTS MIX」

SPADA「EMOTIONAL SOLID」

MUGEN STEP WGN

スポーティな走りを予感させる無限バージョン。フロントグリルやエアロに注目!

福祉車両

ホンダ車ならではの低床構造を活かした福祉車両。スローパーや後席乗員の乗降をサポートするモデルも揃える。

新型ステップワゴン おすすめグレード&価格

 ステップワゴンのコンセプトや内外装の雰囲気に似合うのはベーシックグレードのAIR(エアー)。コスパに優れシンプルな使い勝手のよさが見所。BSMがスパーダ以上に限定されるのが惜しいが、グレード価格差を利用してパワートレーンをe:HEVにアップするのもいい。スパーダとスパーダプレミアムの主な違いは内外装のプレミアム感。シートヒーター設定の違いはあるが大きな差異はなく、嗜好的な側面で選び分けてもいいだろう。

e:HEV AIR(FF・7人乗り)
●車両本体価格:338万2500円

ガチンコライバル

ステップワゴンが大善戦! 次期型への期待が高まるセレナ
 ハイブリッド車の動力性能では低速側でステップワゴン、高速側でノア/ヴォクシーがリード、総合評価ではいい勝負だろう。ただし燃費はノア/ヴォクシーが圧倒的だ。WLTC総合燃費は4WDモデルでも22㎞/ℓを超える。ガソリン車はステップワゴンがパワフルな印象。セレナもe-POWERなら別格だが、マイルドハイブリッド車で比べると余力感も加速のキレも今ひとつ。ノア/ヴォクシーは巡航から緩加速でのコントロール性がよく、余力感もたっぷり。穏やかな力強さならステップワゴン以上だ。フットワークは切れと乗り心地の両立ではノア/ヴォクシーに、和み感ではセレナに分があるが、穏やかさと安心感も含めればステップワゴンのバランスのよさが際立つ印象だ。

TOYOTA ノア/ヴォクシー

●価格帯:267万〜389万円/309万〜396万円

NISSAN セレナ

●価格帯:257万6200〜380万9300円

歴代ステップワゴン ミニヒストリー

 2ℓ級ミニバンでは最大級のキャビンを備えて初代が誕生した。シートのホールド性に少々難はあったが、平面形状と柔らかなクッションによるフルフラット時の寝心地など車中泊にも対応しやすい設計が特徴だった。2代目は基本コンセプトを踏襲し、レジャー用途での実用性を重視した設計を採用。3代目では低床低全高による走りのよさをセールスポイントとし、個性的なエクステリアに変身。歴代でも最もドライバー志向の強いモデルとなった。そして4代目では再びファミリー&レジャー向け路線に回帰。5代目となる先代ではその傾向をさらに強め、新たな提案として「わくわくゲート」を新設定。また、同モデルからe:HEVが採用されている。

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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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