新車試乗レポート
更新日:2022.10.05 / 掲載日:2022.08.15

新型フェアレディZ 速攻試乗!V6ツインターボの走りを先取り解説

7月15日に北海道のテストコースにて幸運にも先行試乗の機会を得た新型フェアレディZ。
初代を彷彿させるファストバックスタイルがクラシカルで目を引くが、その走りは温故知新。
FRスポーツの次元をひとつもふたつも押し上げた!

「新型ZはFRスポーツの魅力を堪能できる秀逸なスポーツモデル!」今回テストドライブを行ったのは、本誌メインライター川島茂夫だ。

●文:川島茂夫 ●写真:日産自動車(株)

NISSAN 新型フェアレディZ 先取り試乗インプレッション

V6ツインターボの豪快な走り!! 最新技術でFRスポーツを昇華!!

Zイズムを強烈にアピール
FRスポーツは面白い!
 7代目となる新型Zはプラットフォーム面では先代の延長上であり6代目のビッグMCともFMCとも位置付けできるのだが、「Zイズム」の濃さでは2代目以降の頂点に達しているのは間違いない。
 初代(S30型)をモチーフに現代的に仕立て直し。ファストバックはZらしさの象徴だ。効率的高性能化ではなく、Zらしさを維持しながら足りないところを補う、そんなこだわりに満ちた内外装だ。試案では中央に約3cm幅の横桟を入れたものもあり、それはさらにS30型のイメージが濃い。しかし、冷却熱容量が決定的に不足。残念ながら廃案になったという。
 その原因となったのが405PSの最高出力を発生するVR30DDTT。スカイライン400Rにも搭載されているエンジンだが、とにかくトルクフル。しかもレブリミット近くまで満遍なく太い。6速MT車でゆるりと発進させて2000回転を超えたところで全開。過給ラグを僅かに感じるものの3000回転を超えるくらいから275/35R19のリヤタイヤを押し切ってホイールスピンを発生。笑ってしまうほどの大トルクだ。
 過給ラグは回転数が上がるほど減少するが、中間アクセルでのコントロールではほとんど意識しない。4000回転近く回していれば使い切れないほどのトルクまで素直に追従する。付け加えるなら実際に全開が可能なのは直進時あるいは超高速域くらいのもの。大横Gのコーナリング中は持てるパワーの半分も使わない。そこでのコントロール性のよさに感心させられる。力持ちであっても粗暴でない。繊細なコントロール性は同エンジンの見所のひとつだ。
 クリッピングポイントからアクセルをじわりと踏み込む。ラインに乗せながら旋回力と加速力の合力が一定になるようにアクセル制御。後輪に乗った感じでラインを彫り込むようなコントロール性と挙動はFRの心地よさそのもの。エンジンの追従性の高さもその大きな要素になっている。
 ハンドリング特性で言えば、トラクションを掛けている時のまとまりはいいが、定速や緩い減速時の回頭と旋回力の立ち上がりは少々過敏。高速直進時も含めて操舵角の安定を意識する必要があった。ちなみに前後同タイヤサイズの18インチ仕様だと過敏さは減るが、挙動の締まりも低下。FR感たっぷりなのは共通しているが、挙動は少々オーバーアクション。19インチ仕様よりパワーに振り回されやすいが、それはそれで楽しいと感じる面もある。
 もうひとつの性能面の注目はAT。新たに開発された9速型を採用。ATはスカイライン400Rとの大きな差異のひとつである。1-6速はMT車同等減速比で7-9速は巡航用という設定。加速に全振りではないのだが、現状でもシフト時のタイムラグやアクセル制御の違いで全開発進加速ではMT車を上回るとのこと。変速の歯切れよさでマニュアル変速も心地よく、レブリミットまできっちり使える。高速巡航の余力感や静粛性、燃費も良好。これも現代ならではのZらしさである。
 サスチューンはスカイライン400Rより硬いとのことだが、挙動のしなやかさはスカイライン以上の印象。ストローク速度は抑制されているがサスの動き出しは滑らか。どのタイヤに荷重を掛けているか4輪の負荷バランスが分かりやすいのがいい。ドライバーの感受性に沿った挙動とも言える。
 サーキットでの試乗だったが、絶対的な速さや理論的に正しい性能を追求するだけではなく、スポーツカーの理想を踏み外したような、ヤンチャな走りも楽しめる二面性も魅力。ドライバーの技量や知識を試されるような部分もあり、それもZとの対話感。無邪気に楽しいと思えるのがZなのである。

ドライビングに没頭したくなる! クルマ側からの情報伝達が絶妙だ

 MTにはダウンシフトの回転合わせ機能があるし、かなり電子制御デバイスを使っているのだが、それを意識させない。エンジンやミッションやサス等で何が起こっているかそれとなく伝えるのが上手だ。サス設定は当然硬めなのだが、動き出しがしなやかなためクルマの挙動をつかみやすい。405PSのエンジンも速さの追求というより、楽しめる領域の拡大狙いの印象でドライビングに集中しやすいのが魅力だ。

NISSAN 新型フェアレディZ

●発表(最新改良):’22年1月14日(’22年4月25日)
●価格:524万1500円〜646万2500円
●販売店:ニッサン全店
●問い合わせ先:0120-315232(日産自動車お客様相談室)

主要諸元
(フェアレディZ バージョンST・6MT)
●全長×全幅×全高(mm): 4380×1845×1315 ●ホイールベース(mm):2550 ●車両重量(kg):1590 ●パワートレーン:2997ccV6DOHCツインターボ(405PS/6400rpm、48.4kg・m/1600〜5600rpm) ●トランスミッション:6MT ●最小回転半径(m):5.2 ●WLTCモード燃費(km/ℓ):9.5 ●燃料タンク(ℓ):62(プレミアム) ●サスペンション前/後:ダブルウィッシュボーン/マルチリンク ●ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●タイヤサイズ前・後:255/40R19・275/35R19

※記事公開時にFFのみと記載しておりましたが誤植でした。FRの間違いです。お詫びするとともに訂正いたします。
405PS/48.4㎏・mの大パワーを絞り出す2997㏄V6ツインターボエンジン。最新の電子制御デバイスと組み合わされ、扱いやすさも併せ持つ優れたパワーユニットだ。
タイトにまとめられたコックピット。スポーツ色は強いが、各部の造り込みはとても丁寧だ。ソフトパッドのステッチなども上質感たっぷり。
標準グレード以外は本革・スエード調ファブリックのコンビ表皮。シートヒーターも完備。
ディープコーン仕様の3本スポークステアリングが正統派スポーツモデルを主張する。
大きな開口部のラゲッジ。決して容量が大きいわけではないが、日常用途なら十分だろう。
12.3インチカラーディスプレイメーター。ナビゲーション情報などを大きく表示することも可能。
歴代の特徴でもある3連メーターを踏襲。右からブースト計、ターボ回転計、電圧計だ。

新型フェアレディZを堪能できるおすすめグレード

バージョンST

オーバーアクション気味の挙動や405PSのパワーを生々しく味わうなら標準仕様のMT車を選ぶのもアリ。ただ、限界まで含めたフェアレディZらしい操る楽しさと速さ、ツーリング適性のすべてを求めるならシリーズ最高価格になるもののSTのAT仕様がオススメだ。

この記事の画像を見る

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

内外出版/月刊自家用車

オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

この人の記事を読む

オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ