新車試乗レポート
更新日:2022.10.14 / 掲載日:2022.08.23

新型日産エクストレイル試乗!e-POWER+VCターボの走りを完全解剖

NISSAN 新型エクストレイル完全解剖

【1】コンセプト&プロフィール
【2】ファーストインプレッション
【3】エクステリア
【4】インテリア
【5】シャシー&パワートレーン
【6】装備&ユーティリティ/まとめ
【7】コンプリートカー&アクセサリー
【8】ライバル先取り対決

「タフギア」を合言葉に存在感を示し続ける人気SUV・エクストレイルがフルモデルチェンジ。4代目となる新型には、可変圧縮比のVCターボや電動制御のe-4ORCEなど、国内初搭載の日産独自技術が投入される。早速、最新ミドルSUVの実力を解明していこう。

●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久

ファーストインプレッション

クローズドコース内ではあるが、いち早く試乗の機会を得た。まったく別物のメカニズムを新たに採用した、新世代の走りとは——。

ミドルクラスの実践的SUVに新基準をもたらす

走りの質が大幅に向上
快適かつ安心な走りだ

 ひと言でまとめてしまえば「アリアのシリーズ式ハイブリッド版」と言える。先進イメージならBEVだが、電動の使い方も走りの磨き込みもこちらが一枚上手の印象。設計時期を考えるならエクストレイルがより熟成されていてもおかしくないのだが、日産にとってBEVが電動技術の頂点ではなく、BEV/HEVにかかわらず、最新の技術や思想を導入して電動技術の熟成を図っているのは理解した。ちなみにアリアの4WDモデルは市販されていないので新型エクストレイルの4WD車がe-4ORCEの幕開けモデルとなる。
 試乗車は4WDの標準車とオーテック。内外装及び装着タイヤサイズが異なっているが、パワートレーンは共通である。
 ノート系とは電動力が段違い。初の高性能型e-POWERだからその凄みを実感、とならないのが最近の日産電動車の傾向だ。新型エクストレイルも例外ではなく、低中速での全開では背中に掛かる圧を感じるほどの加速を発揮するが、パワーに振り回される感は皆無。停車から極低速、巡航速度維持の微妙なアクセル操作も自然体でこなせる。加速では狙い通りに加速度と速度をコントロールできるし、実用域と急加速域のつながりも滑らか。大まかにはノート系やサクラと似た制御特性だが、ペダルストロークの深い部分での加速上乗せが異なるので、速度によるドライバビリティの変化はさらに少なくなっている。
 元気に走らせていれば、消費電力を補うべくエンジンが稼働。エンジン稼働時間を長めに取り、速度変化と連携した制御やロードノイズが大きな状況で積極的に充電するというのはノート系に準じている。ただ、エンジンフィールがまったく異なる。
 可変圧縮比のリンク機構がカウンターウェイトにも似た役割をすることやクランク回転速に対するピストン速度の安定等の効果により、エンジンの回転感覚は限りなくV6に近い。大排気量多気筒的重質な味わいもある。吸排気音も穏やかであり、3気筒特有のパルス感も少ない。エンジンを停止した電動走行の静粛性はe-POWERの魅力のひとつだが、VCターボ+e-POWERにとって、エンジン稼働走行時の車格感は見所のひとつ。エンジンフィールを楽しみたくなるハイブリッド車なのだ。
 従来のe-POWER車がセールスポイントとするe-ペダルは、もちろん新型エクストレイルにも採用。モードによりエンブレ回生時の回生制動量を変更し、唐突なペダルオフでも滑らかに減速Gが立ち上がるなど、扱いやすく洗練感を高めた最新仕様となっている。ただし他のe-POWER車と異なり、フットブレーキには回生と連動した電子制御型を採用しているので、e-ペダルオフでも燃費には基本的に影響しない。電子制御ブレーキ非採用はe-POWER車の泣き所でもあったが、新システムでライバル車と同等となった。
 操安性もまたe-4ORCEの見所のひとつだ。トルク分配の精密制御でハンドリング特性を自在に作り込める。新型が求めた操安性は安心楽々運転である。操舵初期の回頭反応が早く、車重やサイズをあまり感じさせないのだが、定常円旋回では深めの舵角を維持。増し切りでのラインの絞り込み等々でもこの「深め」を維持するのが凄い。タイヤのスリップアングルや4輪の接地バランスの変化が極めて少なく、タイトターンも高速コーナリングもスプーンコーナーも同じような感覚で扱える。細かな修正やハンドリングの勘所に神経を使う必要がない。
 当然、車体挙動も安定している。体感横Gの変化を穏やかにするロール使いもあって、S字コーナーでの素早い切り返しでも乗員に掛かる負担は少ない。
 今回の試乗では試せなかったが、後輪駆動容量や電動ならではの精密制御を考えればハードクロカンでの踏破性も期待できるはず。従来車以上は当然として、乗用車型プラットフォームのミドルSUVではトップクラスとなる可能性が高い。
 キャビンスペースやユーティリティは従来車の延長上であり、基本適応用途も大きく変わらないが、走りのゆとりと質、オン/オフロードの走りの汎用性は長足の進歩といっても過言ではない。実践力の高いミドルSUV選びの新たな基準器と言えよう。

新型エクストレイル X e-4ORCE(2列シート)

●車両本体価格:379万9400円 ●ボディカラー:シェルブロンド/スーパーブラック 2トーン(有料色:5万5000円)

●主要諸元(エクストレイルX e-4ORCE・2列シート)
●全長×全幅×全高(㎜):4660×1840×1720 ●最低地上高(㎜):185 ●ホイールベース(㎜):2705 ●最小回転半径(m):5.4 ●車両重量(㎏):1850 ●パワートレーン:1497㏄直列3気筒DOHCターボ(106kW=144PS/250N・m=25.5㎏・m)+前モーター(150kW/330・m)+後モーター(100kW/195N・m) ●トランスミッション:1段固定式 ●WLTCモード燃費(㎞/ℓ):18.4 ●燃料タンク(ℓ):55(レギュラー) ●タイヤサイズ:235/60R18

新型エクストレイル AUTECH e-4ORCE(3列シート)

新旧比較

従来モデル

HVシステムも駆動制御も
新型とは隔世の感あり

 従来型にもハイブリッド車をラインナップしていたが、システムはまったく異なり、2クラッチ1モーターのパラレル式を採用。主駆動力をエンジンで賄い、電動モーターにより駆動補助や回生充電を行う。動力性能もエンジンとミッションの基本性能によるもので、トルクの精密制御などの電動の利点も部分的な活用に収まっている。走らせてみても従来車は余力が多少増した2ℓ車の領域に収まり、4WDの制御も含めてガソリン車とのドライブフィールに大きな差異はない。
 また、4WDと組み合わせたVDC制御で向上した操安性も確かに高水準だが、これもe-4ORCEとは出来のレベルが異なる。

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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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