新車試乗レポート
更新日:2023.05.09 / 掲載日:2022.12.01

【ボルボ C40 リチャージ】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】

文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス

 欧州や中国では、クルマを取り巻く環境や政府の補助金政策なども追い風となり、EV(電気自動車)のセールスが急進。対する日本も、普及はまだまだこれからという状況ながら、補助金の充実や新しいEVの登場&上陸など、EV関連のニュースが次々とメディアをにぎわせている。そうした状況もあり、「そろそろかな」とEVが気になり始めている人も案外多いのでは?

 とはいえエンジン車とは異なり、EVの所有はハードルが高いのも事実。航続距離や充電効率、使い勝手などは車種によって大きく異なるため、どんなモデルが自分にとってベターな選択なのか、見分けるのがまだまだ難しい。

 本連載は、EVや自動運転車といったクルマの先進技術に造詣が深い自動車ジャーナリスト・石井昌道氏の監修・解説の下、各社の注目モデルを毎回、同様のルートでテスト。実際の使用状況を想定した走行パターンでチェックすることで各モデルの得手不得手を検証し、皆さんの“EV選びの悩み”を解決することを目的とする。

  今回フォーカスするモデルは、ボルボ「C40リチャージ プラス シングルモーター」。EV専業ブランドへのシフトを宣言したボルボが手がける普及版のEVは、果たしてどんな実力の持ち主なのだろうか?

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C40リチャージ プラス シングルモーターのプロフィール

C40リチャージ プラス シングルモーター

 先ごろ本国で発表したラージSUV「EX90」を皮切りに、毎年1台ずつ新しいEVを発表していくとアナウンスしたボルボ。

 ボルボはすでに「2030年までにEVのみの販売を目指す」という野心的な契約を発表済みで、2040年までに“クライメート・ニュートラル”な企業になるというさらに高い目標も掲げている。ちなみにクライメイト・ニュートラルとは気候中立の意味で、製造工程などの活動によって排出する温室効果ガスを、その吸収量やその他の削減量を差し引いて実質ゼロにするという取り組みだ。

 そんなボルボがEV専用モデルとして日本市場で展開するのが「C40リチャージ」。そのルックスなどから明らかなように、C40リチャージは「XC40」のクーペバージョンで、プラットフォームをはじめとする車体の基本構造はXC40のEVバージョンと共通だ。

“CMA(コンパクトモジュラーアーキテクチャ)プラットフォーム”はEV専用ではないものの、設計の初期段階からEV仕様を考慮して開発されたもの。EVバージョンはフロントセクションやフロア構造が専用設計となっている。そうした甲斐もあって、C40リチャージはフロア下に大容量バッテリーを搭載するものの居住性はほぼ犠牲になっていない。

 EVであることはもちろんだが、C40リチャージはそのクルマづくりにおいても注目すべき点が多い。例えば、環境への影響を配慮し、インテリアのマテリアルから本革を排除。ステアリングホイールやシートの表皮には、一部にリサイクル材を配合した合成レザーが使われる。また、インフォテイメントシステムのOSにGoogleのAndroidを採用し、各種操作を音声で行えるようにするなど、コックピットのデジタル化も推進している。

 フロントとリアにそれぞれモーターを搭載したツインモーター仕様と、フロントモーターだけで駆動するシングルモーター仕様の2種類が用意されるC40リチャージだが、今回の試乗車は後者の方。モーターの最高出力は231ps、最大トルクは33.6kgmを発生し、0-100km/hタイムは7.4秒と必要十分の速さを披露する。

 ちなみに、C40リチャージ プラス シングルモーターのバッテリー容量は69kW。これにより、1回の満充電で502kmという航続距離(WLTCモード)をマークする。

■グレード構成&価格

・「プラス・シングルモーター」(659万円)

・「アルティメット・ツインモーター」(759万円)

■電費データ

<C40リチャージ プラス シングルモーター>

◎交流電力量消費率

・WLTCモード:159Wh/km

 >>>市街地モード:136Wh/km

 >>>郊外モード:149Wh/km

 >>>高速道路モード:177Wh/km

◎一充電走行距離

・WLTCモード:502km

【高速道路】電費に有利なシングルモーターの特性が現れたデータ

 11月になって寒い日が増えてきたが、テスト当時は比較的に暖かく、朝5時台でも気温は11℃。それでもヒーター稼働の影響でやや電費が悪化するだろうという状況だった。東名集中工事の期間だったのでいつもよりも早く、真っ暗のなかでスタートしたところ、交通量が少なく、その1~その3までは、ほぼ制限速度前後で走行できた。いつもより平均速度が高く、電費としては正確に=辛めに出たかっこうだ。その4だけは交通量が普段並に多く、平均速度が下がった。

 結果は制限速度100km/h区間のその1が4.8km/kWh、その4が5.7km/kWh、制限速度70km/h区間のその2が6.0km/kWh、その3が6.1km/kWh。今回のモデルはシングルモーターのC40だが、以前にテストしたツインモーターのC40はその1が5.2km/kWh、その4が4.4km/kWh、その2が6.4km/kWh、その3が6.3km/kWh。ツインモーターのときはその1、その2、その3が交通量が多くて平均速度が下がって電費が甘く出て、その4だけが制限速度付近で走れる時間が長かった。シングルモーターとツインモーターではWLTCの高速モードでの電費が15%ほど違うが、交通状況が異なったため、比較がしにくいデーターとなってしまった。それでもシングルモーターのその1とツインモーターのその4はともに制限速度100km/h区間で10%ほどの差が出ている。ツインモーターのテストは5月でヒーターはほとんど稼働していなかったことを加味すれば、妥当なところだ。

【ワインディング】上りでの消費電力はツインモーターとほぼ同等。回生能力は同クラスのなかで優秀

 前回は貸し切りで走れなかった箱根ターンパイクだが今回は無事に走行。約13kmの距離で963mも標高差があるここは、テストには貴重な舞台だ。登りの電費は1.7km/kWh。ツインモーターは1.8km/kWhで、ほぼ同等かわずかに劣るというデータだが、ヒーターの影響があるようだ。気温はスタート地点で12℃、標高の高いゴール地点で10℃。ツインモーターのときはスタート地点23℃、ゴール地点15℃だった。

 下りでは電費計からの推測で3.4kWh分を回生。ツインモーターは3.75kWhとなっている。前後にモーターを持つほうが回生効率がいいだろうこと、ヒーターの影響で差がついたものと思われる。これまでテストしてきたモデルのなかではまずまず優秀な部類ではある。

自動車専用道路である箱根ターンパイク(アネスト岩田ターンパイク)を小田原本線料金所から大観山展望台まで往復した

【一般道】ツインモーターよりも良好な電費データを記録

 

 一般道での電費は6.3km/kWhでツインモーターの4.2km/kWhを33%も上回った。WLTCでの市街地モードの差は20%ほどだが、それ以上に差がついたことになる。車両重量2000kg前後のモデルのなかで優秀な部類だ。

 平均速度の差はほとんどないものの、信号のタイミングや周囲の交通状況で電費が変動しやすいのが一般道であり10%程度のバラツキは珍しくはない。ちなみに気温は20℃前後まで上昇していてヒーターの負荷はほとんどなくなっていた。WLTCでの市街地モードは7.4km/kWhで達成率は85%ほどとなる。

東名横浜青葉ICから環八の丸子橋まで約22kmの距離を走行した

【充電】充電効率は高く、ロングドライブも安心して出かけられる

海老名SAでの急速充電テスト ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません

 スタート時のバッテリー残量は94%、走行可能距離は310km。そこから149.2km走って復路・海老名サービスエリアに到着したときには50%、180kmとなっていた。出力40kWの急速充電器を30分間使用して18.1kWhを充電。76%、270kmまで回復した。出力は終盤でも37kWほどだったのでほとんどロスなく充電できていた。

 満充電からスタートすれば200km程度のドライブならば無充電でも問題なく、40kWの急速充電をはさめば300~400kmでも不安を感じることはないだろう。急速充電する場所のあたりをつけておけば、それなりのロングドライブも臆することはないはずだ。

前席とのゆとりはかなりあるが、センタートンネルの関係で若干横方向のゆとりは少ない。頭上スペースは若干狭く感じられた

C40リチャージ プラス シングルモーターはどんなEVだった?

テストを監修した自動車ジャーナリストの石井昌道氏

 ボルボ初のBEVであるC40。日本では約1年前に、まず100台限定・サブスクリクションキャンペーンというカタチで導入され、倍率5倍以上と人気だった。2022年1月からはカタログモデルとして販売されているが、あいかわらず人気のようだ。環境意識の高い北欧のブランドということでBEVとのマッチングがいいようだ。今回テストしたシングルモーターでも一般的な使用ならば十二分な性能であり、ツインモーターよりも電費がいいのもメリットだ。

C40リチャージ プラス シングルモーター

■全長×全幅×全高:4440×1875×1595mm

■ホイールベース:2700mm

■車両重量:2000kg

■バッテリー総電力量:69kWh

■定格出力:80kW

■最高出力:170kW(231ps)/4919-11000rpm

■最大トルク:330Nm(33.6kgm)/0-4919rpm

■サスペンション前/後:ストラット/マルチリンク

■ブレーキ前/後:ディスク/ディスク

■タイヤ前/後:235/50R19/255/45R19

取材車オプション

プレミアムメタリック・ペイント、ボルボ・ドライブレコーダー(フロント&リアセット)

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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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