新車試乗レポート
更新日:2023.01.11 / 掲載日:2023.01.10
新型日産セレナ先行試乗!進化したe-POWERで走行性能が向上!
ライバル勢に先行されたことで、少し苦戦が強いられていたセレナだが、11月28日待望のフルモデルチェンジを発表! ご自慢の最先端装備と機能に磨きをかけて登場した新型は、走りもイケてるミドルミニバンに変貌していたのだ。
●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久

NISSAN 新型セレナ先行試乗

セレナ e-POWER LUXION
価格:479万8200円
■主要諸元(e-POWER LUXION)
●全長×全幅×全高(㎜):4765×1715×1885 ●ホイールベース(㎜):2870 ●車両重量(㎏):1850 ●パワーユニット:1433㏄直3DOHC(98PS/12.5㎏・m)+モーター(120kW/315Nm) ●WLTCモード総合燃費:18.4㎞/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)ベンチレーテッドディスク(R) ●サスペンション:ストラット式(F)トーションビーム式(R) ●タイヤ:205/65R16
駆動モーターの出力向上で
力強さが大幅にパワーアップ
ファミリー&レジャー向けの親しみやすいミニバン。「フレンドリィ」はセレナのキーワードであり、2代目が掲げた「モノより思い出。」というコンセプトは、新型にもしっかり継承されていた。
走行性能面での最大の注目点は新型のe-POWERが採用されたことだ。シリーズ式は従来型と同じだが、搭載エンジンが新開発のe-POWER専用1.4ℓに変更。駆動用モーターの最高出力を2割増しとすることで、動力性能が大幅にパワーアップしている。
従来型のシステムは、先代ノートに搭載されていたパワーアップ版。1.2ℓエンジンで2ℓ級BOX型を賄うのはある意味凄いのだが、動力性能の余裕はなく、エンジン稼働の時間も負荷も大きかった。ところが新型は、同じような走らせ方をしてもエンジンの負担が軽くなっているのがよく分かる。排気量増は200㏄だが、余力感の向上はそれ以上。もちろん、駆動モーターの性能向上の効果も少なくないが、e-POWER車が性能面での上位設定となることを強く実感できる。
踏み込みや発進での加速反応の良さはe-POWERが得意とする強み。力強い初期反応ながら定常加速への繋がりもいい。従来型では気になった高速域での加速の落ち感も減少し、心地よい力強さを得られる速度域が拡大している。同クラスのライバルを圧倒するほどの加速性能ではないが、車重の重さをあまり意識させないくらいの実力を持っている。
エンジン性能の余裕に加えて、エンジン稼働時の静粛性も向上。遮音対策やロードノイズの多寡に応じた稼働制御が利いているのだが、エンジン騒音の低さも余力感を感じさせる理由だ。
ニッサン電動車の特徴であるアクセルペダル操作のみで強い回生ブレーキまでコントロールできるe-ペダルの基本設定はノートに準じた設定だが、フットブレーキに油圧回生協調型の電子制御ブレーキを採用していることは注目点のひとつ。これによりe-ペダルを使わなくても効率的な回生が可能となり、また強い減速を行う時も無駄なく回生できる。燃費の向上を意識しつつも自然なドライブ感覚で走らせることができることも魅力だ。
ガソリン車も抜かりなく改良
余力感向上で快適性がアップ
同時にガソリン車も試乗してみたが、ハードウェアは従来型を継承するものの、これもまた改良されていた。進化要点を一言でまとめれば余力感の向上。従来型は比較的早い時期からダウンシフトして高回転域の使用頻度も高かったが、新型では回転を抑えて加速する領域を拡大している。エンジンのパワースペックに変化はなく、全開加速時の加速も大きく変わらない。スロットル開度とCVTの統合制御により中庸域でスロットルを大きめに開き、急加速域ではダウンシフトでの上乗せを主とするような制御感覚だ。急加速時とのギャップが大きくなるが、実用域でのエンジン回転数の低下は余力感と静粛性、さらに燃費の3点がドライバーのメリットになる。同乗者の立場ならば、セレナが貫くフレンドリィな走りの味わいがより高まるともいえる。
新型セレナのもうひとつの見所はフットワークの良さ。穏やかな乗り心地はセレナのお家芸でもあるが、その美点を失うことなく強靭さを加えたのが新型の特徴だ。
例えばコーナリング時のロール挙動は、中立付近では抵抗感なくロールを開始するが、ロール速度自体は抑えられている。速い切り返しでも揺れ返しが少なく、定常円に入った時のロールの据わりもいい。ロール量そのものは大きめであり、硬柔で言えばファミリーカー相応の柔らかさを備えているのだが、不安感あるいは頼りなさを覚えるような挙動がない。強靭さが黒子のように下支えしているような感覚なのだ。
操舵に対しては俊敏に反応するタイプではないが、車体挙動が落ち着いているので4輪のグリップバランスも安定している。操舵に対して穏やかなラインコントロール性を示すので、減速しながらラインを絞るようなコーナーでも舵角を深めるだけでなんなくこなせる。コーナリング中の加減速や路面のうねりに対して姿勢や方向性の乱れも少ない。初見のコーナーでも安心のハンドリングである。
なお、サスチューンは全グレード共通であり、タイヤサイズの違いで路面当たり感や微小操舵での追従性が異なるが、グレードによるフットワークの差は少ない。
ハードウェアの変更点では第2世代となったe-POWERが主役だが、ガソリン車のパワートレーンもシャシーもしっかりと進化。コンセプトがブレないのもセレナの魅力である。



セレナ ハイウェイスターV
価格:326万9200円
■主要諸元(ハイウェイスターV FF)
●全長×全幅×全高(㎜):4765×1715×1870 ●ホイールベース(㎜):2870 ●車両重量(㎏):1690 ●パワーユニット:1997㏄直4DOHC(150PS/20.4㎏・m) WLTCモード総合燃費:13.0㎞/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)ベンチレーテッドディスク(R) ●サスペンション:ストラット式(F)トーションビーム式(R) ●タイヤ:205/65R16


