新車試乗レポート
更新日:2023.06.29 / 掲載日:2023.05.15

【メルセデス・ベンツ GLC】すべてにおいてレベルアップした高級SUVの雄

文●大音安弘 写真●ユニット・コンパス
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。

 Cクラス級SUVとして、2016年の日本デビューを果たし、一躍、メルセデスの人気車へと上り詰めたGLCが、いよいよ第2世代に。更なる価格帯の上昇も無視できない点だが、その魅力がしっかりと磨かれたのも事実だ。

 現在はメルセデスのランナップでも、大きな存在感を示すSUVだが、その中でもGLCは、上級クラスへのエントリーという重要な役目を持つ。それだけに失敗のできない一台でもある。

エレガントで高級車らしい風格のあるスタイリング

GLC 220d 4MATIC

 SUVらしいタフで力強いデザインが印象的な初代GLCだったが、2代目は、エレガンスさをより重視したスタイリングが与えられている。

 象徴的なのが、リヤサイドからテールエンドへのグラマラスなボディラインだ。テールゲートもより傾斜させ、厚みを抑えたスポーティな装いとした。見る角度によっては、SUVというよりもシューティングブレーキ風味も感じられる。前後マスクは、最新のメルセデスデザインとCクラスを意識したものであり、高級らしい風格も漂う。サイズアップされたようにも映るが、ほぼ先代同等をキープ。全長が、+50mmの4725mmとなっただけで、全幅は同様の1890mm、全高はシャープなスタイリングを反映するように、-5mmの1640mmとした。但し、取り回しの良さは、先代を上回る。最小回転半径は、標準で-0.1mの5.5mに。さらに後輪操舵機能「リアアクスルステアリング」装着車ならば、-0.5mの5.1mとなる。より運転し易いのも新GLCの武器なのだ。

GLC 220d 4MATIC

 インテリアは、Cクラス譲りのものだが、ガラスエリアの広さから、より明るく開放感も高まっている。リアルウッドを多用したダッシュボードデザインは、Sクラス譲りとなり、贅沢な雰囲気も高め、ユーザーの所有欲を高めてくれる。

 縦型大画面タッチスクリーンに加え、大型表示のヘッドアップディスプレイも見所のひとつ。多彩な表示を可能とし、より走行中にメーターパネルを見る必要が無くなった。快適面では、Cクラス級とあって、シートにもゆとりがあるが、特に後席は足元空間を含め、より広くなった印象だ。

 もちろん、機能性も抜かりはなく、絞り込まれたリヤスタイルを与えながらも、ラゲッジスペースは拡大しており、標準時で先代比+70Lの620Lに。後席を倒した最大積載量も+80Lの1680Lと、SUVとしての実用性も向上された。

 また走行面でもSUV機能を高めるべく、未舗装路や悪路走行をサポートする前方とボンネット下の路面を仮想的に映像化した「トランスペアレントボンネット」やクルマの傾きや路面の勾配などを表示する「オフロードスクリーン」も与えれた。

グレード構成はディーゼルエンジンの「220d 4MATIC」のみでスタート

GLC 220d 4MATIC

 グレード構成が、現時点では1タイプのみとなるため、パワートレインも同様。最初のモデルは、人気の高いクリーンディーゼルエンジンの4WD車「GLC 220d 4MATIC」となる。

 マイルドハイブリッド仕様「ISG」付の2.0L直4DOHC直噴ターボエンジンを搭載する。エンジンは先代と同形式だが、排気量の拡大や燃料噴射圧の向上、可変ターボンの水冷式ターボなど数々のアップデートが加えられているのがポイント。エンジン単体では、最高出力197ps/3600rpm、最大トルク440Nm/1800~2800rpmと馬力とトルク共に向上しているが、そこに最高出力23ps/最大トルク205Nmの電動アシストが加わり、走りの勢いも増す。それでいて燃費性能も、先代比+3km/Lの18.1km/L(WLTC)というのだから凄い。トランスミッションは、9速ATが組み合わされる。

 さらにメカニズムのポイントとしてお伝えしておきたいのが、エアサスペンションの設定だ。Cクラスセダンでは、非採用となるが、SUVらしい車高調整を可能とするために採用。もちろん、乗り心地の面で大きな恩恵があることは言うまでもない。また燃費向上のために、高速走行時は自動的に車高を落とし、空気抵抗を減らす役目もある。

 試乗車はオプションてんこ盛りで、AMGラインパッケージとAMGレザーエクスクルーシブ、パノラミックスライディングルーフ、ドライバーズパッケージなどが含まれており、車体だけで1000万円越えに。もっともプレーンなGLCも820万円もするのだから、GLCも随分、セレブになったものだ。因みに、エアサスペンションとリアアクスルステアリングを装備するには、49万円のドライバーズパッケージが必要で、60万円AMGラインパッケージの選択が必須となる。

走りの実力には文句なし。メルセデスらしい上質で上質感のある乗り心地

GLC 220d 4MATIC

 SUVだけに前席からの視界の良さは抜群。エアサス車の場合、より乗降性が良くなるように車高調整も行ってくれる。

 コクピット周りでは、縦型の大型タッチスクリーンに目を奪われるが、ドライバーのサポートとして心強いのは、大画面化されたヘッドアップディスプレイの存在だ。フルカラーで細やかな表示が可能なのに、視認性にも優れる。正直、運転中にセンターディスプレイに目を移すのが億劫に思えるほど。

 そのため、メルセデスSUV初採用のARナビにあまり有難く感じなかったのも事実なのだが……。何はともあれ、新GLCユーザーには、ヘッドアップディスプレイを自身でカスタマイズして使いこなして欲しいと思う。

 試乗車はエアサス付き車ということもあり、あのメルセデスらしい上質な乗り心地が提供される。Cクラスのバネサスも悪くなかったが、エアサス仕様が恋しいシーンもあっただけに、エアサスの採用は大歓迎だ。

 SUVで人気の高いクリーンディーゼルエンジンは、静音対策の効果もあり、かなり静か。ディーゼルと知らない人はガソリン車と思い込んでしまいそうだ。さらにアイドリングストップとエンジン再始動もスムーズとなり、ドライバーにさえ、機能の存在を意識させない黒子として活躍する。さらに電動アシストは癖がなく、かなり熟成が進んでいることが実感できた。

 後輪操舵のリアアクスルステアリングは、GLCをより小さなクルマのように扱えるので、一度、経験してしまうと欲しくなる機能だ。もちろん、中、高速域でも作動し、より車両安定性を高めてくれる。今回は、ワインディングも走ることが出来たのだが、マイルドハイブリッド仕様ディーゼルの力強さとエアサスの路面追従性の良さが抜群で、2tの巨体でありながら、かなりスポーティな走りが楽しめた。

 そうなると、ふたつのパッケージオプションはマストとなってしまうから、GLCは最低でも900万円台となってしまう計算だ。販売戦略としては実に上手い。ここまでの仕上げなのだから、一般ユーザーが楽しむアウトドアシーンでの未舗装路ぐらいは、何に問題もなく、カメラ機能の前方路面の表示もできるので、安心して走ることが出来るだろう。まさに1台で全てを叶えてくれる仕上がりといえる。

まとめ

 メルセデスのラインアップでは、Gクラスは別格として、上位モデルにGLEやGLSがある。しかし、ここまでの快適性と走りの良さを両立していれば、日本のタイトな道路事情まで考慮すれば、オーナーカーとしても、GLCはベストバイではないだろうか。

 Cクラスだと後席の利用が多い人は不満があるかもしれないが、GLCならば、その点も解決できる。ひょっとするとメルセデスの上位SUVを食らう存在になるかもしれない。

 一方で、820万円という価格は、先代GLCユーザーの一部には、衝撃だろう。何しろ、デビュー時は600万円台からだったのだから。満足度は高く、選ぶ価値のある一台ではあるが、より手の届きにくい存在となった現実も教えられた。

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大音安弘(おおと やすひろ)

ライタープロフィール

大音安弘(おおと やすひろ)

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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