新車試乗レポート
更新日:2023.09.16 / 掲載日:2023.09.16
カマロは今だから買っておきたい大排気量エンジン車!【九島辰也】
文●九島辰也 写真●シボレー
考えてみると、新しいモノが次々に登場すればそれまであったモノが姿を消していくのは当たり前かもしれません。スーパーもコンビニも家具屋もスニーカーショップも棚のスペースは限られます。自動車業界も同じで、これだけEVが発表されれば、内燃機関のクルマがカタログから落ちるのは仕方のないことでしょう。業界的にも過渡期なのだから新陳代謝は激しくなりますし、ディーラーのスペースも限られます。
ということで、今回はシボレーカマロをフィーチャーしたいと思います。今年3月、現行型カマロの生産終了が正式にアナウンスされました。
ニュースリリースによると、来年1月ミシガン州の組立て工場から出荷されるのが最後のカマロとなるそうです。2017年に登場した現行型は6世代目となりますが、およそ9年の歳月を経て歴史の幕を閉じます。
グローバル・シボレーのバイスプレジデントは、「すぐに後継車を発表する訳ではありませんが、これがカマロの物語の終わりではありませんので、どうぞご安心ください」とスピーチしたのですが、それはリップサービスのような気がします。
いずれBEVとしてリリースさせることを考えているのかもしれませんが、それだと2ドアクーペではなくSUVになるでしょうし、カマロを連想させるネーミングにする可能性はあったとして“カマロ”の名が使われることは想像し難い。往年のファンを喜ばすと言っても、カタチもパワーソースもまったく関連性がなければマーケットはしらけますよね。2ドアクーペ&コンバーチブルのカマロはアメリカンスピリットそのままですから。近年はコルベットの影に隠れているイメージもありますが、そもそもはまったく異なるスペシャリティカーなんです。
カマロ誕生は1967年です。ライバルフォードが1964年4月にマスタングを登場させ、見事にヒットしたことを背景にシボレーはカマロを開発しました。つまり、言うなればポニーカー。ラージプラットフォームでもインターミディエイトでもないコンパクトサイズです。当時アメリカのクルマはそれだけ大きかったということですね。
三角窓を付けたのは67年型だけで、翌年から廃止されました。三角窓は前時代的だったのでしょう。翌年以降どんどんデザインがモダンになっていきます。そして、時代はマッスルカー全盛期へ。カマロ、マスタング、チャージャーなどを筆頭に多くのモデルがパワーアップを図ります。排気量は大きくなり、エンジン自体もブロックごとサイズアップ。7000cc以上も数多くありましたし、エンジンブロックもビッグブロック、スモールブロックという呼び方をしていました。
頂点は1969年型でしょう。その頃のクルマは“ゴールデンエイジ”なんて呼ばれていました。理由は時代背景にあります。ベトナム戦争が泥沼化していた頃、強いアメリカを皆が求めたからです。そしてそれに応えるようにクルマがマッチョになる。もしかしたら国策だったかもしれません。そんな気がします。
そういえばイーグルスの楽曲ホテルカリフォルニアにもこんな歌詞があります。「ワインをくれ」と言ったら「1969年以来スピリットは置いてないよ」なんて。スピリットが「酒」と「魂」をかけているんですよね。オシャレというかちょっと皮肉っぽい言い回しです。きっとそこは1969年に開催された伝説のフェス、ウッドストック・フェスティバルとも関連していることでしょう。
その後1970年からカマロは2世代目となります。73年と79年の二度のオイルショックを受けましたが、なんとか持ち堪えました。そして82年通称サードカマロと呼ばれる3代目になり、90年代に4代目に進化します。が、2002年に販売不振の理由で生産中止になり、2009年の5世代目登場まで7年間の空白の時間を過ごしました。つまり、カマロは一時期廃盤になったんです。そこがマスタングとの大きな違い。フォードは一度もマスタングの生産をストップしていませんから。事実昨年もフルモデルチェンを果たし、ガソリンエンジン車を生産し続けています。しかも、マニュアルシフトまであるんですから驚きです。
ただ、一度復活した実績を持つカマロですから、この後も三度姿を表す可能性はないわけではありません。でも、注目したいのは現行型。6.2リッターV8エンジンを搭載したカマロSSのステアリングを久しぶりに握ったのですが、これがめちゃくちゃ楽しい。大排気量エンジンならではの加速とサウンドにはただただ感動するばかり。アクセルを踏み込むと身体がシートに押しつけられる様がたまりません。それにハンドリングも軽快だし、乗り心地も悪くない。サイズだって今どきの大柄SUVより扱いやすいです。ドアは大きいけどね。左右にスペースのない駐車場はそこがネックかな。
いずれにせよ、楽しいクルマなのは間違いなし。「今だから買っておきたい大排気量エンジン車!」の候補にいかがですか?