新車試乗レポート
更新日:2023.12.15 / 掲載日:2023.12.14
【スズキ スペーシア】売れているのも納得のこだわりの数々

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
先月11月に発売を開始したスペーシア、スペーシアカスタムに乗った。2017年にリリースされた先代から6年経っての登場となる。すでにテレビCMがヘビロテしているのでご存じの方も多いと思う。軽自動車のハイトワゴンの中でも人気のモデルだ。2021年には累計100万台を超え、現在は130万台に達している。
コンテナをモチーフにしたエクステリアデザイン

新型の特徴は先代の“スーツケース”から進化したデザインコンセプト。より多くの荷物を詰め込めることをアピールするため今回は“コンテナ”をモチーフにした。ボディサイドの数本のプレスラインがそれを表現している。
提案したのはデザイン部門で、デザインと設計&開発、生産部門が一丸となって製品化に漕ぎ着けた。きっと風通しのいい社風なのだろう。リアフェンダー後部はかなり複雑な仕上がりになっているのは見逃せない。
中身はというと、軽量化がポイントとなる。フレームに使う超高張力鋼板の割合を増やしたり、接合部で構造用接着剤を多く使ったりしている。このくらいのエンジンパワーのクルマでは軽量化はそのままメリットとなるのは言わずもがな。超高張力鋼板の多様化は先代比で10キロ以上は軽くなったそうだ。

インテリアではスズキ初のマルチユースフラップがウリ。リアシート乗員のオットマンや姿勢を安定させるツールになるほか、リアシートに置いた荷物のストッパーにもなる。この辺はユーザー目線に立って開発された装備だろう。今後ハイトワゴンに限らずデフォルトになる可能性を感じる。


運転席からは死角が少なく見晴らし抜群

では実際に走らせた印象に話を移そう。試乗したのはNAエンジンのスペーシアとターボエンジンのスペーシアカスタム。どちらもマイルドハイブリッド搭載で、ギアボックスはCVTを採用する。
運転席に座ってまず思ったのは視界の広さ。大きなフロントガラスと死角を減らしたフロントピラーが効果を発揮する。ピラーは太いものを一本ではなく、細いものを空間を空けて二本にした。
ただ死角を無くすことを目的とするならば、いっそピラーをそのままハニカム構造にしてしまう手もありだろう。その方が太さに関係なく、剛性を維持したまま造れそうだ。もちろんハニカムではそこにある物を認識する正確性は薄れる。が、物体のある無しはわかるはず。走行中であればそれで十分と言う考えもあるに違いない。
エンジンスタートすると、このクルマの工夫がいろいろ見える。まずはセンターモニターに映る周辺画像で、これにより動き出す前に障害物のある無しを確認できる。きっと「周辺を確認しよう!」と言う良い啓蒙にもなるに違いない。しかも何パターンかあるようなので、気に入ったものを選択できる。
シフトを動かすと音声が聞こえるのもグッド。Dレンジでは発進する旨を、リバースに入れれば後へ動き出す旨のアナウンスをする。これは明らかに誤発進防止に役立つ。ただ、そのまま勢いよくシフトをDレンジに入れようとすると、一番下のBレンジに入ってしまうのが惜しい。ここは一つゲートを作るか、音声で案内するとより親切だろう。

では走らせた印象だが、2つのエンジンの違いは明らかでターボエンジン車の方が断然走りやすい。出だしや合流、幹線道路や高速道路での流れも不安なし。モーターは0キロからアシストが始まるし、坂道でも起動してくれる。が、NA車はそれがあっても少しばかり心もとない。交通量が極端に少なかったりすれば快適なのだが、ちょっとスピード域の高い幹線道路では後から突っつかれそうな気になる。試乗エリアが富士山の麓と言うことも関係あるかもしれないが、なだらかな上りが続く一本道を不安なく走るにはもう少しパワーが必要だ。
乗り心地は14インチは快適だが、15インチは少しピッチングが気になる。だが、そこは許容範囲。そもそも技術力の高いスズキの開発陣なので、あえてここまでとしている気がする。価格を抑えるなどの面を含め精一杯といったところだ。軽自動車の場合コスト管理は第一項目となるであろう。トップグレードでも200万円+αで抑えているのだから恐れ入る。
まとめ
といったのが新型スペーシア、スペーシアカスタムのファーストインプレッション。隅々までチェックすればここに書ききれないほどのトピックスが満載される。激戦区で戦うのは大変だ。とはいえ、開発陣と話しているとそれを楽しんでいるようにも感じる。なるほど、そこがスズキの強味なのもしれない。

