新車試乗レポート
更新日:2024.06.26 / 掲載日:2024.01.23
新型クラウン「セダン」の実力公開〜公道試乗リポート〜
続々登場! 第2&第3の新CROWNの実力を徹底チェック!
トヨタのプレミアム戦略を担う新世代クラウンの「スポーツ」と「セダン」がついに公道デビュー。クロスオーバーの評価が高いこともあって、後発の2モデルの走りも大いに期待できそう。シリーズ唯一のFR「セダン」の実力は如何に?
●文:川島 茂夫 ●写真:奥隅 圭之

TOYOTA 新型クラウン セダン 公道試乗リポート

シリーズ唯一のFRモデル
“王道”を受け継ぐ存在
FRプラットフォームでセダンという組み合わせは、まさにクラウンの伝統の継承者だ。ただし、新型は車史に任せ、漠然と開発されたモデルではなく、新機軸の3シリーズに主役の座を奪われてなるものか、と主張するような力作。新型でも”セダン”がクラウンの本流と納得できる出来栄えだ。
プラットフォームはミライと同じGA-Lで、ホイールベースはミライよりも80mm長い。この変更はVIPカー需要を考慮したもので、延長した余裕は後席レッグスペースの拡大に向けられている。
ただし、VIPカー用途を第一の目的にしていないことは、ローフォルムなスタイリングから推測できる。キャビン後席の頭上空間こそしっかりと確保されているが、ドア開口部の高さは不足気味。さらに水素タンクをフロア下に置いているため後席の座面高も高めで、乗降時の頭抜けは今ひとつ。やはり開発時に重視したのは、ドライバーズカーとしてのクラウンだったのだろう。
オーナードライバーにとってクラウン セダンはとても魅力的だ。ひとつはFRであることを意識させる乗り味。加速時にリヤサスが沈み込む挙動が、いい意味での重厚感を感じさせてくれる。細かな動きも含めて揺れ返しも少なく、据わりや収まりがいい。
同系のプラットフォームを採用するミライと比較しても、一歩進んだ印象。ミライが採用していない電子制御サスのナビAI・AVSが装着されている恩恵もあるが、ストロークの滑らかさや収束感が1ランク上の出来栄え。重みがありながら据わりがいいストローク制御は、走りの車格感の差になっている。
パワートレーンは2タイプ。ひとつはミライと共通のFCEV。FCの発電反応にはタイムラグもあるが、駆動用バッテリーとの二人三脚で駆動制御系はBEVと変わらない。即応性と制御精度の高い電動駆動だが、神経質な扱いを必要とせず、刺激的な瞬発で同乗者を脅すこともない。洗練された力強さが似合っている。
もうひとつはHEV。2・5ℓのスプリット式に4段の変則ギヤを組み合わせたマルチステージハイブリッドを搭載する。巧みなエンジン回転数制御もあって、標準的なスプリット式と比べると内燃機車的なメリハリのあるドライブフィールが楽しめる。同排気量のFF(横置)系モデルよりも高速域での加速の伸びもいい。ただ、省燃費志向のエンジンと組み合わされたことで、基本は穏やかなドライバビリティ。迫力や昂揚感を求めるタイプではない。
良質な走りを目指す考え方は、FF系プラットフォーム&E-Fourを採用するクロスオーバー、スポーツと同系統だが、セダンはさらに上質感や重厚さといったプレミアムモデルとしてのキャラも強く意識している。歴代クラウンを乗り続けてきたユーザーならば、新型の進化ぶりに好感を覚えるはず。クラウンが育んできた王道を受け継ぐモデルなのだ。







