新車試乗レポート
更新日:2024.03.29 / 掲載日:2024.03.29
クラウンスポーツPHEVモデル実力判定
頂点仕様! プラグインハイブリッド公道試乗
新型クラウンシリーズとして初となるPHEV(プラグインハイブリッド)はクラウン スポーツに搭載される。先行してリリースされたHEVも出来が良かっただけに、PHEVの実力が気になるところだ。
●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之
TOYOTA 新型クラウン スポーツ[PHEVモデル]実力判定
気軽なファントゥドライブ感覚とエコ性能、実用性能が高水準でバランス
ユニーク&プレミアム
走りは上質で爽快だ
クラウンは今後の発売が予定されているエステートを含めて4系統構成になるが、それぞれの上位パワートレーン設定が興味深い。クロスオーバーはターボ+パラレル式HEVのデュアルブースト、セダンはミライと同型のFCEV、そしてスポーツとエステートはPHEVである。上位パワートレーンはそれぞれの系統のキャラを示しているとも考えられる。
スポーツRSが採用するPHEVシステムはRAV4と同型。NA2・5ℓのスプリット式HEVとリヤ40kWモーターのE-Fourのコンビで、車格や重量を考えるともっと強力なパワートレーンであっても良さそうだが、それも含めてスポーツRSのキャラだ。
対向6ピストンフロントブレーキやナビAI-AVSなども装着し、スポーツモデルらしいスペックだが、尖ったスポーツ性は求めていない。クラウン スポーツのキャラは肩肘張らない自然体のスポーツマン。スポーツ&カジュアルと言い換えてもいいが、迫力より爽快さに重きを置いたスポーツ性だ。
HEVモードにおけるエンジンの稼働頻度は高め。加速時には速度上昇に応じた回転制御で、強い加速では高回転域にも至る。加減速での回転変化も小気味よく、出来のいいパラレル式HEVのようなドライブフィールだ。スプリット式HEVなので電動の力が相当利いているはず。踏み込み直後の立ちがりから滑らかかつ安定したトルクを発生するのは電動力の賜だろう。しかし、シリーズ式HEV感覚は薄く、CVT感に抵抗のあるドライバーも納得できるだろう。
付け加えるなら全開加速で高回転まで回しても威圧的なエンジンフィールはない。速くて操り心地もいいが、優しげでもある。
EVモード時の最大加速はHEVモードからエンジン出力分を差し引いたレベル。ただし、アクセルペダルのストロークで半分程度まではHEVモードとさほど変わらない。深い踏み込みでの加速の上乗せが少ないが、それでも一般走行では十分以上だ。
フットワークもパワーフィールによく似合っている。電子制御ダンパーの効果もあるが、挙動を抑えながらストロークでいなす感覚もある。スポーツモードを選択しても突っ張った印象はなく、しなやかさと収束性を上手くまとめている。車格を考えるともう少し重質な味わいも欲しいが、路面からの振動や騒音は同車のHEVモデルよりも少なく、腰の据わった乗り味が動的性能面と走りの質感の両面から伝わってくる。
WLTCモードの満充電航続距離は90㎞、HEV走行燃費は20.3㎞/ℓ。現行トヨタPHEVでは唯一、急速充電に対応。上級プレミアムクラスではエコ性能でもトップクラス。気軽なファントゥドライブ感覚とエコ性能、実用性能を高水準でバランス。外観やカテゴリーのユニークさだけでなく、プレミアムの楽しみ方でも従来のクラウンと一線を画している。クラウンシリーズで最も若々しく新鮮な印象を覚えたモデルである。
TOYOTA クラウン スポーツRS(プラグインハイブリッド車)
PHEVによってエコとスポーツが融合
新型クラウン4タイプのうち、もっともパーソナル寄りのキャラクターを持つ「スポーツ」。その上位グレードがPHEVの「RS」だ。パワートレーンはTHS-Ⅱの名称で知られたシリーズ・パラレル式ハイブリッドがベースで、トヨタのPHEVで広く採用されているもの。お家芸のHEVの電動システムを強化し後輪をモーターで駆動。走りの楽しさと環境性能の両立を1段階アップさせている。
●主要諸元(クラウン スポーツ RS)※オプションを含まず ●全長×全幅×全高(㎜):4720×1880×1570 ●ホイールベース(㎜):2770 ●最低地上高(㎜):165 ●車両重量(㎏):2030 ●パワーユニット:2487㏄直列4気筒DOHC(177PS/22.3㎏・m)+フロントモーター(134kW/270Nm)+リヤモーター(40kW/121Nm) ●トランスミッション:電気式無段変速機 ●WLTCモード総合燃費:20.3㎞/ℓ ●等価EVレンジ:90㎞ ●タイヤ:235/45R21