新車試乗レポート
更新日:2024.06.26 / 掲載日:2024.06.26
試乗して驚いたBYD SEALの侮れない実力

文と写真●ユニット・コンパス
「とにかく一度乗ってみてほしい」。論より証拠、製品に自信があるからこその戦略なのだろう。2024年6月25日に公開されたBYDの日本導入第3弾であり、ブランドのフラッグシップモデルに位置するSEAL(シール)の発表会では、試乗を促す言葉が記憶に残った。
ディーラー網の整備など日本市場に向けた着実な取り組み

2023年から電気自動車を日本国内で販売しているBYD。ショールームの数も徐々に増えており、2025年での目標とする100拠点達成に向けたロードマップは好調だと語る。
先進国のなかでも国内自動車メーカーの力が強い日本で新興メーカーが生き残るには、地に足のついた戦略が求められる。BYDでは、販売拠点の整備に加え、毎年1車種以上のニューモデル導入、体験機会のアップデート、そしてコミュニケーションのアップデートを三本の矢にして、これをクリアしようと目論む。
SEALはミドルクラスのスーポーツセダンで価格は528万円から605万円。導入記念として1000台限定で495万円からの特別仕様車も用意。
アフォーダブルな価格に加えて、フラッグシップとして自社開発のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーや最新プラットフォーム、充実した快適&安全装備など技術力をアピールする。
航続可能距離は社内参考値ながら、後輪駆動モデルで640km、AWDモデルで575km(同)を実現。従来のモデルと比較して充電性能も高く、車両側受け入れ可能充電性能は105kWh。さらに温度管理機能によって充電性能が高く維持できるため、BYD社内の実験では90kWhの急速充電器で30分充電した際に、42kWhの充電量を達成している。
機能や装備の多さはもちろん、クルマとしての完成度も高い

各地で始まったSEALの試乗キャンペーンにともない、発表会翌日に表参道のブランドスペースにて試乗の機会が与えられた。
割り当てられたのは後輪駆動モデル。AWDとの見た目上の違いはエンブレムのみということだ。運転席に乗り込み装備などを確認したが、とにかくデバイスと機能はかなりハイレベル。トランクの開閉やドアノブの収納、果てはエアコン吹き出し口までかなりの部分が電動化されているし、スマホのワイヤレス充電も2人分用意されているなど、フラッグシップならではの充実ぶりを実感。シートの作りもよくステッチも細やかだし、シートヒーターに加えてベンチレーターも組み込まれていた。



多機能を誇るSEALだが、運転に関する操作は左手のシフトレバー周辺に集約し、その他の機能をタッチ操作可能なモニター上にまとめることで、すっきりとしたデザインを実現している。従来のクルマから乗り換えても違和感を覚えない良い塩梅だと思う。
都心部を1時間ほど走らせた感想としては、車内の静粛性は高く、電気自動車特有の高周波音も上手に抑えられている。「E-スポーツセダン」という触れ込みどおりステアリングやペダル操作に対するレスポンスもなかなかにシャープ。電気自動車ならではのレスポンスの良さを活かしたセッティングだと感じた。

SEALの印象は、「クルマらしいクルマ」といった感じで電気自動車であっても、突飛な未来カーではない。これまで慣れ親しんだクルマの世界観を上手に取り入れているので、多くのドライバーが違和感なく乗りこなせるはず。BYDが試乗を勧めるのがよく理解できる完成度だった。