新車試乗レポート
更新日:2024.08.26 / 掲載日:2024.08.24

スズキの新型SUV『フロンクス』の全貌《先行試乗&詳細解説》

今秋登場予定 新型 SUZUKI FRONX 先行試乗リポート

スズキが手がける乗用車モデルは、軽自動車の陰に隠れがちだが、スイフトを筆頭になかなかの実力車が揃っている。この秋に登場する新型フロンクスも、人気のコンパクトSUVにプレミアムキャラをプラスすることで、大きな飛躍が期待できそうな一台だ。

●文:川島茂夫●写真:澤田和久

コンパクトSUVにプレミアムの風!

次世代を担う世界戦略車 満を持して国内に投入

この秋に国内導入される新型フロンクスは、国内ラインナップとしてはハッチバックのバレーノの実質後継としての役割もある新世代コンパクトSUV。インドで生産され日本に輸入される日の丸輸入車で、すでにインドでは導入されており、スズキの世界戦略の中核を担うクルマとして高い評価を集めている。国内では新ブランドとして誕生することになるが、車体設計やパッケージング面ではバレーノから派生したSUVと考えるのが妥当だ。

全長は約4m、ヤリスクロスよりも一回り小さく、コンパクトSUVの中でも小柄な部類。しかし、フェンダーの張り出し感を強調するなどのメリハリを利かせた造形を与えたことで、実際のサイズより大きく見える。これによりライバル勢よりもスペシャリティ&プレミアムを強く感じることができる。

クーペライクなプロポーションを採用したことでユーティリティ面への影響が気になるかもしれないが、ヘッドルームを考慮したルーフ形状とリヤピラー設計により、標準的な体格の男性でも十分な後席居住性を確保。ルックスを重視しながらもコンパクトSUVとしての機能性もしっかりと考慮した設計が与えられている点は印象的だ。

プラットフォームは、系統的にはスイフトの流れを汲んだもので、サス回りは国内専用でチューニング。最近のスズキ車に共通する走りの良さも売りにしており、高速ツーリングも得意とするコンパクトSUVに仕立てられている。

パワートレーンは1・5ℓの4気筒NAと6速ATの組み合わせ。それにISGを組み合わせたマイルドハイブリッドが採用されている。ISGのアシスト力を効果的に用いることで、巡航ギヤ維持力や余力感を高めているが、高速加速や登坂ではそれほどの余裕は感じられなかった。スズキの乗用登録車の中では比較的余裕のある排気量設定だが、経済性を基本に汎用性とドライブフィールを重視した、コンパクトSUVとして上手く纏まった動力性能だ。

サスは少し硬めの味付け 高速ツアラー適性も優秀

高速長距離適性の決め手となるフットワークは硬めの設定。減衰の利いたサスチューンを用いることで、車体挙動の抑えを上手に効かせている。前後左右の荷重移動も的確で、回頭時の収束感も良好。中高速でのコーナリングで早めに操舵を行っても、抑えのための補正操舵をことさら必要としない。1クラス上の高速ツアラーを彷彿させる操縦特性が印象的だ。軽量小型の車体を利したタイトターンの捌き具合も良好。落ち着いたラインコントロール性を示すなど、速度やコーナリング半径による特性の変化が少ないことは、このクラスを求めるユーザーにプラスの安心感をもたらしてくれるだろう。

今回はチェックできなかったが、ACC(全車速型)や操舵支援型LKAの支援特性も前世代より進化しており、支援介入時の違和感を下げるような設計をプラスしているとのこと。

乗り心地は若干硬めだが良質な味わい。小さな動きに織り込まれたサスのストローク感がしなやかさを演出してくれる。細かな振動の抑制も良好。車格感を意識する乗り味も魅力のひとつになっている。

スズキSUVはハードクロカン対応のジムニーシエラと、タウン&ファミリー向けにユーティリティを重視したクロスビーがあるが、第三の選択肢としてフロンクスが加わる。2車に比べるとレジャー&ツーリングで、できることの幅が広め。高速長距離適性は定評のあるスイフト同等以上と考えてもいいだろう。

スイフトのワゴンバリエーション、あるいは上級発展モデルとして考えても不自然さはない。スズキのコンパクトクラス戦略の新たな柱として注目したい一台なのだ。

動力性能は、ISGによるアシスト力は加わるものの1.5ℓエンジン相応。コーナーからの立ち上がりなどで、少し物足りなさが……。登板路ではどうしてもモアパワーが欲しくなる。
サスチューンは、乗り心地と走行安定性のバランスを意識したセッティング。コーナー時での収束感も高く、ハンドリングの味にこだわるドライバーでも満足できる仕上がりだ。
パワートレーンは、1.5ℓ直4エンジンにISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)を組み合わせるマイルドハイブリッドを採用。

エクステリア

全幅は1.7mを超えているが、全長は4mを僅かに下回り、コンパクトSUVでも小柄なタイプ。開発では取り回し性能もポイントになっており、最小回転半径はクラストップレベルの4.8mを実現している。ワイドな全幅が狭い駐車場では気になるものの、取り回し時の車両感覚は良好。それほど負担にはならないだろう。

 そして興味深いのはスタイリングだ。キャビン部分をコンパクトに見せるベルトラインやフェンダーの張り出し感と、端正なランプグラフィックもあって、車体寸法より一回りは大きく見える。その結果、上級クラス寄りに感じることができる。サイズ的にはコンパクトSUVの最小クラスだが、プレミアム感漂うエクステリアは個性派が揃うスズキのSUVの中でも抜群の存在感を発揮している。ダウンサイザーにとっても魅力的な一台になりそうだ。

リヤエンドを絞り込む流麗なクーペスタイルを採用。ハイト気味のベルトラインや抑揚を効かせたサイドパネルを用いることで、力強さも上手にプラスしている。
方向への張り出し感を意識したランプグラフィックもあってフロントマスクも個性十分。前後バンパーにはアンダーリップ&ディフューザーを配することで、スポーティさも楽しませてくれる。
撮影車には異型5ホールの16インチアルミホイールがインストールされていた。タイヤサイズは、SUVとしては小ぶりな195/60R16。

キャビン&ユーティリティ

インパネ中央部にディスプレイオーディオを配置して、二眼式のメーターパネルをステアリング奧に置くレイアウトは、今風であるとと共にオーソドックスな馴染みやすさも兼ね備えている。面積を大きく取ったメタル調加飾パネルや、トリムやシートに落ち着いた色調の2トーンを用いる大人っぽい仕立ても、フロンクスのコンセプトがプレミアムにあることを示している。実用仕立てを得意とするスズキ車としては異質ともいえるインテリアだ。

 キャビンスペースは車体サイズ相応で男性の4名乗車に過不足ないレベル。シートアレンジなどもシンプルなタイプだ。ただ、後席の座り心地は長時間乗車にも対応したもので、居住寸法で余裕がないのを座り心地でカバーしている。このあたりにも1クラス上を意識した設計意図を感じることができる。

シートはサイドサポートを効かせたスポーティ形状。革&ファブリックのコンビ地や高輝度シルバー加飾などで、質感向上も図られている。
荷室の広さはボディサイズ相応で、通常時の容量はほどほど。後席格納はシンプルな前倒式。積載性を売りにするタイプではないが、実用性は十分だ。
車載ITはスマホ連携機能を備えるディスプレイオーディオを採用。車両機能の設定などもタッチ操作で行える。
メーターは中央部にインフォメーションディスプレイを配置する2眼タイプ。速度計は220km/hスケール。
シフトはオーソドックスなストレートタイプ。その後端には電動パーキングブレーキ、ステアリングにはパドルスイッチが配置される。

パワートレーン&メカニズム

収まりのいい落ち着いたライントレース性能や挙動収束が際立つフットワークは、車両設計の要点だが、もうひとつの特徴となっているのが快適性へのこだわりだ。

車内へ侵入する騒音を抑えるため、ダッシュインナーサイレンサーやインナーフェンダーに遮音性に優れた素材を採用。リヤドアガラスの板厚増など、車体骨格の段階から細かな静粛性向上の工夫が加えられている。

パワートレーンは1.5ℓ3気筒NAにISGを組み合わせるマイルドハイブリッド仕様。スズキは小排気量系はトランスミッションにCVTを用いることが多いが、スイフトスポーツと同様に6速ATを採用している。このこだわりも走りの心地よさや質を求めた結果といえるだろう。

1.5ℓ直4DOHCエンジンは、燃費性能と低中速域での力強さに定評があるスズキのグローバルエンジンのひとつ。ジムニーシエラでは縦置きに配置するが、フロンクスでは横置きに配置される。
後輪へ駆動力を伝えるドライブトレーンにも徹底した制震振動対策を施すことでノイズの発生を抑制。2WD車と同等の静粛性を手に入れている。
サスペンションはフロントがストラット式、リヤがトーションビーム式。低重心のフロンクスに最適化することで、コーナリング時のロール抑制や段差乗り越えの衝撃緩和が図られている。
デュアルセンサーブレーキサポートⅡを採用。ロングドライブで重宝する停止保持機能付きACCや車線維持支援機能(LKA)は、ドライバーの意思を尊重する制御をプラス。
ボディ構造にも徹底した遮音対策を実施。雑味感が強い高周波の音を大幅に低減することで、走行ノイズも大きく抑え込んでいる。キャビンへ音の侵入を許さないことで静粛性とプレミアム感を高めている。
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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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