新車試乗レポート
更新日:2024.10.22 / 掲載日:2024.10.22

想像以上にEVとジープは相性がいい【ジープ アベンジャー】【工藤貴宏】

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

 ジープの最新モデル「アベンジャー」にはふたとの大きなトピックがあります。

 ひとつは車体サイズ。アベンジャーの車体は全長4105mm×全幅1775mmで、これまでの現行モデルラインナップで“ジープ最小”の称号を持っていた「レネゲード」(全長4255mm×全幅1805mm)よりもコンパクト。新車購入できる車種としてはもっとも小さいポジションに収まったのです。

アメリカ車のイメージをくつがえす扱いやすいサイズ

ジープ アベンジャー Altitude

 4105mmというアベンジャーの全長は、国産車でいえば「トヨタ・ヤリスクロス」の4180~4220mmや「ホンダ・ヴェゼル」の4295mmよりも短い長さ。全幅はそれら国産車よりもワイドですが1.8mをわずかに超える程度なので極端に枠の小さな駐車場以外は気にならない範囲でしょう。アメリカンブランドとは思ないほどコンパクトで、扱いやすいフレンドリーさを持っているのです。

もうひとつはパワートレイン。

 多くの人はジープといえばガソリンエンジンがメインで「そういえばハイブリッドもあるらしい」くらいの感覚かもしれません。でも、アベンジャーはそこに当てはまりません。なんと、EV(電気自動車)なのです。

 何を隠そう、アベンジャーは“ジープ初の市販EV”。時代はオフロードブランドのジープでさえEVを求めているというわけです。

 参考までに、欧州仕様ではエンジン車やマイルドハイブリッド車もラインナップされています。いっぽう日本向けはひとまず、エンジンを搭載しないEVだけの設定となるようです。

 それにしてもアベンジャーは、これまでの概念からすれば「ジープらしくないジープ」といっていいでしょう。それは車体の小ささやEVだけの展開もそうですが、スタイルもフロントの“セブンスロットグリル”こそ伝統的でジープファミリーであることを主張するものの、それさえ隠せばジープらしさはほとんどありません。

ジープ アベンジャー Altitude

 走りだってそう。そもそも悪路走行をほぼ考えておらず、オンロード重視の設計です。

 「前輪駆動車でありながら高い走破力を発揮、アプローチアングルとデパーチャーアングル、車両の最低地上高とともに、ジープならではのオフロード性能を確保しています」とか「ジープブランドの前輪駆動車として初めて“セレクテレイン”と“ヒルディセントコントロール”を標準装備」とジープは説明しますが、ジープだからと言ってハイレベルな悪路走行性能を求めて選ぶと“コレジャナイ感”に包まれるのではないでしょうか。

 ちなみに“セレクトテレイン”とは、アクセルに対する駆動力の特性やトラクションコントロールを始めとする電子制御デバイスをシーンに合わせて切り替える機構。いわゆる“走行モード切り替え”機能です。「エコ」や「スポーツ」に加えて、凍結した路面などに適した「スノー」、悪路向けの「マッド」や「サンド」も設定されているのは確かにオフローダーっぽい部分です。でも、それは昨今だとジープに限ったことではありません。

ジープの世界観を広げる新しい提案

ジープ アベンジャー Altitude

 そんなアベンジャーですが、見れば見るほどこれまでの“大きなジープ”とは全く異なる層がターゲットということがわかります。具体的に言えば、ジープに興味があっても、オフローダーには興味がなかった人。そのうえでEVが欲しいという人。アベンジャーはそんな人たちに向けた、ジープからの新しい提案といえば理解しやすい。コンパクトカーとして日常の利便性や快適性、そして操縦性を重視したクルマ作りと言っていいでしょう。

 そして、ファーストカーとしてすでに「ラングラー」など大きなジープを所有していて、セカンドカーとして小型で快適でEVの街乗り用ジープを求めていた……なんていう人にもアベンジャーはちょうどいい選択肢となることでしょう。悪路走行を忘れ、シティコミューターとしたらこんなに最適なジープはほかにないと筆者も思います。モーターによるEVの走りは滑らかで快適ですしね。

 パッケージングは、前席重視。ドアは後席にもあるので日常の利便性は高く、後席は大人も無理なく座ることができます。しかし、後席は膝まわりスペースにあまりゆとりがなく、開放感も控えめ。2人までの家族構成、もしくは子供が小さなファミリーに最適な設計と言っていいでしょう。ラゲッジスペースは355Lあるので車体サイズの割には十分で、日常で不便を感じないのはもちろん、3人乗車までならキャンプにも行けそうな積載能力です。

ジープ アベンジャー Altitude

曲がり道が楽しい初めてのジープ!?

ジープ アベンジャー Altitude

 そんなアベンジャーの走りはどうか?

 誤解を恐れずに言えば、EVとしてはごくフツー。加速にとりたてて強い個性はありません。過剰な速さなどではなく、ガソリン車から乗り換えても違和感なく馴染める味付けと言っていいでしょう。

 前輪を駆動するモーターの最高出力は156psで、最大トルクは270Nm。EVとしては控えめですが、昨今の普及タイプEVとしてはトレンドに乗った設定とも言えます。過激系EVのような、アクセルひと踏みでワープするようなすさまじい瞬発力はないけれど、ガソリン車から乗り換えても違和感のない出力特性は落ち着くし、誰にでも運転しやすい。運転してそんなことを実感しました。

 それにこのパワートレインは効率がいいのも特徴です。バッテリー容量は54.06kWhで、WLTC計測による一充電走行距離は486kmとアナウンス。アクセルを戻してのコースティング走行を巧み使うといったていねいなアクセルワークを心がければ、日常域での実走行で400km近く走れることでしょう。高速道路での試乗中も、電費計が(かなり良好な値となる)7km/kWhまで伸びたのは驚きました。

 充電は200Vの普通充電に加えて、日本の規格であるCHAdeMOの急速充電にも対応しています。

 乗り心地も快適そのもの。ときどきEVで気になる路面の段差を超えたときの突き上げ感も巧みに吸収していて、ゴツゴツとした感じがないのがいいですね。秀逸です。

 そのうえで、驚いたのはコーナリング性能。曲がるのが楽しいのです。それは、これまでのジープではちょっと味わえなかった感覚です。

 ステアリング特性がクイックだから交差点などでスッと向きを変えるのに加えて、バッテリーを床下に搭載することでSUVながら重心が低いこと、さらには大型バッテリーの重さに対応すべくサスペンションを硬めの設定としていることなどの相乗効果として、コーナリングがとても気持ちよく感じられるのです。ある意味、新しいジープの世界を見せてくれると言っていいでしょう。

 そんなアベンジャーのグレードは基本的に「Altitude」の1タイプで、装備は10.25インチのディスプレイオーディオをはじめレザーシート、そして運転席のパワーシートなど装備は盛りだくさん。

 さらに今なら、発売を記念した限定車のローンチエディションも150台限定で用意されていて、18インチタイヤ&アルミホイールやサンルーフ、ブラックペイントルーフ、イエローダッシュボード、そして本物を忠実に再現した1/43サイズのミニチュアカーなどもセットして通常モデルからわずか15万円アップの595万円で展開。とてもコスパのいいモデルです。

 ちなみに価格の話をすると、購入時には国からの補助金を65万円得ることができ、そのぶん支払い総額を抑えられます。さらに東京都なら40万円の補助金が受けられるなど、自治体のEVサポートもあるので、そういった地域に住んでいるラッキーな人はさらにお買い得に購入できるのも見逃せません。

マッチングが合えば選択肢としてアリ!

ジープ アベンジャー Altitude

 というわけでアベンジャーはこれ1台で長距離移動まですべてをこなすのは難しいだかもしれません。300キロを超えるようなドライブだと、出かけた先での充電も考えなければいけません。でも、シティコミューターとして考えれば、けっこういい選択肢。家で充電して300キロにも満たない移動なら充電の心配もいらないし、エネルギーコストも少なく済みます。また近距離移動であればこのくらいの車体サイズが運転しやすくていいでしょう。

 アベンジャーはマッチするユーザーの条件があることから買う人を選びます。しかし、そこにハマるのであればコンパクトなEVのジープってけっこういい選択肢ではないでしょうか。

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工藤貴宏(くどう たかひろ)

ライタープロフィール

工藤貴宏(くどう たかひろ)

学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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