新車試乗レポート
更新日:2025.01.09 / 掲載日:2025.01.09
緻密に手が加えられたフルモデルチェンジ【フォルクスワーゲン ティグアン】【九島辰也】
文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
現在輸入車の販売台数でナンバーワンに輝いているのはメルセデス・ベンツだが、かつてはその座にVWがいた。が、今はそれほどの勢いはなく、日本での年間販売台数は良い時期の半分以下になっている。それでも人気を集めているのが、TクロスやTロック、ティグアンといったコンパクトSUV。そのティグアンが7年ぶりのフルモデルチェンジを行った。2007年の初代登場からこれまでグローバルで760万台売られてきた人気モデルである。日本では2024年11月から販売を開始している。
上級モデル並みの装備を手に入れた
新型はプラットフォームから変わった。従来のMQBアーキテクチャーからMQB evoに取って代わった。これに伴いシャシーコントロールはDCCからDCC proへスイッチし、マトリクスヘッドライトやインフォテイメントシステムも進化した。上級モデルが搭載していたものを手に入れたのである。
エクステリアデザインはキープコンセプトながらフロント周りをイマドキにするなど新しさを強調する。細めのグリルとシグネチャーライトからもわかるように新世代デザインを採用した。また、今回はボンネットを高くしてSUV然とさせているのもトピック。見た目が堂々としたのはもちろん、アウトドア感も高まっている。しかも空気抵抗値0.33を0.28に下げているのは立派だ。
クラスを超えた装備と新しいインフォテインメントシステム
インテリアはダッシュボード周りの造形はシンプルにまとめられる。他のモデルとの統一デザインだ。
新しいプラットフォームになったことで最新のインフォテイメントが搭載されるのは嬉しい。センターコンソールにはドライビング・エクスペリエンス・コントロールがあり、運転モードの切り替えを素早く行える。キャビンは外から見るより広々している。
Rラインのデフォルトは専用のファブリックシートで、レザーはオプション。運転席と助手席にはリラクゼーション機能がついている。リアシートは3分割の可倒式となる。スライド機構があるのでかなり使い勝手は自由。またこのクルマは後席左右にもシートヒーターが標準装備されていた。クラスを超えた装備である。
2Lディーゼルターボと1.5LターボのマイルドHVを用意
パワートレインは、1.5リッターeTSIの直4ガソリンターボをメインとしたマイルドハイブリッドと、2リッターTDIディーゼルターボの2種類が用意される。前者が150馬力、後者が193馬力だ。組み合わされるギアボックスはどちらも7速DSG。駆動方式はガソリンがFWD、ディーゼルが4MOTION(4WD)となる。
試乗したのはガソリンターボの“Rライン”。エントリーグレードから“アクティブ”、“エレガンス”、“Rライン”となるから、装備が充実しているのは一目瞭然。搭載するエンジンに関わらず、“アクティブ”は17インチ、“エレガンス”は18インチ、“Rライン”は20インチを装備する。
1.5Lとは思えない力強さと乗り心地の良さに感動
では、実際に走らせた印象をお届けしよう。走らせたのは箱根の山道がメインで終始軽快に走り抜けた。
48Vベルトスタータージェネレーターはモーターとして機能し、発進時のトルクアシストは当然のこと、加速もしっかりサポートしてくれる。なので、アクセルを踏み直すような加速でそれが働き、1.5リッターエンジンとは思えない加速を提供する。しかもそのアシストはドライバーが気づかないほど自然な振る舞い。これには少しばかり感動する。すでにゴルフにも同じユニットが積まれていることからもわかるように、信頼性が高いのもウリだろう。というか、それよりもモーターとのマッチングはより洗練されている気がする。SUVの特性に合わせたセッティングだ。
またこのクルマは乗り心地の良さも特筆ポイント。通常の走りでは少し柔らかめで、コーナリングが続きGフォースがかかってくると足運びはしっかりしてくる。そこはVWが得意とする味付けだが、新型はロールの抑えを自然なフィーリングで行う。フロントのダンパーがチカラ技でロールを抑え込むような感覚はない。これにはDCC proが大きく関係する。伸び側と縮み側に別の回路を持つ2バルブの独立制御式ダンパーがこれまでは不可能だった複雑な制御を可能にしたのだ。
人気モデルらしい隙のないフルモデルチェンジだ
というのが新型ティグアンを走らせた印象。ボリュームゾーンに位置するモデルだけに走れば走るほど精緻に手が入っているのがわかる。それに全長4545×全幅1840×全高1655mm(Rラインのみ全長が5mm短く、全幅が20mm幅広)は日常使いの面からも魅力的である。