新車試乗レポート
更新日:2025.02.28 / 掲載日:2025.02.27
知的でレトロ。そこがカングーらしさ【ルノー】【九島辰也】

文●九島辰也 写真●澤田和久
もはや多くを語るまでもない存在感の大きなクルマ、ルノーカングー。日本での人気は高く全世界での大きなシェアを誇っている。ただ、使われ方はヨーロッパ諸国とは違ってプライベートカーとして保有されているのがポイント。あちらでは商業車としての印象が強く白ボディを基本形とするが、こちらはカラフルなボディカラーも好まれている。
独自イベントも開催される人気モデル

そのファクトとなるのが、お馴染みルノーカングージャンボリー。カングーユーザー&ファンをメインとしたルノーブランドの祭典だ。色とりどりのルノー車を思い思いのスタイルで演出するフレンチスタイルのイベントである。
ちなみにルノーカングージャンボリーは、2022年から秋に開催されてきた。昨年は紅葉がキレイな11月に行われ、およそ1500台のクルマと3300人が集結したという。が、今年は5月10日に行われることが1月にアナウンスされている。場所は昨年同様の山中湖交流プラザ きらら、だそうだ。
話はそれたが、そんなイベントの主役となるカングーに乗った。ステアリングを握るのは新型になった直後だからずいぶんと久しぶりになる。この3世代目となる現行型は2020年11月に本国でワールドプレミアされ、2021年春に正式発表、2023年2月に日本導入が始まった。

試乗車は50台限定で販売された「リミテ」で、前後バンパーをウレタンバンパーの未塗装にしている。ベースとなっているグレードは「クレアティフ」で、日本のために用意された仕様だ。エンジンは1.3リッター直4ツインカムガソリンターボで、最高出力131ps、最大トルク240Nmを発揮する。この他にシングルカムの1.5リッター直4ディーゼルターボも用意される。そちらは最高出力116ps、最大トルク270Nmという代物だ。
頑張ってインチアップしないのがカングー流

では実際に動かした印象に話を移そう。
まず、ドライバーシートに座った感覚はやはりフツーの乗用車とは異なる。フロントウィンドウは大きく視界が広いのが特徴だ。また、シートポジションが比較的高いのは個性的だし、センターコンソールを低くしてそれをまたいで助手席側から乗り降りができるのもそうだろう。商業車っぽさはそんなところで感じる。
そしてDレンジに入れてアクセルを踏み込む。すると初期挙動からフランス車全開。ステアリング、アクセルといった操作系のレスポンスは独特で、若干の鈍さを持って動き出す。が、その時の手や足に残るフィーリングはけっして嫌なものではなく、フランス車然として受け入れられる。操作系はのんびりしているが、その先のしっかり感まで伝わってくるからだ。そしてある程度速度域が上がるとキャビンはフラットに保たれスポーティさが顔を出してくる。ステアリングを左右にスッと切り始めると、気持ちよく向きを変えるのはさすがだ。


タイヤは前後205/60R16を履いていた。コンチネンタルのエココンタクト6だ。16インチなので乗り心地はよく、段差での入力もしなやかに対応していた。乗員、荷物のことを考えるとこれはいい選択だろう。がんばってインチアップなどしなくていいのがカングー流だ。
またこのクルマには特別仕様としてCOXボディダンパーが付いているのも忘れてはいけない。これがしなやかな乗り味を提供してくれるのは、ルノー乗りならご存知のことだろう。ユニークなのはOZレーシングのアロイホイールを装着(「リミテ」特別装備)していたこと。ただ、これはドレスアップの面ではおもしろいが、クルマの性格とはマッチしていない気がする。
試乗車は装備も充実していた。ステアリングはチルト&テレスコピック機能付きだし、リアカメラやパーキングセンサーもあって、動かすのに不安はない。それにアイドリングストップやACCが付いているので、商業車の派生モデル感は少ない気がした。
このクルマの醍醐味は抜群の積載量を誇る荷室空間だ

という内容だが、このクルマの醍醐味はやはり積載性に他ならない。全高1810mmのボディは自由な空間を創造する。ほとんどの物が立てて積めるから便利。そしてカングーの醍醐味観音扉が荷物の出し入れを便利にしてくれる。跳ね上げ式の一枚ゲートはどうしても大きくて重くなるからね。こちらの方が使い勝手の面でインテリジェンスを感じる。しかもちょっぴりレトロ感もあっていい感じ。ここが好きなカングーファンも多いのではないだろうか。