新車試乗レポート
更新日:2025.03.18 / 掲載日:2025.03.18

新型プレリュード[プロトタイプ]実走テスト

新時代の電動スポーツへ

2025年の東京オートサロンでカスタム仕様が披露されるなど、市販に向けて具体的な動きが加速しているホンダ・プレリュード。ホンダ自慢の最新メカニズムが投入されるなど、どんなスポーツモデルに仕立てられるのか? 気になるユーザーも多いはずだ。ここでは先行公開された開発プロトモデルの走りをチェックすることで、その実力をお届けしよう。

●文:まるも亜希子 ●写真:本田技研工業

HONDA 新型プレリュード[プロトタイプ]試乗インプレッション

電動時代になっても走りの楽しさを貪欲に追求
プレリュードの登場は、単なる新型スポーツモデルの登場ではない。それは、新時代の「ホンダらしさ」が幕を開けることを意味している。
ホンダは、2050年にカーボンニュートラル達成を目指すことを発表して以来、その実現に向けて邁進する一方で、実は自ら「第二の創業期」と呼ぶほどに、あらためて「ホンダらしさ」とはなんだろうか、我々が提供できる価値とはなんだろうかと、愚直なまでに突き詰めたと聞いている。その結果誕生したのが、次世代技術を目いっぱい詰め込んで「操る歓び」を具現化したプレリュードと言っていいのではないだろうか。
それというのも、1999年に量産ハイブリッドカーである初代インサイトが誕生してから、25年以上にわたってホンダは電動化技術を磨いてきた。モデルとしては身近なコンパクトカーであるフィットから、世界初の量産スポーツハイブリッドとなったCR‐Z、そしてスーパースポーツカーであるNSXに至るまで、あらゆるハイブリッドモデルにチャレンジしている。ただ、世間一般的にはまだまだ「ホンダといえばエンジン」というイメージが強いと感じており、今こそ「次世代に名を残すハイブリッドカーをつくりたい」という強い想いがあるのだという。
そこで掲げられたのが、圧倒的な環境性能の高さと高出力モーターによる上質で爽快な走りを両立する、ホンダならではの2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」をさらに磨き上げ、「五感に響く移動の喜び」を提供していくという目標だ。
具体的には、まず軽快感につながる技術が挙げられる。これはパワーユニットの技術進化や、車体の軽量化を示している。次にSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)化も欠かせない要素とされた。ホンダセンシングをはじめ、EVとの共通化によって進化可能なポテンシャルを確保。とくに、つながる・見守る・進化するといった、生活の可能性を拡げる技術に注力することを示している。これらを多方から突き詰めていくことで、さらに魅力的な「五感に響く」技術を実現していくことが発表されている。

聴覚と視覚にも訴えかける「Honda S+ Shift」
その「五感に響く」技術の中で、いち早くプレリュードに搭載され、そこから今後展開される次世代e:HEVモデルに搭載されていくことになる技術が、「Honda S+ Shift(ホンダ エスプラスシフト)」だ。これは五感を刺激し、ドライバーとクルマがよりシンクロナイズ(同期)するような、爽快で意のままの走りを最大化して提供するために開発された新技術になる。
大きな特徴としては、聴覚・視覚・体感で訴えかける新システムだということが挙げられる。もともとe:HEVは、モーター駆動とエンジン直結をシームレスに切り替える機能と、高効率エンジンに2つの高出力モーターを駆使することで、運転状況に応じたエンジン回転数を緻密にコントロールできる強みがあるが、そこにエスプラスシフトの新機能を追加することで、加速感やコントロール感が高まるほか、ASC(アクティブサウンドコントロール)がスピーカーからも音を提供することで、走りに合わせたリニアで迫力のあるサウンドも届けてくれる。
減速では、もう1つの駆動用モーターを活用して、あたかも有段ギヤを変速したかのようなドライブフィールも実現。e:HEVはメカニカルな変速機構は持っていないが、エスプラスシフトが作動する時は、パドルがギヤセレクターの役割を担い、従来のスポーツDCTよりも速い応答性での変速フィールが得られる。同時に、ドライバーの目の前のメーターがタコメーター付きの表示に切り替わり、視覚からも変速のイメージを増幅させる演出もプラスされる。切れ味の鋭いシフトフィールと迫力あるサウンド、瞬時に反応するメーターの相乗効果で、新時代のホンダらしさを感じることができる「操る歓び」が完成しているのだという。

抜群のハンドリング性能。スポーツカーの資質も十分
そんな期待を胸に、クローズドコースでプレリュードプロトタイプに試乗することができた。外観はまだカモフラージュで覆われていたが、ロー&ワイドなクーペシルエットはスポーティでカッコよく、早く走らせてみたくなる。
左ハンドルの試乗車のドアを開けると、新開発されたというフロントシートが迎えてくれる。クッションは強めのハリで身体を支えてサイドからほどよく包み込んでくれるような、スポーティだけど上質感のある座り心地。2+2シーターで、長身の人でも座ることができるリヤシートが往年のプレリュードから継承されていた。太めのステアリングに手を添え、ボタンタイプのシフトを押そうとすると、そこに現れたのが「S+」の文字だ。
ゆっくりとアクセルを踏み込んでいくと、しっかりとした接地感となめらかな加速フィール、そして「まるでV6エンジン?」と驚いてしまうような気持ちのいい音が響いてきた。速度を上げていくにつれてグッと重心が下がるような、自分がスーッとプレリュードに組み込まれていくような、久々に感じる「いいスポーツカー」にしか出せない一体感が押し寄せてくる。
心地よく響く音のリニア感も想像以上で、あえてパドルを弾いて減速してみると、ブリッピングの音までしっかりリアルで気分がどんどん高揚していく。ついついアクセルを奥まで踏みたくなり、直線では空気を切り裂くような加速フィールも味わうことができる。
そこからワインディング路に入っていくと、後ろから押し出されるような力強さと、ギュッと思いのままに減速できるメリハリのある操作感で楽しさ倍増。コーナーの手前ではステアリングを切ろうかなと頭で思った瞬間に、すでに鼻先が行きたい方向へと吸い込まれていくようで、自然に一筆書きの弧を描くことができる。タイトなコーナーでもしっかりと操れる爽快感に、運転が上手くなったような気分だ。これなら「エンジンのホンダ」が好きな人も、抵抗なく電動化モデルの走りに没頭できるのではないだろうか。

エンジン車の好フィールを電動車にも巧みに注入
このプレリュードプロトタイプでは、これまでのハイブリッドモデルがあの手この手でエンジンの存在感を消そうとしていたのに対して、エンジンの良さをもっと引き出し、最大限に使い倒すことで魅力的なホンダを表現していくんだ、という強い意志が感じられた。これぞホンダの独自性であり、生きる道なのだと言わんばかりの潔さだ。フィットに「RS」を復活させてe:HEVを設定したり、シビックのMTモデルを「RS」として走りに振ったり、最近のホンダはとても面白くなってきたと感じている人も多いはず。プレリュードに乗れば、間違いなくそんなホンダの新時代の始まりをより強く実感できるはずだ。

プラットフォームはシビックタイプR用をベースに開発されるが、パワートレーンは2ℓターボではなく、2ℓ直4エンジンにモーターが組み合わされるe:HEVの最新仕様を搭載する。
「Honda S+ Shift」をオンにすると、ドライビングのリズム感は明らかに良くなる。回転変化やエンジンサウンド等の演出も違和感は皆無。
攻めたてるようなスポーツドライビングが求められるスポーツカーではなく、ツーリングを主体にした信頼感の高い走りが楽しめることも魅力。

ホンダの次世代技術「Honda S+ Shift」とは?

聴覚と視覚に訴えかける新システム「Honda S+ Shift」は、2つの大出力モーターとアクティブサウンドコントロールシステムを連動させることで鋭いシフトフィーリングを実現する、新世代e:HEVの目玉機能。メカニカルな変速機構を持たないe:HEVにおいても、Honda S+ Shift作動時にはパドル操作による変速も行い、まるで有段ギヤを変速したようなドライブフィールを実現する。プレリュードを皮切りに次世代e:HEV搭載の全モデルに順次搭載していく予定という。

操作スイッチを切り替えることで、e:HEVモデルの走りが一変。加減速時に緻密にエンジン回転数をコントロールし、ダイレクトな駆動レスポンスと鋭い変速を実現することで、内燃機車に近い変速フィーリングが楽しめるという。
EVと共用可能な電動AWDユニットが次世代e:HEVシステム搭載モデルから採用される。内燃機車の機械式AWDと比較すると、最大駆動力が向上されることがメリット。それに伴い、発進加速性能なども向上する。
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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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