新車試乗レポート
更新日:2025.04.17 / 掲載日:2025.04.17
BYD シーライオン 7はハイコスパな電気SUV【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
「Build Your Dreams」といったスローガンで自らを表現するBYDだが、我々日本のカーガイがこのブランドを理解しているかといえばそうでもない気がする。メディアを通して取材する立場からも接する機会は少なく、正直全容を把握してはいない。バッテリー製造からスタートした会社云々といった素性と現行ラインナップを知識として取り入れているくらいだろう。
なので、そのポジションを数字で追いかけると感心する。2024年の販売台数は全世界6位で427万台だそうだ。5位のゼネラルモータースとの差は90万台。思いのほか上位に食い込んでいる。
モデル展開はBEVとPHEVで構成され、それぞれ41.5%、58.5%の割合になっている。BEVのイメージが強いが、PHEVの比率は高い。日本では、ドルフィン、ATTO 3、シールが販売されている。
メカニズムはシールからさらに進化している

そんな中、今回日本に導入されたのはシーライオン7となる。4ドアにハッチバックを備えるSUVだ。名前からわかるようにこのクルマは彼らの“海洋シリーズ”で、ベースになったe-プラットフォーム3.0にシールから採用された技術を追加している。駆動用バッテリーは彼らオリジナルのブレードバッテリー。それを車体の一部として形成させボディ剛性を高めた。細かい話では、ブレードバッテリーの積み方がシールとは異なるそうだ。90度向きを変え、さらに効率よく敷き詰めているらしい。
グレードは2つで、RWDの「シーライオン7」とAWDの「シーライオン7 AWD」が用意される。車両重量は2230kgと2340kg。フロントモーター+補器類分の差が生まれている。二駆がRWDであることからわかるように、基本的に後輪を動かして走る。AWDの前輪は加速時に路面を駆く働きをするためのもの。タイヤはRWDが標準で19インチ、AWDが20インチという設定。前者がコンチネンタル エココンタクト6、後者がミシュラン パイロットスポーツEVを装着する。
パワーソースとなるバッテリーの容量はどちらも82.5kWh。パワーはRWDが最高出力230kW(312馬力)/最大トルク380Nm、AWDはそれプラス前輪の160kW/300Nmとなるので、システム総合で390kW(530馬力)/690Nmを発揮する。WLTCの航続距離は590kmと540kmだ。充電は普通充電6kw、急速充電105kWとなる。寒冷地では事前にバッテリーに予熱を入れて充電時間を短縮する機能を備えている。
乗り心地はコンフォート系で20インチでも快適

では実際に走らせた印象だが、総じて乗り心地がいいのが目立った。特にAWDの方がそれが際立ち、キャビンをフラットにキープする。シールが少しスポーティに振っているので同じベクトルかと思いきやこちらはコンフォート系と言える。ダンパーがしっかり効いていて、入力に対して可変対応しているのがわかる。AWDは20インチであることを鑑みると、この乗り心地は秀逸。タイヤそのものの性能は高いが、足のセッティングがいいバランスを生んでいる。
パワーに関してはとにかく速い。AWDの加速は特にそうで、フロントタイヤがトルクステアを発生させながら加速していく。この感覚は懐かしい。冷静に考えればこのサイズで530psなのだから当然といえばそうだろう。このパワーを受け止めるボディをつくるためにブレードバッテリーを使って剛性を高める必要があったのは想像しやすい。
縦横回転するセンターディスプレイなどBYDらしさがある室内

といったシーライオン7の個性はインテリアかもしれない。BYDらしさがここに表現されているからだ。縦横向きを変えられる大型センターモニターや細かい演出の入ったデジタルメータークラスターがそう。よく見ると表示される情報の背面に海の景色が広がっている。かなり凝ったグラフィックだ。スタートやドライブモードの切り替え、シフトレバーに値する物理的スイッチはセンターコンソールに集約される。この辺は直感的に使えるのがいい。



スタートプライスは500万円を切り、さらに補助金も得られる
そんなシーライオン7の魅力の一つは価格だろう。RWDで税込495万円、AWDで572万円というタグが付けられた。装備面からしてもこれはお値打ち価格。ドイツ系のBEVは高いからね。補助金もあるし、この辺の価格帯が増えればもう少しBEVはメジャーになれるかもしれない。


