新車試乗レポート
更新日:2018.10.25 / 掲載日:2017.12.26
MAZDA CX-8試乗詳報&ライバル比較
■主要諸元 (XD Lパッケージ 2WD)
●全長×全幅×全高(mm): 4900×1840×1730 ●車両重量(kg):1830 ●エンジン:2.2L直4DOHCディーゼルターボ(190PS/45.9kg・m) ●JC08モード燃費:17.6km/L ●燃料タンク容量(L):72[軽油] ●最小回転半径(m):5.8
パワートレーン
2188cc直4DOHCディーゼルターボ(190PS/45.9kg)
XD【6速AT】FF:319万6800円/AWD:342万9000円
XD プロアクティブ【6速AT】FF:353万7000円/AWD:376万9200円
XD Lパッケージ【6速AT】 FF:395万8200円/AWD:419万400円
外観の印象はCX-5を長くしたストレッチ仕様に見えるが、ひとたびアクセルを踏み込むと、上位車種を目指し開発されたモデルであることが分かった。CX-5と比較すると車重は約190kgも重くなっているのだが、走り出しの印象はそのハンデをあまり感じさせない。走行中の余力感はCX-5以上である。
最終減速比のローギヤード化により各速のエンジン回転数はわずかに高まっているが、巧みな変速制御は健在で、中高速域の巡航時は、ほぼ2000回転以下で賄ってしまう。巡航ギヤを維持した状態での加速の切れも良好で、アクセルを軽く踏み増す程度の加速反応も向上していた。
100km/h巡航のエンジン回転数は約2000回転。反応もトルクもゆとり十分で、大半の加速や登坂はトップギヤの6速を維持したままこなすことができる。このゆとりはACCとの相性もよく、前走車の加減速に対しても穏やかな追従走行を可能とする。
また、静粛性の向上も見逃せない。遮音防振対策を施した効果もあるが、エンジン本体が静かになった感じである。ディーゼル車特有の放射音はさらに減少し、巡航中はエンジン音よりもロードノイズのほうが目立つほどだ。そのロードノイズにしてもSUVとしては静かであり、騒音全体がバランスよく抑えられている。高速静粛性は明らかに向上している。
操縦性も最近のマツダ車に共通する揺り返しの無駄な挙動や応答遅れが抑えられ、素直さが見所。大まかな特性やテイストはCX-5を踏襲しているが、重質な味わいが加わった。機敏さを基準にすれば多少ながら「鈍」になったとも言えるが、反応の正確さと穏やかさの両立ではCX-5より一枚上手。サイズと重さがもたらす質感のメリットを活かしながら、マツダ車のフットワークの長所を損ねていないのに感心させられた。
乗り心地の印象も同様。長いホイールベースが有利なのは言うまでもないが、サスストロークの動き出しと収束が滑らかになっている。それでいて重さ負けで揺り返すような動きも少ない。締まりとか粘りの利いたしなやかさだ。CX-5との差異だけを書き出すと、走りの志向が変わったように誤解されそうだが、そうではない。8、9割方はCX-5と共通であり、それをしっとりとした大人味側にシフトさせた感じだ。
後席の居心地の良さは間違いなくトップクラス
もちろん、キャビン空間のゆとりも見逃すことはできない。さすがにサードシートの居住性は大人が収まるには必要最低限で、足元スペースもヘッドスペースも余裕がない。だが、サードシートは実用性の大きなアドバンテージであり、SUVの3列シート車としては十分な実用性を持っている。本格ミニバンのような多人数乗車適性はないもの、これくらいで十分と感じるユーザーは多いはずだ。
またサードシート以外にも多くの優位性を持っている。大型センターコンソールを備えたLパッケージでなくても、後席の居心地はCX-5の一歩上を行く。居心地向上の決め手はリクライニング機構である。
CX-5の後席バックレストは固定式。座面高に対して寝かせ気味のシート設定で、車外の風景を楽しみたい時は上半身を起こさなければならない。CX-8のセカンドシートなら状況に応じて最適な着座姿勢が採れる。3列シート車のセカンドシートにスライド&リクライニング機構が備わるのは当たり前だが、それが後席乗員の寛ぎを向上させている。Lパッケージの後席はSUVらしからぬリッチな気分が味わえる。
ボディサイズが生み出す車格感や、実用性の違いだけに着目すると、CX-5との価格差は大きすぎると感じてしまう。ミニバンのような多人数乗車適性や多様な積載性があるわけでもない。走行性能こそ快適性や余力感、質感は向上しているが、大ざっぱに見ればCX-5の姉妹車、あるいは改良モデルと言えないこともない。
だが、装備や内装のグレードアップ分を含めて考えると、この価格差は納得できる。特にキャビン空間のゆとりと上質感は、価格以上の価値は十分にある。大人4名乗車でプレミアムを堪能したいと考えているドライバーならば、豪華なキャプテンシート仕様は、まさにツボにハマる存在かもしれない。
シートやインパネまわりも車格以上の仕立てだが、Gになるとさらにパワーアップ。内装パネルが金属調+ソフト塗装になり、シート表皮も上級ファブリックに変更。さらには本革シートをOPで選択できるようになる。
通常時の荷室床の奥行きは500mm(編集部計測値)と手狭感は否めない。サードシートを格納すれば1150mmほどまで拡大されるので、サードシートを格納した状態で使われることも多そうだ。
マツダコネクトも最新型にアップデート。ダッシュボード部に設けられる7インチモニターはコマンダー操作に加えて、タッチパネルにも対応。SDナビはオプション。
上級志向を求めるならば、シートがパッションレザー仕様になるLパッケージを選びたい。サードシートはやや手狭だが、セカンドシートの快適性は間違いなくトップレベルだ。
予約受注台数が7000台を突破! 人気モデルに踊り出そうだ
CX-8の製造は宇品工場が担当。現時点の販売計画台数は1200台のため多くのバックオーダーを抱えるが、製造台数は増えることが予想される。
9月に発表された時から事前予約を受付けていたCX-8だが、正式発売までの3か月で7362台を受注台数を獲得。この台数は想定していた月間販売計画台数1200台の約6倍。エントリーグレードでも300万円を超える上級モデルにもかかわらず、多くのユーザーが購入を即断した格好だ。ちなみに本誌調べによると現時点で納車待ち3か月以上。年度末商戦では各ディーラーに実車が展示されるなどを考えれば、さらに台数が増え、場合によっては納車待ちが伸びる可能性が高い。購入を検討しているユーザーは注意が必要だ。