新車試乗レポート
更新日:2018.12.01 / 掲載日:2017.12.26
実力判明! SUZUKI クロスビーvs SUZUKI ハスラー 兄弟対決

かなりの実力を備えた大注目モデルだ!
東京モーターショーでスズキから2車の市販前提モデルが出品されていた。一車はすでに発表されたスペーシアのFMC車、もう一車がクロスビーである。新設車種のクロスビーは、その外観を見ても分かるようにハスラー同様のコンセプトをスモールカー市場に展開したクロスオーバーSUVだ。
SUV市場の拡大に乗ったモデルとも言えるのだが、新型スペーシアと並べてみるとクロスビーの狙いが見えてくる。スペーシアはファミリー用途に向けたスーパーハイト系だが、新型では道具感覚あるいはSUVテイストを加えてレジャー志向も強化している。ただし、レジャーにのめり込むというより、「暮らし」を遊び心で楽しくすると考えた方が適当だろう。
この考え方の延長上にクロスビーは位置する。もちろん、新型スペーシアでは主にキャラの演出となるが、クロスビーは性能や機能面でも遊びのテリトリー拡大を狙っている。こういったコンセプトの原点に位置するのがハスラーであり、その点では拡大版ハスラーと捉えるのも的外れではない。
クロスビーの車体サイズで注目は全高。約1・7mの全高はSUVでは珍しくないが、高い床面地上高のためではない。クロスビーより若干低い全高のハスラーの室内高は1250mmである。ワゴン型コンパクトミニバンのシエンタほぼ同レベル。同様にクロスビーの高い全高はキャビンスペースの拡大が狙いだ。 実用性のこだわりはスペースだけではない。スライドドアこそ採用していないが、ユーティリティ思想はソリオをベースとし、左右独立のワンタッチダイブダウンの後席格納やスライド機構など、居住性と積載性を多彩にアレンジできるのが特徴だ。
クロスビー。兄弟と言って差し支えない、両車のファニーな外観。
ハスラー。軽規格があるハスラーに比べ、クロスビー はとくに長さと幅が拡大。クロスビーのサイズ感はソリオより少しだけ長く、低い。
クロスビー 。イグニスやソリオで実績のあるマイルドハイブリッド。CVTではなく6ATで、力強くキビキビした走りが楽しめそうだ。4WD車はスポーツモード、スノーモードも用意。
ハスラー。Aを除くCVT車にS-エネチャージを搭載。Aを除く4WD・CVT車にはヒルディセントコントロール、グリップコントロールが搭載されるのも魅力。
もうひとつ見逃せないのが、アウトドアレジャー用途への配慮。上級設定のハイブリッドMZへの採用だが、シート表皮は撥水加工ファブリック、荷室フロアには防汚タイプを採用。濡れ物や汚れ物を積むこともあるレジャー用途向けの設計である。
また、MZ/MXの両グレードともに荷室床下に取り外し可能な大容量ラゲッジアンダーボックスを装備する。取っ手付きの樹脂製大型バスケットとも言える形状で、一体成型の完全防水。かなりの容量があり、水桶や洗濯カゴの代わりにも使える優れ物。プラスαの工夫で「もっと便利」は軽乗用車市場で培ったスズキの得意技でもあり、コンパクトなクロスオーバーSUVでも大きなアドバンテージのひとつである。
ハスラーと比較しても一回り以上拡大した室内は居住性では寛ぎを、実用面では積載性の余裕をもたらすが、細かな使い勝手の工夫を加えてレジャー用途適性を高めているのも見所だ。
走行ハードウェアはシャシー周りはイグニスをベースとしつつ、パワートレーンは新設。
搭載エンジンは3気筒1Lの直噴ターボ。エンジン本体はバレーノに搭載されるものと同様だが、マイルドハイブリッドと組み合わされているのが特徴である。
マイルドハイブリッドはSエネチャージから発展したシステムで、駆動/始動用モーターと発電機を兼用するISGと回生充電及び駆動補助用のリチウムイオン電池により、エンブレ回生発電の効率化と発進や加速時の電動駆動補助領域の拡大を図っているのが特徴だ。
バレーノの動力性能からして、クロスビーも高速や山岳路では同車格ではトップクラスのゆとりがあると予想される。それでいてマイルドハイブリッドで低中速のドライバビリティと燃費も上々、タウン&レジャーともに使いやすそうなパワートレーンだ。
動力性能の余裕もハスラーに対するクロスビーの大きな長所だが、4WDシステムのグレードアップも見逃せない。基本システムはイグニスやハスラー同様にFFをベースにしたビスカスカップリング式を用い、電子制御によるスリップコントロールを採用するようだが、「スポーツ」や「スノー」などの走行モードを設定し、様々な走行状況における性能と安心感の向上を図っている。
後退時ブレーキサポートは約10km/h以下で作動。全方位モニター用カメラパッケージは対応ナビの装着が必要だが周囲を立体的に確認できる3Dビュー、左右から近付く人・物を検知する左右確認サポート機能付き。
上位グレードには単眼カメラとレーザーレーダーを組み合わせたデュアルセンサーブレーキサポートを搭載。人も検知する。
なお、安全&運転支援機能ではスズキでは最新仕様となるデュアルセンサーブレーキサポートが採用される。これは単眼カメラとレーザーレーダーの組み合わせにより前方の前方車両や歩行者を検出。ACCやLKAは装備されないようだが、前進/後退対応の誤発進抑制機能などタウンユース向けの安全装備が充実。また、俯瞰表示式全周モニターも用意され、スモールクラスではトップレベル。
タウンカーに使いやすいレジャーワゴンとしてかなり魅力的な内容を備えたクロスビーだが、キャラや適応用途が被るハスラーは気になる存在。安全装備を充実させてお値打ち価格のFリミテッド 2(NA車)やクロスビーのシステムと同等機能を備えたデュアルカメラブレーキサポートと専用の内外装グレードアップを施したJスタイル3(NA&ターボ)の2タイプの特別仕様を追加して魅力を強化。車両価格だけでなく、税金等の維持費のメリットもあり、クロスビーの最大のライバルはやはりハスラーになりそうだ。
参考出品車のものだが、ティザーサイトを見るとやはりほぼこのままの姿で市販。
4WD車のナビ下部分には走行モードなどのスイッチを確認。
ハスラーよりもサイドサポート性に優れていそうなシート。
大人5人フル乗車も長距離でなければこなせる室内空間。
前席シートヒーターも採用。上位グレードにはクルーズコントロールも用意。
後席独立スライドシート、シートバックのテーブル(上位グレード)も採用。
ハスラー。インパネもシートも、デザインコンセプトは少し似ているが、ハスラーの方がポップでキュート。
上位のハイブリットMZなら防汚タイプのラゲッジフロアに。アンダーボックスの大きさは2WD車/4WD車で異なる。座席下ボックスなど、収納類も豊富に用意される。
走りの余裕、広さ…… 比べるとやっぱり クロスビー!
大人っぽくなったもののクロスビーの外観もまた「アラレちゃん」キャラである。キャラでも使い勝手でも遊べるのが魅力。もし、キャラ重視ならばコスパも含めてハスラーに分があるが、汎用性を考えるとクロスビーを選ぶのが無難。タウンユース中心ならハスラーでも悪くないが、ターボ車でも距離を延ばすレジャー用途では余裕がない。レジャーワゴンとして使うならクロスビーのキャビンと走行性能の余裕は大きな強味となるだろう。
提供元:月刊自家用車