新車試乗レポート
更新日:2018.12.01 / 掲載日:2018.02.28

SUVザ入門 そのルーツに迫る!

現在販売されているSUVは、一言でくくるには難しいほど、多種多様なモデルが揃う。これはSUV独特の成り立ちと発展の歴史によるところが大きい。SUVは如何にして生まれ、どのように進化したのか? その流れを押さえておくと、SUVへの理解がより深まるはずだ。

北米発の武骨なSUVを日本の企画が進化させた

 米国発祥のSUV=スポーツ・ユーティリティ・ビークルとはどんなクルマかを、正しく定義・説明できる日本人は少ないだろう。そもそも日本ではスポーツと聞くと「競技」や「体育」を連想するが、英語圏でのスポーツという単語には、「余暇」や「遊び」といったニュアンスが強い。
 だからスポーツカーも、本来は「遊びグルマ」の意味合いだし、SUVも「遊びに使いやすいクルマ」程度の言葉で、車型に厳密な定義はない。セダンのようなボディ形状由来とは、違う概念のカテゴライズなのだ。
 ともあれ、その歴史はオフロード4WD車とピックアップトラックの、2つの流れに大別できる。オフロード車は軍用車が起源のジープのチェロキーが代表だし、ピックアップトラックは1948年に初代が登場したフォードのFシリーズが、今日に至るまで長く北米市場のベストセラーだ。
 早くからクルマが普及した米国では、仕事用と遊び用の2台持ちがポピュラー。その遊び=スポーツ用のクルマとして、ツール感覚でタフに使えるそれらのモデルは人気を呼んだのだった。
 日本でそうした遊びグルマがマイカーとして選ばれるようになったのは、パジェロやハイラックスサーフがヒットした’80年代初頭からだ。オフロード型とピックアップ型、それぞれの代表でもあるそれらは、キャンプやスキーなどを楽しむ、豊かな暮らしの象徴として人気を呼んだ。SUVという言葉はまだ知られておらず、日本ではRV=レジャービークルという新しいカテゴリー名で呼ばれた。
 一方、オフロード型にもピックアップ型にも属さない、今日のクロスオーバーSUVの萌芽も、その頃に日本で生まれている。
 1982年に、4WDピックアップトラック、フォルテのシャシーに1BOXのボディを載せたデリカ4WDが登場。モデルチェンジの度に快適性を向上させながら、今日のデリカシリーズのデリカD:5へと至る。ミニバンとオフロード車をかけあわせた、クロスオーバー車の先駆けと言える商品企画だった。
 1994年に北米で発売されたスバルのアウトバック(国内では当初レガシィグランドワゴン)も、ステーションワゴンとオフロード車をクロスオーバーして誕生。海外にも影響を与え、アウディオールロードクワトロやボルボXC70などのフォロワーを生んだ。
 ’80~’90年代にかけて、それらが人気を呼んだいわゆるRVブームは、高性能や高級感といった従来の価値観とは違う、ライフスタイルに合わせたクルマ選びの視点をユーザーにもたらした。
 日本におけるオフロード車やピックアップは、かつては業務用のクルマと見なされていた。それがRVブームをきっかけに、遊びのための使いやすいクルマ、すなわちSUVとして、当たり前に選ばれるようになったのだ。

クロカン&トラックから発展したのがSUV誕生の最初のきっかけ

  • MITSUBISHI パジェロ
    クロカン4WDの代表モデル

    ジープのライセンス生産で培った4WD技術を活かした近代的なオフロードカーが、’82年に初代が登場したパジェロ。レジャーブームに乗って年々乗用車的な快適さを増す一方、本格的なオフロード性能も磨き上げられた。

  • TOYOTA ハイラックスサーフ
    トラック系SUVの元祖

    ハイラックスの荷台に、FRP製のシェルを架装したカスタムが北米で人気を呼んだのを受け、’83年にトヨタのカタログモデルとして発売された。北米では4ランナー、日本ではハイラックスサーフの名で好評を得た。

日本の気候風土や文化が世界のトレンドも生んだ

 ミニバンとオフロード車、ステーションワゴンとオフロード車といった、異なる車型を自在にかけあわせる日本の商品企画は、乗用車のプラットフォームを使った、快適なオンロードSUVという最大の果実を生む。1994年のRAV4と、翌年のCR -Vが先駆けだ。
 早くからクルマが生活に根づいていた欧米人の自動車観は、意外と保守的だ。北米では、タフな使い方をされるオフロード車やピックアップはフレーム付きが常識。一方、巡航速度が高い欧州では、重いフレーム付きで、さらに前面投影面積が大きいオフロード車では、快適な高速走行は望めない。あくまでも特殊用途車と考えられていた。
 ところが、軽量なモノコックボディが組み合わされた日本発のRAV4とCR -Vは、快適な乗り心地や高速性能を備えており、RAV4は軽快なハンドリングが、CR -Vはコラムシフトの採用などによるキャビンの広さや快適さが、欧米でも受け入れられたのだ。
 さらに同様の成り立ちを持つ、より上級のオンロードSUVとして1997年にハリアーが登場した。北米ではレクサスRXとしてヒットすると、その評価は決定的になった。いまや欧州の高級ブランドにさえ後を追わせ、メルセデス・ベンツにはMクラスを、BMWにはXシリーズを作らせることになったのだ。
 クルマ作りの歴史が浅いがゆえに先入観に捕らわれない日本車の商品企画は、その後も自由奔放に進化した。豪雪地帯が多い日本では、もともと4WDのニーズが高い。混雑した狭い街中走行が多いのも、高い視点で前方の見通しが利くSUVの人気を後押しした。
 加えて、山がちでワインディングロードが多く、敏捷なハンドリングも求められるとなれば、クーペとSUVを融合させたようなクロスオーバーが生まれたのも自然な発想だ。その代表的なモデルがジュークやC -HRで、海外市場でも好評を得ている。日本独自の軽ハイトワゴンとSUVをクロスオーバーしたハスラーのヒットも、そうした日本の風土から生まれた商品企画の勝利だった、と言えるだろう。
 今後のSUVの注目株は、ミニバンとSUVの洗練されたクロスオーバーだろう。美しいデザインに3列シートを備えたCX -8は、すでに予想を上回る受注を獲得している。日本から発信されるSUVの商品企画は、いまや市場のトレンドを大きく左右するほど。これからも世界を牽引するに違いない。

+αの機能を追加した派生モデルが登場

  • MITSUBISHI デリカスターワゴン4WD
    1BOX型と4WD車のコラボモデル

     1BOXのボディを、4WDトラック、フォルテのシャシーに載せたデリカ4WDは’82年に登場。新しいレジャーカーとして注目された。バブル時代のスキー場の駐車場では、最強のファミリーミニバンとして君臨した。

  • SUBARU スバルアウトバック
    ワゴンにSUV風味をプラス

     ’93年に登場した2代目レガシィをベースに、主に北米市場をターゲットとして生まれたのがアウトバック。車高を上げ、樹脂製のフェンダーモールなどのSUVらしいディテールを纏うスタイルは、世界にフォロワーを生む。

大人気クロスオーバーSUVの元祖たち

  • TOYOTA RAV4
    SUV人気を決定づけた金字塔

     セリカのプラットフォームを使った、モノコックボディのSUVは当時新発想。’94年に登場すると、オン/オフロード性能のバランスの取れた走りや快適性で、世界にオンロードSUVの価値を認知させるヒットとなった。

  • HONDA CR-V
    使い勝手の良さでも高い評価

     CR-Vは、シビック系のプラットフォームを使って95年に登場。フラットなフロアやコラムシフトによるウォークスルーなどで、ミニバンライクな広さと使い勝手を実現。RAV4とは異なる個性でファンを獲得した。

世界でも勝負できる実力モデルが誕生

TOYOTA ハリアー
プレミアムSUVの第一人者

 カムリのプラットフォームを使い、高級セダンの快適性を備えたSUVとして’97年に誕生。海外では高級ブランドのレクサスRXとして販売されてヒット。世界の高級ブランドにオンロードSUVを作らせるきっかけとなった。

幅広く、自分好みを探せる現行型は個性派SUVの宝庫

  • TOYOTA C-HR
    スタイリングと走りが売り

    2016年に登場して大ヒットとなったスペシャリティSUV。ニュルブルクリンクでも鍛えた走りは、2WDの1.8ハイブリッドでも十分スポーティだが、4WDの1.2Lターボはサーキット走行さえこなせる仕上がり。

  • NISSAN ジューク
    個性派SUVのロングセラー

    2010年に登場した個性派コンパクトクロスオーバーSUV。ラリーカーを思わせるマスクなど、スポーティな内外装に偽りはなく、走りも機敏。とくに190PSの1.6L直噴ターボを積むトルクベクトル付きの4WDは圧巻だ。

  • MAZDA CX-8
    3列シートを持つ新感覚SUV

     魂動デザインに3列シートを備えたクロスオーバーSUVは2017年に登場したばかり。3列目も大人が十分にくつろげる広さと快適性を備える。ミニバンからの撤退を発表しているマツダの、ミニバンに代わる提案だ。

  • SUZUKI ハスラー
    軽SUVの未来を切り開いた

    ワゴンRがベースながら、広い室内とキュートなデザインで発売されて以来、コンスタントな人気を集める軽クロスオーバーSUV。4WDにはヒルディセントコントロールなどの、本格的なオフロード機能も搭載している。



提供元:月刊自家用車

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グーネットマガジン編集部

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