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新車試乗レポート
更新日:2018.03.01 / 掲載日:2018.03.01

冬タイヤ【ガチ】テスト in 旭川

1月末、ヨコハマのスタッドレスタイヤ勉強試乗会が開催された。特別製作の比較用タイヤも用意されたおかげで、パターンやコンパウンドの違いをガチで比べることができた。氷点下の旭川で体感した、最新スタッドレスタイヤの実力をお伝えする。

1月末、ヨコハマのスタッドレスタイヤ勉強試乗会が開催された。特別製作の比較用タイヤも用意されたおかげで、パターンやコンパウンドの違いをガチで比べることができた。氷点下の旭川で体感した、最新スタッドレスタイヤの実力をお伝えする。

icon TTCH(横浜ゴム北海道タイヤテストセンター)

  • 冬用タイヤの試験も可能な、北海道旭川市のタイヤテストコース。’18年1月、全長119m×全幅24mの屋内氷盤試験場を開設。

  • 新設された屋内氷盤試験場の外観。

  • 屋内試験場は大型車もテスト可能なスペースを確保。

  • 試乗日は朝から徐々に気温が上がったが、屋内試験場の氷温はマイナス5~4度と安定。

主役は“冬の怪物”、アイスガード6

最先端シリカ配合ゴムの性能に驚愕

氷上性能の向上に加え、燃費や騒音、ウェット性能もアップ
 従来のアイスガード5プラスと比較して、多くの性能が向上。特筆点は、本分ともいえる氷上性能に加え、ウェット制動や燃費に関わる転がり抵抗が向上していること。ほかに低発熱化でエネルギーロスを改善するなど、性能向上は雪上/氷上だけに留まらない。

icon YOKOHAMA ice GUARD 6

ヨコハマ アイスガード6(iG60)
●価格:オープン価格
●問い合わせ:横浜ゴム(株)
TEL. 0120-667-520
http://www.y-yokohama.com/product/tire/

キャッチコピーは「冬の怪物」。従来比で氷上制動15%/ウエット制動5%向上、転がり抵抗2%低減、さらにノイズ低減も達成。

スタッドレスの優位性が個別比較で明確に

 目に付くところと言えばトレッドパターンの違いくらいで、タイヤの技術革新と言われても具体的に理解するのは難しい。今回の試乗は今シーズンに横浜ゴムから発売されたスタッドレスタイヤ「アイスガード6(iG60)」が対象だが、いつものタイヤテストとは趣きがかなり違っている。iG60に搭載された新技術を個別に試す。何がどこでどう効いているかを技術ごとに実感できるのだ。
 まずは見た目でわかるトレッドパターン。一言で氷雪上性能と言うが、氷上と雪上ではグリップのメカニズムが違う。氷上は滑りの原因となる水膜を排除してトレッド面と路(氷)面を密着させてグリップを確保。雪上はトレッドパターンの溝で雪を噛み込み、その時にできる雪柱を引きちぎる力(せん断力)でグリップ力を発揮する。この試乗では、前モデルとなるiG50プラスと同じコンパウンドでパターンのみiG60としたテスト用タイヤで、雪上とアイスバーン制動を行った。
iG60のパターンの特徴はiG50プラスから採用された非対称パターンを進化させ、イン側は氷上性能向上を、アウト側は雪上性能向上を主に役割分担をはっきりさせたこと。また、氷上性能向上ため全ブロックに細かく入ったジグザグのサイプは倒れ込みを抑制する3D形状を採用し、2D対比で剛性が51%向上している。
 もう一方の決め手、コンパウンドの性能チェックのテストにはびっくり。氷雪上走行なのにスリックタイヤ、溝なしのつるつるである。比較コンパウンドはウインターラジアル用。ウインターラジアル用コンパウンドは雪上性能と高速性能の両立を図ったタイプで、低温の温度依存性が高い。つまり極低温では柔軟性が低下する。
 iG60用は低温でも硬くなりにくいシリカ配合コンパウンド。シリカ配合技術はスタッドレスと省燃費タイヤの鍵を握る技術であり、横浜ゴムではゴムとシリカを効率良く結合させるシリカ高反応ホワイトポリマーを開発。ゴムと混ぜると「ダマ」になりやすい多量のシリカを、均質に分散させることに成功した。また、スタッドレス用に低温適性を高めたゴムの経時硬化を抑制するオレンジオイルSや、接地面の吸水効果を高める新マイクロ吸水バルーン、エボ吸水ホワイトゲルなどを採用。これにより極低温域でもiG60のコンパウンドは柔らかさが保たれ、接地面除水性能も向上。このテストではコンパウンドの優秀性も実感させられた。

ガチテスト 1 パターン違い

icon 同じゴムでパターンを比較

※以下、氷上ブレーキテストはすべて進入速度30km/hからのフル制動(ABS作動)。

 比較したのはiG50プラスと、iG50プラスのゴムでiG60のトレッドパターンとした特製タイヤ。パターンのみが違うタイヤで雪上8の字走行や氷上制動テストを実施。特に氷上制動では、複数回のテストで常に上の写真のように明確な差が付いた。

  • iG50+ パターン

  • iG60 パターン

同じゴムでも雪や氷のグリップ向上

 iG60は雪上性能向上も狙ったパターンを採用するが、氷上制動も大きく進化していた。iG50プラスに比べると氷上制動でも約1割弱の短縮。ABSの作動状況や利き具合はiG50プラスとよく似ているので、制動開始から停止まで均等して上回るグリップ力を発揮したわけだ。雪上では8の字旋回で比較。先にiG50プラスをテストしたため雪面の多少の悪化もあったが、同等か若干上回る旋回性を示した。加えて、氷上と背反するもうひとつの要件、ウェット性能の向上も新パターンの特徴。全方位高性能パターンなのである。

アイスガード6の特徴

  • 4段立体サイプに2連ディンプルを加えたクワトロピラミッドディンプルサイプ。高剛性で摩耗進行時にもエッジ効果が持続する。AWD

  • 斜め方向と横方向のグルーブを組み合わせ、氷上での排水効果とエッジ効果を両立。

  • 非対称パターンは、イン側が氷上、アウト側が雪上性能に特化。ウェット性能も向上。

ガチテスト 2 コンパウンド違い

icon スリックタイヤでゴム性能を比較

 トレッドゴム(コンパウンド)が異なる特製スリックタイヤでテスト。ツルツルの溝なしで雪上8の字走行をこなすiG60のゴムには驚かされた。接地面積が大きい分、氷上制動ではパターン違い以上に大きな差となった。

見た目はほぼ同じ

  • ウインタータイヤ用ゴムとiG60用ゴムで作ったスリックタイヤ。サイズも同一だ。素材が違うとはいえ、肉眼では判別不能。

スリックでも驚異のコントロール性

 接地面積と除水(吸水)性が物を言う氷上制動でウインターコンパウンドをiG60コンパウンドが圧倒するのは当然だが、それにしても30%近い停止距離の差が出たのは驚き。iG50プラスの正規品さえ上回っている。さらに驚かされたのは雪上8の字旋回。ウインターコンパウンドは予想通りの滑りっぷり。方向制御もままならない。ところがiG60コンパウンドは雪面を噛んでいるようなグリップ感を示した。大きく滑らせなければ方向制御も良好。低温域でも柔軟なゴム質を中心とした雪面との密着性の威力は驚嘆に値する。

アイスガード6の特徴

  • 吸水性と柔軟性に優れるプレミアム吸水ゴムのマイクロレベルイメージ図。1=新マイクロ吸水バルーン、2=エボ吸水ホワイトゲル。

  • プレミアム吸水ゴムのナノレベルイメージ図。3=シリカ高反応ホワイトポリマー、4=シリカ、5=オレンジオイルS。

  • 新マイクロ吸水バルーン。エボ吸水ホワイトゲルとともにミクロの水膜をダブルで吸水。(顕微鏡写真:50倍)

  • 接地圧分布の新旧比較。iG60(左)は偏りなくトレッド全体で路面をとらえている。

ガチテスト 3 カテゴリー違い

氷上フルブレーキテストではスタッドレスが他を圧倒。実際の路上では、この差が明暗を分ける場面も珍しくないだろう。

上からスタッドレスタイヤ、ウインタータイヤ、オールシーズンタイヤを比較。

今回比較したタイヤ。左からV905(ウインター)、iG60、S323(オールシーズン)。

地域によって主力の冬タイヤが異なる。主にスタッドレスタイヤは日本、ウインタータイヤはヨーロッパ、オールシーズンタイヤは米国で使われている。

高速以外ならハンドリングもスタッドレスがトップクラス

異なるカテゴリーの3種のタイヤでハンドリング試験を実施。

 オールシーズンは快適性も含めた総合的なバランスが旨。氷雪上性能に余裕はない。ウインターラジアルは雪上性能と高速性能に優れるが快適性と氷上が泣き所。iG60は圧倒的氷上性能が特徴だが、高速性能以外ならウインターラジアルと同等以上と言えよう。

提供元:月刊自家用車

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グーネットマガジン編集部

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